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「1円玉の行方」ショートショート

ある日、コンビニで買い物を終えた私は、小さな1円玉を受け取った。いつもなら気にせず財布に入れるだけなのに、その日は何故か気になって、じっと1円玉を見つめてしまった。どこか旅に出たいような輝きを感じたのだ。

翌朝、散歩中にふと、1円玉を公園のベンチに置いてみた。「次は誰の手に渡るのだろう?」そんなことを思いながら、その場を後にした。それから数日が経ち、忘れかけていたその1円玉のことを再び思い出した。

ある日、公園に戻ると、あのベンチに1円玉はなかった。誰かが拾ったのか、それとも風に吹かれてどこかへ消えてしまったのか。しかし、その場所には小さな紙片が置かれていた。「ありがとう」とだけ書かれたメモだった。どういう意味なのかはわからない。でも、私は不思議な温かさを感じた。

1円玉の価値はほんのわずかだけれど、その行方にはたくさんの物語があるのかもしれない。そんなことを考えながら、私はまた新たな1円玉を財布にしまい、次はどこに旅させようかと微笑んだ。


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