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「不思議な手紙」ショートショート

彼はある朝、自宅のポストに見慣れない封筒が入っているのを見つけた。差出人の名前はなく、ただ「未来の君へ」とだけ書かれている。奇妙な気持ちを抱えながら封を切ると、中には手書きのメモが入っていた。

「3時15分に公園のベンチに座ること。そうすれば、未来を変えられる。」

冗談かと思いつつも、気になった彼はその時間に公園へ向かう。そこには誰もいない。ただ、約束通りベンチに座ると、目の前に古びたスーツを着た中年男性が現れた。
「お待たせ。」その男性はニヤリと笑い、話し始めた。「実は俺は未来の君だ。どうしても君に伝えたいことがあってここに来たんだ。」

彼は驚きつつも、話を聞くことにした。「これから数日後、お前はある選択を迫られる。その選択次第で、君の人生は大きく変わる。俺はその未来を経験した結果、君が何を選べばいいのかを知っているんだ。」

中年の男性は、具体的な出来事や選択肢について詳細に語った。それは驚くほど現実味があり、彼の生活に直結する内容だった。未来の自分がこんなにも必死になる理由を考えれば、どうやらそれに従うべきだと思えた。

数日後、彼は予言通りの場面に遭遇し、迷わず未来の自分の助言通りに行動した。

しかし、選択の結果、すべてが終わったあと、再び同じ手紙がポストに届いた。そこにはこう書かれていた。

「おめでとう。君は確かに未来を変えた。でも、それが良い未来とは限らない。」

彼は茫然とした。あの中年の男性は本当に自分だったのだろうか?それとも、全ては何者かの仕組んだ罠だったのか。

窓の外には、あの日の公園がぼんやりと見えていた。



満月の夜にだけ開くドーナツ屋さんのお話です!


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