「見知らぬ電話」ショートショート
夜も更け、時計の針が午前2時を指した頃。静まり返った部屋の中で、突然スマートフォンが震えだした。画面には見覚えのない番号が表示されている。こんな時間に誰だろう?不安が胸をよぎるが、眠気もあってか、つい通話ボタンを押してしまった。
「もしもし?」
少しの沈黙が続いた後、低く冷たい声が耳に飛び込んできた。
「逃げろ」
一瞬、意味が理解できず、頭が真っ白になる。声は続ける。
「急いで、後ろを見ろ」
脈拍が早まり、手が震える。振り返ることができない。だが、好奇心と恐怖が交錯し、ゆっくりと首を回す。背後には暗い部屋が広がっている。何もいない。ほっとして息をつこうとしたその時――ドアがゆっくりと開く音がした。
瞬間的に立ち上がり、部屋を飛び出した。誰かがいる。確かに後ろに足音が聞こえる。必死で走るが、足音もピタリと追ってくる。
逃げ場がない。廊下の突き当たりにある非常階段へと急ぎ、扉を開けた。だが、そこに待っていたのは――電話の声の主だった。
「やっと捕まえたな」
にやりと笑うその男は、手に携帯電話を握りしめていた。それはまるで、彼がすべてを操っていたかのような表情だった。
男が一歩近づく。逃げられない。心臓が鼓動を激しく打ちつける中、男が口を開いた。
「次は君が電話をかける番だ」
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