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「小さな願いの伝言板」ショートショート

ある日、のどかな町の小さな公園の入り口に、不思議な伝言板が設置された。伝言板には「あなたの願いを教えてください。叶える手助けができるかも」と書かれていた。そこにはメモ帳とペンが用意されていて、誰でも自由に願いを書き込むことができるようになっていた。

最初に気づいたのは、公園をよく訪れる小学2年生のケンタくんだった。ケンタくんは「いつも一緒に遊んでくれる友達ができたらいいな」と書いて、メモをそっと貼り付けた。それから数日後、公園で遊んでいると、偶然同じクラスのトモヤくんと出会い、自然と一緒に遊ぶようになった。ケンタくんは伝言板のことを思い出し、「本当に願いが叶ったみたいだ」と嬉しそうに笑った。

それから少しずつ、伝言板にはさまざまな願い事が増えていった。「おばあちゃんが元気になりますように」とか「試合に勝てますように」といった小さな願いが多かったが、どれも大切なものばかりだった。誰がこの伝言板を設置したのかは誰も知らなかったが、いつの間にか公園の人々のちょっとした楽しみとなっていた。

ある日、一人の老人が伝言板に気づいた。彼の名は田中さんで、この町に長年住んでいるが、最近はひとりで過ごすことが多くなっていた。彼は「誰かと一緒にお茶を飲みながら話せる日が来ますように」と書き込んだ。

すると翌日、公園で散歩をしていた同じく高齢の女性、ミヨさんが伝言板を見つけ、田中さんのメモに気づいた。彼女は少し悩んでから、伝言板に小さなメモを追加した。「お茶をご一緒しませんか?」と書かれていた。次の日、田中さんはミヨさんと一緒に公園のベンチでお茶を楽しみ、話に花を咲かせた。二人は意気投合し、それからもたびたび公園で会うようになった。

この伝言板の正体は、実は町に引っ越してきたばかりの青年、アキラさんが設置したものだった。彼は「この町に住むみんなが少しでも笑顔になれたらいいな」と思って設置したのだが、予想以上にたくさんの人々の願いが叶っていることに驚き、そして密かに嬉しく思っていた。

伝言板はその後も、町の人々の小さな願い事でいっぱいになり、ひとつひとつの願いが叶うたびに、また新しい願い事が書き込まれていった。

この町では、誰もが笑顔で過ごせるように、みんなの小さな願いが少しずつ叶えられていく。今日も誰かが新しい願いを書き込み、そして誰かがその願いを手助けするかもしれない。


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