「愛川町と震災」~平成26年度第一回防災会議 会議録~ (愛川町日記 2016年4月26日より転載)
平成26年度第一回防災会議
開催日:平成27年2月18日
担当課:危機管理室
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ま、たまにはね
僕は審議会を傍聴する。
「審議会」というのがポイントだ。
審議会は<町民の立場で会に参加している「公募委員」>と<専門的な知識をもった「委員」>と<役場や行政からの「事務局」>の三竦みが参加し、一つの議題を討論する。
リアルタイムでの様々な立場からの討論は愛川町の人間として聞きごたえがあり、ホームページなどで公開されない豊富な資料や調査結果を見れるというのも楽しみの一つだ。(資料を持って帰るのは有料ですが)
一人傍聴席に座り感じたことをこうして、拙い文章にまとめては自己満足に浸っている今日この頃。
最近は仕事が忙しくなかなか審議会の日程が合ない上に、年度初めということで審議会自体が少ないです。
ならば、と。
おさらいの意味もあって、傍聴に行きたかったけど行けなかった審議会の<議事録>を読んでみましょうか。
というわけです。
会議録の不利な点・利点
会議録。
審議会の後で公開される議事録です。(各審議会のホームページでダウンロードできます)
これが読んでみるとなかなか厄介。
以前も書いたと思いますが
なんといいますか「人」が出てこないんですね。
僕も傍聴したり、自分が委員の審議会の会議録を見ることがありますが、「あれ?」と思うことがあります。
話がわき道にそれたときや、身振り手振りの説明や、資料の説明は当然会議録ではばっさりと削らています。
傍聴で見れるはずの資料も当然見れません。
ただ、今回の様に後々見直すという点、あくまでも事実と内容を伝える証拠なる点はいいですね。
それでは、今回の会議録を見てみましょうか。
「平成26年度第一回防災会議」
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「平成27年2月18日」
なので結構古いですね。
実はこの会議は審議ではなく「愛川町地域防災計画」の諮問的な意味合いが強く、この会議は今回第1回で県との協議に入りましたので、これ以降行われておりません。会議録からわかるように丁々発止のやり取りがあったわけでもありません。
この場合は傍聴ではなく会議録でも十分ですね。
しかし、肝心は「愛川町地域防災計画」がわかりませんので補足をしていきましょう。
震災と愛川町
愛川町地域防災計画。
地域防災計画は、災害対策基本法(第40条)に基づいて定められた町の防災対策の基本となる計画です。
町では平成27年4月に地域防災計画を改訂しました。
そうとう分厚い資料です。
僕のブログでもたびたび資料を引用しています。
今回、僕が防災会議の会議録を引っ張り出したのには理由があります。
2016年4月14日、九州熊本で大きな地震がありました。
今もなお被害が続く今回の熊本地震。
5年前の東日本大震災を教訓に、昼夜を問わない復旧作業や支援活動がつづいています。
では、愛川町の震災の備えは?
僕は、ハザードマップを片手に愛川町を歩いたことがあります。
防災についも何度かこの場で書きました。
ただ、「土砂災害」や「水害」はなんとなく理解できましたが、「愛川町と震災」についてはあまり触れてこなかった気がします。
542ページもある愛川町地域防災計画の「第二編 震災対策」を見ていきましょう。
(というわけで以下の資料は愛川町地域防災計画からの引用です。)
愛川町で予測されている地震は以下の8つ
(9の元禄型関東地震は津波参考)
そして、それに伴う被害予測も出ています。
例えば、「2016年4月16日1時25分頃発生した熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3(暫定値)の地震」は
(単純に比較はできないでしょうが)活断層を要因とする地震で表中3の「神縄・国府津―松田断層帯地震」に似ています。
(三浦半島活断層群の地震は地震の規模は同レベルですが、震源となる活断層が遠い)
「神縄・国府津―松田断層帯地震」が発生した場合の予測される愛川町の被害は
全壊家屋 160棟 自力脱出困難者 20人 一か月以上の避難者 2050人 震災直後の帰宅困難者 2160人
という数字がでています。
しかし、実際に熊本で起きた地震は、(やはりここでも政令指定都市の熊本と単純に比較はできないが)地震の規模を示すマグニチュードが低いのに被害は大きいです。
南関東地震クラスになれば愛川町でも想像を超える壊滅的な被害がでることでしょう。
備えれば憂いない
という言葉は防災に関してはまさにその通りで、「小さい災害」に備えず「大きな災害」の準備をするに越したことはないです。
そもそも愛川町は地震に強いのか?
二つの地図を見てもらいたい。
どちらの地図も古く見にくくて恐縮ですが、愛川町の地図です。
まず一枚目
(☆こちら側が相模原市側)
地震動の危険性、つまり、揺れやすい土地かどうかを表す地図です。
赤が揺れ易い土地で、黄色が薄くなるにしたがって揺れの影響は小さくなります。
愛川町全域が揺れにくいとなっていますが、「相模川沿いの低地エリア」「中津川沿いの田代地区一部の宅地や堤防付近の盛り土」が揺れが大きくなり、次いで「中津川沿い・相模川沿いの低地部」「半原エリアの谷底平野」となっていく。
実はこのエリアの多くは土砂災害の警戒エリアと重なる場所も多く、地震の後の土砂崩れも警戒しする必要があるエリアです。
もう一枚は
(☆こちら側が相模原市側)
こちらは液状化の危険度を示す地図です。
先出の地図の様に赤から黄色にかけて危険度が薄くなります。
愛川町全域で液状化の被害は少ないとみられていますが、「相模川沿いの低地エリア」「中津川沿いの田代地区一部の宅地や堤防付近の盛り土」はここでも危険エリアとなり、工場や人家が多い場所では建物への被害が出る恐れもあります。
ただこの地図がいつ頃の調査に基づいたのかちょっと疑問です。
分譲や更地化で地質や地形が変わってしまったところもあるでしょうから、できれば最新の地図をどこかで公開してほしいですね
どちらにせよ、同じ愛川町町内でも、発災後は被害の状況が大きく違い、それぞれの対応が求められるということがわかります。
地図を見れば、細野地区が地震に強い地形らしく、そこに救援物資や食糧備蓄、避難所開設など「愛川町の震災拠点」を置くのが適切でしょう。
細野地区には、消防署半原分署がありますね。
いざという時の拠点として利用できないでしょうか。
今の愛川町役場の耐震性を論じれば、心もとないですので。
今回の防災会議の会議録を見れば、「国の基準」「県の基準」で行が終わっています。
はたしてそこに「愛川町の基準」が存在してはいけないのでしょうか?
「防災の為に自治会」とあります。防災の最小単位である自治会ですが、そこでも地域によって防災の課題が違います。
例えば、愛川町には神奈川県で有数の南米系の人達が住んでいます。
自治会によっては自治会員じゃなくても隣近所に海外の人、というところもあるでしょう。
いざ発災となった時に、彼らとどのように行動をするのか。
通訳は?医療は?避難所は?
差別や区別するのではありません。同じ愛川町の町民なんですから。
助け合う為に。
その指針があってもいいでしょう。
自治会にあった「愛川町の基準」を作る必要性はないでしょうか?
予想外の事を予想する事
愛川町の被害予測の中に帰宅困難者の項目があります。
電車のない愛川町。
自家用車やバスで駅に通っている人も多いでしょう。
地震発生時から相模原駅や厚木駅から愛川町に伸びる車列。
主要道路が渋滞の車列で埋めつくされれば緊急車両は立ち往生をする。
そもそも主要道路が使えるのか分からない。その場合の輸送はどうするのか?
東日本や熊本の被害を見れば、心配事は尽きません。
自然と言うものは、人間が予測する以上の力を持って牙を剥いてくる事があります。
ならば
予測以上の事が起きるという予測をして準備をする。(少し屁理屈に聞こえますが)
日本という国が地震大国である限り、地震への恐怖と準備は常に持ち続けなければならないでしょう。
いざという時にどう動くのか。
そのための訓練は必要です。
訓練によって生じた問題や課題などを持ち寄り、情報の交換、それぞれの地域の防災上の不具合を是正する。
これは「机上訓練」です。
僕はそういう意味での「防災会議」が存在してほしかったです。
震災時はあらゆる組織の垣根を越えて行動しなくてはいけません。
しかし、垣根を越えた先の情報がなければ、飛び込めないでしょう。
この地域防災計画も震災時にどれほど効果的に発動できるのかわかりません。
不測の事態に備えたシュミレーションは何回やっても構わないでしょう。
そして。防災において一番大切な事は。
私たち町民が、行政を町をあてにしない事です。
いやいや、愛川町が頼りない、と言う意味ではなく。
震災で町が壊滅的な被害を受けたら、国からの支援が数日かかるとしたら。
まずは「自助」です。
町からの支援、国からの支援がなくとも数日間は生活できる<自分自身の>備えをしておくことです。
防災グッズや防災知識の確認は定期的に行うべきでしょう。
自分の命を守るのは最終的には自分達です。
それが「防災の基本」です。
今回テキストにした「防災会議会議録」
枚数は少ないですが
様々な情報を得る事の出来る「会議録」でした。