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「落ち葉と小さな約束」ショートショート
秋の風が町を吹き抜ける頃、8歳の少年、翔太は公園のベンチに座って、じっと地面に舞い落ちる葉っぱを眺めていた。
「どうして落ち葉って、こんなにきれいなんだろう?」
翔太は小声で呟きながら、手のひらで葉っぱを拾い上げた。黄色や赤に色づいたその葉っぱは、少しパリッと音を立てる。彼の隣には、いつも優しい笑顔を浮かべているおばあちゃんが座っていた。おばあちゃんは、落ち葉を指でそっと撫でながら、にっこりと微笑んだ。
「それはね、葉っぱが長い間、頑張って木にしがみついていたからよ。最後に輝くためにね」
おばあちゃんの言葉に、翔太は目を輝かせた。
「最後に輝くのかぁ…かっこいいなぁ」
それから数日後、翔太は再び公園にやってきた。しかし、おばあちゃんの姿はなかった。少し寂しそうにベンチに座り、また落ち葉を見つめていると、ふと、ベンチの上に一枚の手紙が置かれているのを見つけた。翔太はそれを開くと、おばあちゃんの字でこう書かれていた。
「翔太へ。おばあちゃんは、少し遠くにお出かけすることになりました。でも、また会えるから安心してね。落ち葉が全部散る頃、ここで待っていてください。約束だよ。」
翔太はその手紙をぎゅっと握りしめ、「絶対、約束守る!」と小さく誓った。
冬が近づくにつれて、公園の木々は次々と葉を落としていった。翔太は毎日ベンチに座り、おばあちゃんとの約束を胸に、静かに落ち葉の音を聞いていた。そして、最後の一枚が舞い落ちるとき、翔太はふと遠くから誰かがやってくる気配を感じた。
振り返ると、おばあちゃんがいつもの笑顔で立っていた。翔太は嬉しさでいっぱいになり、駆け寄るとおばあちゃんに抱きついた。
「翔太、約束守ってくれたね。ありがとう。」
翔太は満面の笑みで、おばあちゃんの手をぎゅっと握りしめた。そして、二人はまたゆっくりと公園のベンチに座り、静かに冬の風を感じながら、いつまでも話をしていた。