見出し画像

日本語教師養成プログラムにおけるビジネス関連授業の必要性

日本語教師として働いていると、日々の授業や学生対応に追われ、自分の働き方について深く考える機会を見失うことがあります。私自身もそうでした。特に非常勤講師として働いている場合、自分が実質個人事業主またはフリーランスとして活動しているという意識が希薄になりがちです。ですが、振り返ると、この意識の欠如が、自分の働き方や収入に大きく影響していたのだと気づかされました。



個人事業主・フリーランスとしての自覚の欠如

現在の日本語教育業界では、非常勤講師が大多数を占めています。それにもかかわらず、自分が個人事業主(またの名をフリーランス)であるという認識を持つ講師は少ないように感じます。私もその一人でした。私はもともと日本語学校の専任で働いていましたが、7年ほどして退職してフリーになりました。日本語学校ではそのような立場は一般に「非常勤講師」とひとくくりにして呼ばれます。不安定な立場で、「収入が十分でない」と口にすることはあっても、「では、どうやって収入を増やすのか」「自分にとっての理想の働き方とは何か」を考えることはほとんどありませんでした。

勤め先を離れて、完全にフリーになったのは6年前ですが、それでもまだ「非常勤」体質は抜けませんでした。自分でどう稼いでいっていいのかわからなかったのです。必要なのは、まず自分自身の働き方を「ビジネス」として捉え直すことだったのですが、それまでは誰もそれを教えてくれませんでした。また、そのようなモデルも周りにはいませんでした。


ビジネス講座との出会い

そんな中、衝撃的な出会いだったのが、フリーランス日本語教師の小山暁子さんが主宰されていて、日本語教師や日本語学校関係者が自己研鑽のために参加している勉強会「サタラボ」でした。ここでは、単なる教師としてのスキル向上だけでなく、ビジネス思考を深める機会が数多く提供されています。特に、自らビジネスを手掛ける講師の方々がそのプロセスを共有してくださることで、自分の中に自然とビジネスマインドが育っていく感覚を味わいました。

そして、3年ほど前に、日本語教師の方が主催する日本語教師のためのビジネス講座に参加しました。この講座では、「マーケティングとは何か」「自社のサービスをどうプロデュースするか」「仕事の機会をどのように作るか」といった、起業家にとって欠かせない基礎的なスキルが数回にわたり紹介され、内容は非常に実践的で、具体的な事例や手法が多く、私の視点や考え方を一変させるものでした。この講座を通して得た知識やスキルは、現在の仕事にも大いに役立っています。

私の勉強不足かもしれませんが、この2つ以外でビジネスと日本語教育を真摯に、正面から扱った講座は見たことがありません。それまでこうした視点を持つ機会がなかったのは、業界全体の風潮が影響しているのかもしれないと感じます。


日本語教育業界の特性と課題

日本語教育業界は、「教育」という側面が強調されるあまり、ビジネス的な視点を避ける傾向があるように感じます。収入を増やす話や、効率よく働くための戦略を語ることが、どこか「品がない」と思われがちな空気があるのかもしれません。ですが、現実的には「収入が十分でない」と感じている講師が多くいるのも事実です。収入が原因で日本語教師をあきらめる人が後を絶たない状況では、「きれいごと」を優先するだけではなく、より実践的なアプローチが必要だと思うのです。


ビジネスパーソンとしての日本語教師に求められる資質

日本語教師がビジネスの世界で生きていくためには、以下のスキルは特に重要だと感じています:

  1. マーケティングの知識

  2. 社会の中での自分の役割や立ち位置を冷静に見つめる客観性

  3. 交渉スキル&傾聴スキル

こうしたスキルをもっていれば、自ら外に向かって営業せずとも、自分が属する組織に対しても様々な交渉ができるようになると思います。まずはそこからスタートですね。

日本語教師養成講座にビジネス講座を

日本語教師養成講座に、こうしたビジネス的な視点が組み込まれれば、業界全体の未来がもっと明るくなるのではないかと思います。もちろん、日本語教育には教育の要素も多く含まれるので、その本質を見失うべきではありません。しかし、「教育」と「ビジネス」のバランスを取ることが、結果的により多くの学習者をサポートできることにつながるのではないかと思います。
もし養成講座で扱うのが難しいとしても、日本語教育とは別の外部の機関でこのようなビジネスマインドを育てる講座は多く存在します。まずは、教師個人が自己研鑽としてそのような場に足を踏み入れてみるのもいいかもしれません。(ただし、悪質な講座もたくさんあるので、選択するときには注意が必要です。信頼できる人からの口コミが一番安全でしょう)


最後に

私自身、まだまだ勉強中の身ですが、過去の経験から「ビジネスとしての働き方」を考える重要性を強く実感しています。日本語教育を支える一人ひとりの講師が、自分の価値を理解し、戦略的に行動できるようになれば、自分にも、また学習者や周りの人にもより良い結果をもたらすはずです。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!