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「月夜の案内人」ショートショート

秋の夜、森の小道を歩くと、ふと足元に小さな影が現れた。それは一匹の白いうさぎだった。真っ白な体が月明かりに照らされ、まるで光そのもののように輝いている。

「どこへ行くんだろう?」と、不思議に思いながら、私はそのうさぎを追いかけた。うさぎはピョンピョンと軽やかに跳ねながら、道を先導する。いつもなら見慣れた森も、うさぎの後ろを歩くとどこか神秘的に感じられた。

やがて、森の奥にある小さな丘にたどり着いた。丘の上には古びた祠(ほこら)があり、そこには満月が大きく輝いていた。うさぎはその祠の前で立ち止まり、こちらを見上げた。

その瞬間、胸の奥で静かな温かさが広がった。何かを悟ったような気がするが、言葉にはできない感覚だ。うさぎはふわりと振り返り、再び森の中へ消えていった。

「また、いつか案内してくれるのかな」と、私は祠を後にし、静かな夜道を戻った。月明かりが優しく森を照らし、心が不思議なほど軽く感じた。


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