サメという単位
※初めに言っておきますが、
そんな単位が存在しているわけではありません。
画像は生成AIが生み出したサメ。それについてはまたいつか。
同僚との雑談から生まれたサメ
もうやめてしまった方なんですけれど、同僚に、なんというかとてもお茶目な(というと喜ぶ)方がいたんですよ。Tさんとしましょうか。
Tさんが当時お付き合いしていた彼女(現在の奥さん)と出かけた先での話をよくよく、まぁ所謂のろけ話として会社で話すことがよくあったんですけれど、その日の話は「そば打ち体験に行ってきた」というものでした。
お蕎麦屋さんが主催したイベントで、テーブルに別れ参加者それぞれが手本に習ってそばを打つ、そこの大将がそれぞれのテーブルを回りながらアドバイスをして回る。そういうイベントだったという前置きがTさんからありました。
T「ただなんかね、そこの大将がちょっとクセ強めのアドバイスする人だったんですよ」
僕「ほう」
T「僕の彼女んとこ回ってきたときに『よっ、嬢ちゃん、大きいサメ!』って言うたんです」
僕「ん…どういうこと?」
T「でしょ、そうなって僕らも『え…?』ってなってたら、その間の後に「じょうず!」って言うたんですよ」
僕「…バカおもろいやんけそれ」
映画がとても好きなTさんでしたが、映画好きでなくてもご存じであろう、ホラー映画「JAWS/ジョーズ」のダジャレだったわけです。
この時はまだ「おもろい店主がおるんやなぁ」くらいでね、それほど気に留めてはなかったんです。
サメの実用化
サメが明確に実用化され始めたのは、これまたTさんの発言がきっかけだったわけですが、同じ部署で働く彼が突然手を止めこういいました。
「なぞかけしません?」
え?なぞかけ…?ってあの、ねずっちが芸にしてるアレか…。
しかし仕事中やぞw
最高かよ。
とはいえ、日ごろコンテンツのアイデアも枯渇しているというのに、そんなにぱぱっとなぞかけが浮かぶわけでもなく。
僕「そもそもお題どうすんの」
T「んまぁ確かに」
僕「なんなんww」
T「んー…じゃあ『中小企業』で」
僕「なるほど?中小企業ねぇ…うーん」
T「…あ、僕思いついたかも」
僕「え早ない?w」
T「中小企業とかけまして、クリスマスと説きます」
僕「ほぅ…その心は(このセリフ自然にでるんやな)」
T「どちらもリースが欠かせません」
僕「……いやなんでちょっと上手いねんwww」
だれがうまいこと言えと。仕事の合間で生まれたクオリティにしては無駄に高いなぞかけ。
T「いやこれイケてます?他にもっといいのありません?」
僕「いやこの瞬発力でこのクオリティ以上のもん出んやろ、普通にすげぇよ」
T「じゃ、僕がいちばん大きいサメってことでいいすかね」
僕「いやもうそれはそうやわww」
T「次のお題なにします?」
僕「仕事せぇ」
という感じで、しれっとサメが導入されました。
後輩たちもサメの話は事前に知っていたので、僕らの部署だけ(当時4人)で通じる単位として、"なんかうまいこと言う"="大きなサメ"という認識が改めて確固たるものとして実用化されました。
イメージだけで尺度が登場
味を占めたTさん、定期的に「なぞかけしましょ」と言ってくるようになりコンテンツ製作が煮詰まった時(すぐ煮詰まる)の小休止的に、なぞかけをするブームが訪れました。言葉遊びが好きな連中が集まっていたので、後輩も含めて参加します。
サメが単位として登場して以降、評価としてサメが用いられるようになり、ジョーズ(上手)さに変わって「お、それはホオジロザメ」にはじまり、
「いやちょっとコバンザメ」
「コバンザメってサメじゃならしいよ」
「うますぎてジンベイザメ」
「すべってる、金魚」「メダカ」「どじょう」
「瞬発力イルカ」「すごいダブルミーニング、ハンマーヘッドシャーク」
と、サメなら一定のクオリティ、それ以下はサメ以外の魚類でサイズ感の評価が下るという、もはやなぞかけが主たる目的でもないサメ大会みたいな遊びに発展しました。
通じないし、ここまでの説明が必要
ある日、別の部署の方がこの遊び中に通りかかり、なぞかけ行けますかと尋ねたところ「えぇ…?なに?」といいつつも、お題:段ボールに対して即時に
先輩「えーじゃあ段ボールと掛けまして、天使と説きます」
一同「ぉ、早い…!その心は」
先輩「どちらも、はにかむ(ハニカム)でしょう…?みたいな?」
一同「おぉぉお!サメ!」「結構でかいサメ」「サメは確定」
先輩「サメ…?」
一同「あ、すんません、大丈夫です、さすがっす!」
ということで、説明するのは、かなりさかのぼる必要があるし、もう当事者が辞めているこの会社で通じることもないのですが、当時の後輩との会話は今でもしばしばサメが単位として用いられるくらい、僕たちの中で生き続けています。
これは心底面白いと思って言っているわけでもなくて、齢を重ねることで見聞きする言葉が増え、自然に構築された異口同音のデータベースが合致した時に表現として発してしまう、サムいとされている「親父ギャグ」って、そういうからくりなんやろなと、使う側に立って客観視すると見えてくる。
…正当化しているともいえるけれど。
ことばあそび、をいつまで楽しめるおじさんでいたいよね。