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お受験は親で決まる

「先生、うちの子は合格大丈夫でしょうか?」

この仕事をやっていると、たまにご入会いただいたばかりのお母さまにこうしたご質問を受けることがあります。これに対し、ぼくはこう答えるようにしています。

「大丈夫です。それよりお母さま、お母さまの方は大丈夫なんですか? お子さまの足を引っぱらず、合格させるだけの実力がおありですか?」と。
(もちろんこの百倍丁寧な口調で)

こう申しあげるとお母さまは鼻白んだような表情を浮かべられます。これはもちろんそのお母さまをやっつけたかったり、言い負かしたかったわけではなく、「お受験はお子さまではなく、ご両親自身がやるもの」というあたりまえの事実に気づいてほしいという思いからです。

近年はネットやSNS等によってお受験に対する理解や解像度が進み、「お受験は家族全体でするもの」「親の役割はとても大事」という認識が広まっていますが、少し前までは「お受験はこどもががんばるもの」という考え方があたりまえでした。またお受験自体もわりとおおらかで、ご両親をまじえた親子面接も現在ほど緊張感のあるものではなく、お子さまがある程度利発で、学校側の要求に過不足なく応えられるいい子であれば合格は大丈夫、というふんわりした空気が漂っていました。

しかし近ごろのお受験は格段にきびしさを増し、お子さまだけではなくご両親の素行品行人柄、さらには各家庭内の質にまで審査がおよぶ厳格なものへと変化しています。

この変化の主な要因は

・親のモンペ化により、対応に疲弊した学校が親を選ぶようになった

・日本の社会全体の階層化が進み、その結果学校の求めている「普通のご家庭」が見えにくくなりつつある

・少子化により各校で優秀な児童の囲いこみが起きている

このあたりが原因ではないかと思いますが、ぼくは社会学の専門家ではないため、これはたんに推測にすぎません。

とりあえず言えることは「近年、お受験における親の役割はますます大きくなり、お子さまの前にまず親が選抜されるようになった」ということはまちがいなく言えると思います。

誤解がないよう申し上げておきますが、これは「親が高収入でなければダメ」とか、「両親の社会的地位が高くなければ小学校受験は成功しない」とか言っているのではありません。過去にぼくは高学歴かつ社会的地位の高い方(お医者さんとか会社経営者とか)のお子さんが不合格になるのを何度も見てきました。学校側はきちんとある判断基準の下、親(家庭)に対して合否の判定を下しているのです。

(ちなみにお金を積めば無条件で合格できる学校や、縁故・情実が幅をきかせるケースについてはぼくが関与できるところではないので除外します)

これは学校側の立場になってみればわかることです。上にも書きましたが、学校側にとっていちばんの悪夢は入学後、入学させた生徒の親がモンスター・ペアレントに変わること(あるいは本性を現すこと)です。

お子さまのご入学後、学校と親はPTAや父母会、四季の行事など、さまざまな形で顔を合わせます。しかし、そのはるか手前でそもそも話しあいや協働が困難なご両親がいたとしたらどうでしょう。学校が「しまった。しくじった。この親は外れだった」と思っても時すでに遅し。いったん入学させてしまったら最後、学校側はもうそのご両親をどうすることもできません。

こうしたことがないよう、学校側は厳格な審査をするようになりました。両親に面接や作文があるのはそのためですし、お子さまであればペーパーや筆記試験よりも行動観察がより重視されるようになっているのはそのためです。

ならば、受験志望の親はどうればいいのでしょうか。

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幼児教室の先生をしています。じっさいにお受験を指導してきた立場から、お若いご両親に知っていただきたいことやお受験への取り組みかたなどをわか…

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