見出し画像

徒然なる対話ーチャンネル開設一ヶ月の報告ー

「上田久美子の演劇理想ロン」で配信を始めて一ヶ月の振り返りを、チャンネル運営のサポーター菱田伊駒と、上田久美子の対談で行いました。シラスチャンネルを経営するゲンロンの人々からの遠回しな指摘により「私たちのチャンネルはお硬すぎるらしい」と反省した我々は、近頃流行りの「寝落ちコンテンツ」を標榜してゆるっと対談…していたつもりが、放送終了後、机の上で静かに見守っていた神様“オカヤマイオン“から、猛省を促されました。

①寝落ちコンテンツとは、寝てしまうほどつまらない話をダラダラするという意味ではない

②寝落ちコンテンツでは、オルグ(主に左派系団体・政党が組織拡大のために、組織拡充などのために上部機関から現地派遣されて労働者・学生など大衆に対する宣伝・勧誘活動で構成員にしようとする行為を指す)するな

③普段の君たちは面白いのになぜ配信ではくそつまらないのか

④普通に眠かった

まさしく、寝落ちコンテンツというものを一度も視聴したことがなく、寝てしまうような単調な話をすることだと勘違いしていた上田と、日頃の癖で、俺の主張を聞け!寝るな!という熱を帯びた語りを展開してしまった菱田は、あまりのことに肩を落として、その後、 Rebuild、上出遼平のNY御馳走帖、ジェーン・スーのover the sunなど居並ぶ「寝落ちコンテンツ」の雄を立て続けに視聴し、寝落ちコンテンツとは「眠いけれど面白いから聞いていたいという葛藤を生むという極めて難しいジャンル」であることを学習しました。

ですので、下記にお届けする対談があまり面白くないとしても、それは「寝落ちコンテンツ」という語の誤解に基づいたものであることをお伝えしておきたいと思います。またそもそも、寝落ちコンテンツを作ることが「上田久美子の演劇理想ロン」において求められていないかもしれないという件も、今後よく考えていきたいと思います。




菱田

「つれづれなる対話・チャンネル開設1ヶ月の報告」石橋商店街からお送りしてます。


上田

よろしくお願いします。


菱田

今日は寝落ちコンテンツを作ろうみたいなところもありますから。


上田

「上田久美子の演劇理想ロン」をご覧の皆様ありがとうございます。無事に1ヶ月の配信経験を経まして番組誕生以来1ヶ月です。その報告も兼ねて、どれぐらいメセナが集まったのかっていう報告もしていきたいです。


菱田

放送は慣れましたか?


上田

慣れてはないですね。慣れたというよりは、やろうとしている方向がそうではなくて…みたいなこともちょっと見えてきて軌道修正していきたいなという時期になってきたという感じですかね。たこ焼きは冷めないうちに食べましょう。


菱田

今日はこの昼間のこんな時間に見てる人はいないだろうみたいな、完全に油断しきっていますよね。


上田

1ヶ月という期間の中にどういう番組が何回ぐらいあるのがいいのかなというのがまだ探り探りで、先月は急に始めたもんだからやれることをとりあえず配信しようという勢いだけで終わってしまったんですね。無理やりたくさんやったんですが、継続性やニーズということもあるから検討したいということで。ただ頑張ればいいというものではないということもあって。あとそれより先に、伝えたいことがあります。このシラスチャンネルのシステム上、皆さんが加入してくださってそこにお名前とかユーザーネームとかを登録されても、私たち配信者は全くそれを知ることができない、つまり誰がメセナをしてくださっているか全く手がかりがないということです。コメントしてくださっている方はユーザーネームは見れるのですが、コメント頂かない限り、ユーザーネームすら私達は知ることができないわけです。だから、身近な人で、別に配信とか観ないけどちょっと上田のことを心配だから入っておいてあげようかって人がもしおられた場合、気づかないので、入ってるよとか言ってもらえると励みになります。


菱田

先月の7月は詰め込んでいて、忙しかったのでは?


上田

めちゃくちゃ…私は死ぬほど7月ハードだったんですよ。もうあらゆるいろんなことに巻き込まれて3人分ぐらいのいろんな出来事が降りかかっていた。そんな7月なのに配信チャンネルまで始めてしまって、何かすごいことになって…


菱田

逆に追い詰められた方がやれるんだみたいなこと言ってませんでした?


上田

あ、そうですそうです。こういう普段やらない思い切ったことをやるのってちょっと火事場のくそ力みたいな、もう駄目だって時じゃないと。戦争中だから闇市に行ってでも食料を調達して子供を育てる、いかにそれが闇市だろうが!みたいな。いや、ちょっとすいません、インターネットを闇市に例えるようなことをしてしまって申し訳ない、違うんですけどでも私も何かそういう古臭いところがあって、ネットって何か怖いところなのではないかみたいな気持ちがあったわけですね。何かバーチャル的な…


菱田

いや、バーチャルって言葉自体、古いですね…(笑)


上田

何か踏み切れたっていうのがありましたね、てんやわんやの中どさくさ紛れに。城崎のクリエーションの前は7月は滋賀のハイセンという施設で、太田信吾さん・竹中香子さんの「最後の芸者たち」という作品のパリ公演の稽古に参加していて。そのお稽古が8月1日に終わって2日から城崎に、太田さんや竹中香子さんも一緒に移動して、そこからもう休みなしに私のクリエーションに入っちゃって。頭も切り替える時間も滋賀の疲れを癒す余裕もなく、ヘトヘトで始まって、まだ始まってすぐの8月4日に東京大学の河合祥一郎先生をチャンネル配信のゲストでお迎えして話を伺うという怒涛のスケジュールでしたね。


菱田

河合先生のお話がすごい上手っていうんですか、聞いてて、生き生き楽しそうだった。


上田

ただ、あまりに先生の原文引用が素晴らしすぎて、英語で全部セリフを言ってくださるから、文字起こしが不可能でnote記事化は今のところギブアップってなってます私達…


菱田

本当、内容が濃ければ濃いほども文字起こしも大変になるっていう。配信したのを文字起こししてnoteで出せばより多くの人たちにも見てもらえると思ったけど意外に大変だなということがわかってきました。


上田

英語の引用とかだったら手も足も出ないということがわかりました。
その前からの疲れもたまっている中で配信をやり稽古やってる最中に、明日までにこの原稿を出してくださいとか、緊急の問題が起きてるんで本番前の午前に絶対にこの打ち合わせを入れさせてくださいとか関係ない仕事先から連絡もきて、本当にピンチを迎えて。城崎で稽古しているものも、自分自身初めてやる作品形式で初めてのメンバーで、みんなが頭を悩ましてたから、それだけで大変なのに。そこまで落ち込むほどのことがあったわけではないのですが、体と脳が疲れすぎてそこにさらに考えないといけないことや締め切りが重なった時、あ、鬱になる時ってこういう、脳が極度に疲れた時なのかなって思いました。クリエーションは本当は「こうしたらどうなるかな」とワクワクしている楽しいことの予定だったのに、全く楽しいという気持ちが湧かなくなって、何も面白いと思えなくなってきて、これは変だなと。


菱田

鬱の入り口を見たと。


上田

そうだったんですかね。レジデンスが終わったら戻ったからよかったです。そしてレジデンスが終わった後に、施設にまだ残っていた私と翻訳家の平野暁人さんで、ラジオ式の声だけの配信をやった。この一ヶ月の中の配信番組の傾向としては、かっちりとしたテーマについて語るっていう、真面目に資料なんか見ながら喋る番組が二つあった。シェイクスピアの回とプネウマプロジェクトについて説明した回。ラジオ式の報告会は二番組あって、アートの主題を語ったかっちりした回と、雑談の打ち上げっていうゆるっとした回。なんか、シラスの母体のゲンロンの人たちから、あまり内容が硬すぎると聞きにくいみたいな指摘を受けましたよね?


菱田

シラスチャンネル創始者の東浩紀さんからも、上田さんは関西弁で喋った方がいいよとか言われてましたよね。


上田

正しいことを立派に言うっていうのが面白いとは限らないって言われましたね。私の番組で面白さを目指してるかっていうとまた違うんですけど。


菱田

東さんによると、配信っていうのは映画というよりはスポーツだみたいな話ありましたね。演劇もそうかもしれないけど、毎回やることはスポーツって同じで点を入れることなんだけど、そこで何が起こるかわからないっていうことを観客が楽しみにしてると。だから進行表に従ってずれないようにやっていくよりも、配信の中でずれていった方が面白いしそういうライブ感みたいなものに見てる人ってのは期待してるんだっていう話を聞かせてもらいましたね。


上田

それでどうしていくのがいいかなっていうところで、一ヶ月の振り返りを今してるっていうところですかね。堅いテーマの話でも河合先生や竹中香子さんのお話すごく面白いなっていうのはあると思うんだけど、どの程度の人たちがそれをちゃんと見てくだされる時間があるかはちょっとわからない。でもやっぱりクリエーションについての真面目な発信はしていきたいんです。一方で、平野さんとやったようなゆったり時間を過ごすようなものの方が配信と合ってる印象もあり、では、どれぐらいの割合で、「かっちり」と「ゆるっと」をやるのか。そこが今、考えているところ。だから今日はなぜか「寝落ちコンテンツ」に挑戦しています。あと、私は性格的に一つのことにしか集中できないから、しらすチャンネルを少なくとも月に2〜3回どこかのタイミングでやらなくちゃとか思ってると常にそれが脳内でタスク起動中になってしまって、いつやろうかなって気になって、本業のための集中が減ってしまうんですよね。気になり続けるのは良くないから、例えば月末の金曜日はラジオ配信で今月の報告やるとか、ある程度、月の決まったスケジュールを作るっていうのもいいのかなみたいなことも、様子を見てるんです。


菱田

これは僕の方ですけど、上田久美子チャンネルを作るのに僕も協力させてもらって、ここまで1ヶ月で来れたっていうところがあってここから僕自身もどんなことをしようかなって思ってるところで。僕自身は上田さんのクリエーションとは全く違う文脈で活動してる人間なので、例えで言うと、選挙とかって誰々を通すためにみんな支援者が頑張るわけですが当選したらなんか終わりみたいな感じになっちゃう。当選したそこから支援者が何もしなくなっちゃったりとか何かゴールで目的達成しちゃった、大学入学して終わった、みたいな感じになっちゃうっていうのがあって。でもむしろその当選したところからサポートしてた人は何をするかってのが問われていく。それで言うと、もう上田さんは自分で放送できるし、僕がどういうふうに関わっていこうかなとかいうことはちょっと考えてるところですね。それで、ちょっとサブ的にあくまで上田久美子の理想ロンのテーマからそんなにぶれない形で、ゲストを呼んで石橋支局みたいな形で石橋から番組を作って発信していく、そこに上田さんにゲストとして来てもらうとか。できた上田さんのチャンネルの中で自分がしたいことをちょっと見つけたいなと思ってるところではありますね。阪大にもいろんな演劇の方いらっしゃるし、あるいは学生さんたちだって城崎にも来てくれて、あの番組だって見てくれてる学生さんだっているわけだから、そういう人たちと一緒にプラスアルファでできたらいいかなとは思ってますね。


上田

演劇やってると出会う人たちも層が一定になってくるんです。私はゲットーと呼んでますけどね。やっぱり演劇ゲットーみたいな閉じたコミュニティしか私は知らない。でもこの石橋コモンズには老若男女とか大学生とかいろんな人たちが関わっているから、そこで私も視野を広げる取材にもなりますね。


菱田

そういう副次効果もあるかもしれないですね。上田さんもそうだけど、僕にしたって何をしたいかみたいなところがあんまりまだ考えきれていないような気もしてるんですよね。メセナで資金を集めるためだけにやってるわけじゃない。この放送ってやっぱりコメントのやり取りもあるし意外にちゃんと守られているから安心してものを言える。踏み込んだことでも言える一方でやっぱりクレジットカード登録をして買ってもらうハードルはちょっと高い。ツイッターでたくさん拡散してても、実際その放送を見てくれてる人っていうのは少ない。これはいい面も悪い面もあると思うんですけどそういう特性がわかってきた。クリエーションにお金を集めるための手段だけでなく、どんなことができるかってことは、もうちょっと立ち止まって考えてもいいような気もします。今まであんまり考えずにきたので、やっていく中で発見を踏まえて何をしていくかですね。


上田

そうですね。


菱田

ところで今回は、支援してくれてる人たちへの報告会でもあるわけですよ。今日はそのあたりの報告もしていきますかね。

ここから先は

5,276字 / 1画像
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?