10月の終わりの連絡簿
9月末にパリに戻ってきてまもなく1か月が経ちます。色々な用事が同時進行し、何をやったという達成感はないけれど月日はどんどん過ぎていきます。
うちは目のいい家系でだれもメガネをかけていないのですが、手元のスマホの細かい字が見えにくいな…目が疲れているな…と思い続けて数週間、さっき、スマホを遠ざけるとピントが合うことに気がつきました。これは老眼ということに違いありません。
そう思った後、なんともいえず気が沈んでいる自分に気がつき、平凡な現象で健康問題ですらないのに、老いるという微かな兆しに自分はそう感じるのかと、初めて知りました。
ここからは、メセナのご報告、およびProjectumïの活動報告になります。
<noteでのメセナ活動へのご協力>
noteの9月の収益は、101,371円でした。ご支援ありがとうございました。
こちらは引き続き「呼吸にまつわるトレーニングプール」城崎アーティストインレジデンスの経費補填に利用させていただきます。
<10月の活動報告>
10月は「最後の芸者たち」の演出アドバイザーとしての活動が中心でした。9月に開始したリーディングワークショップ”泣き女たち”は、ゲストをお迎えし、オンラインにて参加しました。
演出アドバイザー 11/15-11/19公演 ハイドロブラスト 「最後の芸者たち」 @パリ日本文化会館
上田久美子「リーディング・ワークショップ 」”泣き女たち” NPO法人芸術公社主催(港区立みなと芸術センタープレ事業)
10/13 ゲスト:SPAC学芸員/演劇研究 横山義志
🔳note 上田久美子(Projectumï)|note
私のフランス住宅事情
しばいばなしvol.1 「翼ある人びと」ゲストトーク【朝夏まなと】(後編)
生殖が強制された国
🔳配信 上田久美子の演劇理想ロン ―マエケナスの古代ローマ的実験室―
10/6 笈田ヨシに聞く 日本の戦前・戦中・戦後の芝居 ー農村歌舞伎・宝塚・新劇ー
10/19 しばいばなしvol.3 「月雲の皇子」脚本講座
10/19 しばいばなしvol.3「月雲の皇子」ゲストトーク【珠城りょう】
10/27 報告ラジオ
<今後の活動・公開予定>
🔳公演
11/15-19 ハイドロブラスト 「最後の芸者たち」 @パリ日本文化会館
11/10 上田久美子「リーディング・ワークショップ 」”泣き女たち” NPO法人芸術公社主催(港区立みなと芸術センタープレ事業) ゲスト:中村佑子
🔳note 上田久美子(Projectumï)|note
しばいばなしvol.2 「星逢一夜」ゲストトーク【望海風斗】(前編)
しばいばなしvol.2 「星逢一夜」ゲストトーク【望海風斗】(後編)
コラム
11月の終わりの連絡簿
🔳配信 上田久美子の演劇理想ロン ―マエケナスの古代ローマ的実験室ー
11/3 21:30 笈田ヨシに聞く(第2回) 笈田ヨシ演劇生活を振り返る ーピーター・ブルックとのアフリカの旅ー
11/17(番組未定)
11/24 報告ラジオ
※上記日時は予定です。正確な日時は各回の1週間程度前にチャンネルサイトで公開。
他に、最近あったこととしては、韓国にミュージカル「ベルサイユのばら」を観に行くという知人が多いので、ふと気になってティーザーを見てみました。
韓国版「ベルサイユのばら」の主役たちのソロは、物語を見せるという以上に、そこから湧いてくる心情的動機を利用して圧倒的な身体性を発揮するために作られている感じで、最後の歌い上げのロングトーンを聴くときの私の反応は、オリンピックで重量挙げをする選手の気迫と躍動する筋肉を見て、バーベルが高く持ち上がった瞬間にはその競技に関心がなくても目を奪われて興奮してしまう時に似ている感じがしました。あるいは、相撲の立ち合いの瞬間のぶつかり合う関取たちの覇気や身体的パワーにこちらの身体も本能的に共鳴し興奮する感じというか…。
曲には歌舞伎の見得切りのような見せ場がたいてい最後にある印象で、その見得の快感に辿り着くために前段の演技や物語があるという性質が強そうです。
あの身体中を楽器にして叫ぶような突き抜けたバイブレーションにどうしようもなく吸引され、今も歌声が頭のなかでぐるぐるします。ちょっと集中できない時や、つまらない雑事に追われているときに、あの圧倒される刺激が欲しくなります。
ただ、欲望を直接的に刺激するよう作られた音楽のせいか、思わず2~3時間も聴いてしまったあと、ケーキを食べすぎた後に血糖値スパイクで疲れるみたいに、どこか疲れた状態になってしまいました。それでも人間が人間のパフォーマンスを見たいと欲する心理の深層ってなんだろうと最近よく考えます。スポーツ観戦のようなこの手の刺激は、アート系を自認する舞台では否定されがちですが、実はアート系の舞台の多くでも、人は人を好きで人間を見たいと思う心に依拠している部分は多いと思うのです。
ともかく、あれほど歌えることは本当に凄いと驚きつつ、パワー系の歌唱は身体の優越性で圧倒するので、プロスポーツ選手と同じく第一線で長く注目を集められる人は少ないと思われ、国をあげて戦略的に養成しているサイボーグ的な印象もあいまって、今の彼らが美しく輝かしくその光に引き寄せられるほど、なぜか儚く残酷な印象も受けました。
11月は、来年1/24~2/3に東京、蒲田温泉で上演する公演の情報公開、チケット発売を予定しております。こちらでは、若さや煌めきという魅力とはまた違った価値を探していきたいと思います。
noteメンバーシップを継続していただいた方も、新しく入っていただいた方も、今月のご支援もありがとうございました。いつも励まされております。
引き続き活動を見守ってくださいますよう、お願いいたします。
上田久美子(Projectumï)