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虹のパン屋さん


街の片隅に、カラフルなパンが並ぶ小さなパン屋さんがありました。店の名前は「虹のパン屋さん」。毎朝、焼きたてのパンの香りが漂い、通りを歩く人々の足を止めさせるほど魅力的です。

店主のタカシさんは、もう60歳を超えた心優しいおじいさん。彼は30年間、このパン屋を一人で切り盛りしてきました。タカシさんのパンはどれも手作りで、色とりどりの野菜や果物を使ったものが多く、まるで虹のように鮮やかです。

ある日、パン屋の前に一人の少女が立ち止まりました。彼女の名前はミカ、6歳のかわいらしい女の子です。ミカは窓越しにパンをじっと見つめていました。タカシさんはその様子を見て、優しく声をかけました。

「おはよう、ミカちゃん。どのパンが気になるのかな?」

ミカは少し恥ずかしそうに、「この赤いパン…」と、指差しました。それはイチゴを使ったほんのり甘いパンでした。

「いい選択だね。このパンは、特別な日に食べるととても幸せになれるんだよ。」

タカシさんは笑顔でミカにパンを手渡しました。「今日はお金はいらないよ。特別なプレゼントだ。」

ミカは驚きながらも、パンを大切に抱きしめて「ありがとう!」と元気よくお礼を言いました。そして、家に帰ってそのパンをお母さんと一緒に食べました。ミカはその味に驚き、「これ、虹の味がする!」と大喜びしました。

その日から、ミカは毎朝パン屋に通うようになり、タカシさんと仲良くなりました。彼女は時々、友達を連れてきて「虹のパン」をみんなで楽しみました。パン屋のカラフルなパンは、街中に笑顔を広げ、やがて「虹のパン屋さん」は街の人々にとって欠かせない存在となっていきました。

そして、タカシさんもまた、ミカやその友達との交流を通じて新たな喜びを見つけました。虹のパン屋は、ただパンを売るだけの場所ではなく、幸せを届ける場所になったのです。


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