少女たちは繭の中で何を思う…〜少女邂逅レビュー〜
10代の女の子が持つ、儚いような、苦しいような、尊いようなあの空気は、一体なんなんだろう?
この話は、女の子同士の話だ。
いじめられっ子のミユリと、転校生の紬(つむぎ)の話。いじめられていたミユリを紬が助けたところから始まり、2人の関係がどんどん親密になっていく話。
ミユリが紬に抱く感情は、憧れに近いもののように見えた。でも、友人に憧れも抱いているような関係は、どこかで相手を、そして自分を信じられず、とてもバランスをとるのが難しい。
そんな自分にいっぱいいっぱいになると、相手を鏡として見た自分の姿しか目に映らなくなってしまって、相手が心の奥に秘めていることや、些細なサインには気づけない。
「どうして私といてくれるの?」と思う思いは、相手を好きであればあるほど、自分を不安にさせる。
10代で、友情が人生に占める割合はとても大きい。希望も絶望も、友人からは、その両方が降ってくる。
恋と似ているなと思った。でも確かに、あの頃の憧れを伴った友情は、とても恋に似ている。やきもちも焼くし、隠し事を察知してしまうと、相手を疑う気持ちに押しつぶされて辛い。いつだって、その子の一番になりたいと思う。
友人に対してそこまで強く思うこと、気づけばなくなっていたな。
作品中の2人の友情に心を揺さぶられるのは、そんな10代特有の空気感が昔の記憶をくすぐるからかもしれない。
そして、この作品では、蚕が一つのモチーフとして登場する。
柔らかな繭に守られている蚕。柔らかな繭に閉じ込められている蚕。飛べない蛾になる蚕。糸を作るためだけに育てられる蚕。近づきすぎると糸が絡まって、うまく生きていけない蚕。
少女の時間を「繭期」と名付けたお話があるように、この作品で語られる蚕の一つ一つの特徴は、少女と結びついていく。
守られて見えるその世界は閉じ込められているだけで、人生において自分の意思で選べることなんてどこにもないように感じる。将来の希望もあるが、何者になるかわからない不安に潰される。そんな彼女たちの閉塞感や諦めや葛藤が、静かに、でもずっとそこにあった。
私はその時間を、行き場のない気持ちを、どうやってやり過ごしてきたのだろう?もうあまり覚えていない。
少女時代はすぐに過ぎて、消えてしまう。みんな、否応無しに、大人になっていく。外見も、心も。そんな一瞬の儚い瞬間を、美しく、淡く切り取った作品。なんだか少し、あの頃の匂いが鼻の奥で蘇った。
「いい!」って大声で叫びたくなるような感じではなくて、「うん」って心の中で小さく頷くような、そんな映画。
それにしても、女子高校生は自分たちを撮るの、いつの時代も好きだよね。