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熊野通信アーカイブス(その弐拾壱) :聖なる水の再生パワー

今月7月14日(注:2006年当時)には、熊野那智大社で大滝を背景にして「那智の火祭り(扇祭り)」が行われます。真夏の火祭りとは、また暑い熱いと言うイメージですが、ご神体はダイナミックな水の流れそのもの。今回は、熊野の「瀧」についてお伝えします。

夏至を過ぎて、陰る太陽への祈り・・!

6月下旬に私たちの住む北半球は、太陽の南中高度が最も高く、昼が一番長い夏至を迎えました。太陽の光は、万物をあまねく照らし育み、生物にとってはかけがえのないモノです。その光が、だんだん弱く短くなっていくと感じるタイミングで、もっと燃えて欲しい!と言う祈りと共に、自然への感謝の気持ちをこめて火祭りが行われます。

サッカーでおなじみの熊野の八咫烏(ヤタガラス)の末裔伝説をもつ、地元の若者の「ハリヤ!ハリヤ!」の勇壮なかけ声と共に繰り広げられます。大滝に向かう12本の扇の神輿は、熊野に上陸した天津神を象徴し、それを迎える12本の大松明は、熊野に棲んでいた国津神の一族で、この両者が大滝を舞台に「お清め」と称する壮絶な炎のもみ合いを見せるのです。

聖なる水に畏敬の念を・・・!

滝の語源は「タギ」あるいは「タギル」と言い、水がほとばしって流れる有り様を示しており、そのかたちは、断崖絶壁から水が落下する姿を表しています。古事記では、天照大神が天之真名井(アメノマナイ)で、素戔鳴尊(スサノオ)と約束をしたときに、聖なる水によって清めた空間の、狭霧の中から生まれた三柱の神様のうちの、水の女神の名前に「タギツヒメ」と言う神様がおられます。

また漢字でも滝は、サンズイ偏に龍と書き、龍神が水の流れとなって、天空と大地をつなぐダイナミックなエナジーを象徴しています。古代から天空より落下する滝の壮観な流れを眼の前にして、滝に畏敬する素朴な自然崇拝が根底にあったと思われます。

永遠の生命を育む水の時計・・!

もともと滝は、地層や地形の不均衡で生じますが、世界的にはベネズエラのエンジェル滝など、何と979mの落差を誇るモノもあります。日本列島では、山間部から海までの距離が短く、急峻な山を流れる河川に数多くの滝があり、熊野那智では四十八滝が有名です。

中でも那智一の滝は、日本では三番目の落差で高さ133mあり、遙か熊野灘の海上からも、その神秘的な姿を見る事ができます。「滝」・・ただ水が上から下へ流れ落ちているだけ!・・こんなに単純な自然に神を見出した感性は、絶え間なく流れ続ける水の流れに、永遠の時を感じたからではないでしょうか?外見的な躍動感で見る人を感動させ勇気を与えるだけでなく、滝のダイナミズムは、生命再生へのパワーを発信し続けていると思います。

NPO法人 熊野生流倶楽部 代表 満仲雄二

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