enjoy スポーツ!!
お盆が過ぎ、夏休みも後半戦に入ってきました。7月に戻りたいなぁーと思う反面、まだまだ夏休みを満喫しないと勿体無いと、色々画策しています(笑)今日は、環境行政時代に入った学会のブックレットの原稿を書いていました。久しぶりに長い文章を書くと脳が全開で動いているようで、疲れました。脳みそ使うと何故か甘いものが欲しくなりますね。
さて、夏といえば甲子園!!テレビでは毎日のように高校野球が放送されています。私が注目しているのは、神奈川の慶應義塾高校です。野球は好きでも嫌いでもなく、普段はあまり見ないのですが、慶應の監督の「enjoy baseball !!」に惹かれて珍しく応援しています。高校野球といえば丸坊主。そして長時間練習、監督の絶対的な存在などでしょうか。長年スポーツをやってきた私からすると、青春の1ページを思い出させてくれる高校野球は嫌いではありません。でも、青少年のスポーツ指導には前々から課題があると感じていました。以下、監督の森林さんの話で、印象に残ったところをネット記事より抜粋します。
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「高校野球と言えばやはり坊主頭が主流。そこから飛び出るのは嫌だな」と考えてしまう同調圧力、あるいは「昔から坊主頭が当たり前なのだから、それでいいじゃないか」という旧態依然とした思考停止。指導者が思考停止で何かを押し付けてしまうことは、選手の主体性を奪う行為だと言える。周囲の意見に左右されず、自分の足で立ち、自分の目や耳で情報を集めた上で、自分自身の考えをきちんともつ。そして自分の中に独自の考えがあることを自覚できれば、周囲の人間にも彼、彼女なりの考えがあるということが理解でき、結果として、他人を尊重できるようになる。
監督ではフラットな人間関係はつくれない。本当の意味で良いコミュニケーションを図ることはできない。上から目線になってしまうと、価値観の押し付けがいつまで経ってもなくならない。
もっとも心がけているのは、選手の主体性を伸ばすこと。プロとして野球を続けられる選手はごくわずか。仮にプロ野球選手になれても、いつかは現役を引退し、監督や評論家になれるのはほんのひと握り。野球から離れたときにきちんと勝負できる人間になっていることが大事。そのためには、高校野球を通して人間性やその人自身の価値を高めていかないといけない。野球にしか通じない「俺の言う通りにやれ」という指導法は、2、3年で結果を出すには近道かもしれないが、選手の将来を見据えた場合、人生のプラスにはならない可能性がかなり高い。
社会で活躍できる人の共通点として挙げられるのは、自分を客観視できること。自分なりのアイデアを持ち、自分自身の強みを知っていて、それを伸ばす努力ができる人は、社会に出てどんな仕事に就いても通用する。さらに自分で自分の幸せを理解していることも大事。これからの社会は多様性が重視され、人それぞれ追求する幸せが違う時代。お金、家庭、仕事のやりがい……。多様な価値観の中で、何が自分を幸福にさせるかを分かっていないと、本当の幸せはつかめない。
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私は、学生の頃から20年ほどホッケーを小学生に指導してきました。私が現役の頃は、もちろん今の高校野球と同じ、監督が絶対、そして特に小学生の頃は長時間練習(夏休みは毎日1日中練習)、水を飲んではいけないが当たり前でした。でも、ある人からホッケーの本当の楽しさを教えてもらい、そして自分が社会人チームを率いたり、指導者になったりして気づいたことがありました。今までは、監督に言われた通り、何も疑うことなく従ってきたけれど、本当の意味でどうしたら上手くなれるのかということ、強くなれるのかということを考えてこなかった、いや考える機会を与えられていなかったなと。指導方法を工夫したり、自分のチームのポジションや戦法を考えているうちに、練習量は遥かに減っているのに上達している自分がいました。そして、何より今までと違ったのは、試合や練習が楽しいということ。それは、誰に強制されるでもなく、失敗して怒られるでもなく、自分が思ったように自由にホッケーができたからだと思います。まさにenjoy hockeyです!!
大学はホッケーの強豪校へは進まず、教育学部を選び、部活ではなんとなく入ったハンドボールをしていました。(小学生の指導と地元にクラブチームを作ってホッケーは続けていましたが。)大人になって違うスポーツをしてわかったことは、色んなスポーツを経験した方が、自分の動きに幅が出るということ。ハンドボールで覚えたステップが、ホッケーのプレーの幅を広げてくれました。日本は、1年中同じスポーツを練習し続けるのがスタンダードですが、海外はオン・オフがはっきりとしており、オフシーズンは全く別のスポーツをしている選手も多いようです。特に子どもの場合は、どのスポーツに適性があるかもわかりませんし、色んなスポーツをして体づくりをした方がいいと考えています。でも、まだまだ日本のスポーツ界では小学生の頃から単一種目を長時間練習がよしとされています。目の前の結果を求められ、発達段階を無視した長時間練習で故障したり、バーンアウトしたりする子もいます。ここはとても課題だと思います。結局、日本のスポーツは民主的ではないのだと思います。
大学を卒業し、その頃の教員採用試験は狭き門で、なかなか採用されず、講師やアルバイトをしながら数年を過ごしていました。大学でホッケーを続けなかった私は、自分の指導方法に自信がなく、もっとホッケーの勉強がしたいと、その当時オリンピックのゴールドメダルを獲得したオーストラリアでホッケーを経験しようと思い立ち、知り合いのつてを頼って単身、メルボルンへと飛びました。地域のクラブチームに入れてもらいながら、子どもたちの練習も見ていましたが、長くても1時間半ほどで、日本のように厳しい練習もありませんでした。それでも、オリンピックで勝てるチームが作れる。もちろん元々の体格の差もあるでしょうが、やっぱり日本のスポーツは何か違うなと思いました。帰国して、やはり自分が目指す指導は、creative hockeyだと思いました。指導者が全てを教えてしまうのではなく、子どもたちに考えさせること。長時間練習はしない。練習の中に他のスポーツを取り入れるなど様々な経験をさせること(自然豊かな地域なので、山や川にもよく行きました!)。目先の大会の結果だけに捉われず将来を見越して、今つけるべき力を身につけさせること。そして、人間性を磨くこと。何より、「ホッケーは楽しい!!」と子どもたちが思えるようにすること。もちろん、結果が出ないこともあり、伝統あるチームでしたので、練習量や練習方法でチームの指導者や子どもたちの親から叩かれることもありました。今までと違うことをやるのですから、当たり前といえば当たり前なのですが。この試行錯誤した時間が、今思えばとても貴重な経験だったと思います。
私自信、大学で第一線のホッケー人生を退くことで、ホッケーの本当の楽しさを知ることができ、ホッケーを教える道を選んだことで、前職で様々な経験をすることができ、たくさんの人との出会いもありました。その全てが、今の自分の価値観、考え方、仕事の幅に繋がっています。スポーツを教える人には、どうか目の前の勝利だけに捉われず、広い意味で選手が成長し、幸せな人生を歩んでいける力をつけてあげてほしいなと願ってやみません。今日の慶應の選手たちは、タイブレークで追い詰められても笑顔が絶えませんでした。何より楽しそうでした。スポーツは本来楽しむものなのですから。