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しばいばなしvol.1 「翼ある人びと」【朝夏まなとゲストトーク】 前編

シラスチャンネルでは、上田久美子の現在・未来の作品についてシェアするとともに過去の上田作品についても語っています。
過去編のなかでは9月に「翼ある人びと」を特集し、主演の朝夏まなとさんをゲストに、当時の演技について振り返るとともに、目覚ましい活躍を遂げておられる現在の朝夏さんの演技論、ここまで飛翔を遂げるに至った過程を、じっくり伺いました。
前編は、今だから言える当時の互いの心境など、「翼ある人びと」をめぐってお話しています。
こちらの番組と対で配信した「翼ある人びと」脚本術の番組は、パワーポイント資料が多くて記事化が現在のところ難しく、ゲストトークのみnoteに掲載していきます。文字起こしに時間がかかるため、今後、シラスチャンネル番組のnote掲載は配信から一ヶ月後を目安にしていきますが、今月は文字起こし記事を掲載できていなかったので、早めに掲載いたしました。後編はしばらくお待ちくださいませ。

※当日の対談の様子(ダイジェスト版)です。

上田
上田久美子の理想論』、本日のゲストコーナーでは朝夏まなとさんをお迎えしております。よろしくお願いします。

朝夏
よろしくお願いします。

上田
朝夏まなとさんはですね、来歴を簡単にご紹介しますと、2017年に宝塚歌劇団宙組をトップスターとして退団され、その退団公演では私が作・演出を担当させていただきました。その後は東宝芸能に所属し様々な舞台で出演を務められ、俳優としてのキャリアを築いていらっしゃいます。今日はよろしくお願いします。

朝夏
よろしくお願いします。今日はお呼びいただけてとても嬉しいです。

上田
というか、ものすごく久しぶりですね。ちょっと昨日リハビリのために一回会いましたけど(笑)

朝夏
実はね(笑)。昨日「いつぶりだっけ?」という話をして、うちに帰ってから調べたんです。LINEの履歴を見て。そしたら、私が『fff』を観劇に行ったときに先生も来ていらして、日比谷のミッドタウンの外のところでお会いしたのが最後でした。なので、3年前…?

上田
じゃあ、たまたま、道で?(笑)

朝夏
たまたま(笑)!「今日行きます」ってご連絡したら、「私もいます」って返事がきて、「じゃあ、ちょっと会おう!」って。お茶などもせず、ただお会いしただけなんですけど(笑)

上田
そうだったね(笑)その前に私、まあくん(朝夏さんの愛称)の『笑う男』の公演を見させていただきました。数日前にも久々に主演の舞台を拝見させていただいて、その感想も後でお話しできたらなと思っています。

朝夏
お願いします。

上田
今日は、一番最初にご一緒した『翼ある人々』という作品の話から始めてみたいなと思います。主演を勤めてくださったまあくんにいろいろ聞きながら、私自身も色々思い出すところがあるかもしれないと思っています。
DVDも持ってきましたけど、これとっても素敵な写真ですよね。ポスター撮影の時点では、まだどういう役なのかは不明だったはずなんですけど、これを見ると、しっかりと芝居が入っている表情だと感じます。

朝夏
わあ、なんだか切なさが…

上田
うん、ありますね。「この作品がターニングポイントだった」と語ってくれているのを小耳に挟んでいるんですけど、まあくんはこの作品にどういう想い出がありますか?

朝夏
私はわりと恵まれていて、若い頃から新人公演の主演のような機会をいただくことが多かったんですけど、すごく背伸びをした役というか、自分とはかけ離れた大人の男を演じることが多くて。それを追い求めるあまり「お芝居って何だろう?」って、よく分からなくなっていたんです。「どうにもこうにも分からない!」ってなっていたときに、この作品を書いていただいて、初めてと言っていいほど「等身大の若者」の役を演じられたんです。それまでの役は刑事とかマフィアとか、絶対拳銃を持ってたんですけど(笑)

上田
確かに!ハードボイルド形態の…(笑)

朝夏
そうではない、幼少のころから親しみのあったピアノという題材…クラシックにはバレエでも親しんでいましたし、それを基に作品を作っていただいて、それを演じるということが、自分にとっても感覚的にすごく新しいところだったんです。役柄としても、宝塚の主人公には珍しく前半ほぼ喋らない。そういう役をやったことがなかったので、なんか最初は「大丈夫かな!?」って思ってたんですけど(笑)

上田
「こんな無口でええんかい!?」みたいな?(笑)

朝夏
でも、そこからこう、ひとりの人間が周囲の人に見出され変化していく、そういう役に巡り会ったことがなかったなと思ったんです。だから、ブラームスの人生を一緒に体感するという経験をさせてもらって、その時に「お芝居ってすごく楽しい」って思えたんです。だから、この作品と先生に出会えてなかったら、その後の人生は多分違っていたんだろうなって思います。

上田
そう言っていただけて、「私も自分の人生の中でちょっとはいいことしたんだな」って(笑)、ちょっとだけそう思える嬉しいことなんですけど。

朝夏
あはは!いや、本当に!(笑)

上田
私の思い出は何だろうな? 初めに「朝夏さんの主演で作品を」と言われたときに、すごくプレッシャーがあったんですよ。スターの今後のキャリアにとってはここが分岐点、という感じがあって。あれは(朝夏さんの)二番手時代ですよね?

朝夏
そうですね。

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