「先取り学習」に失敗する受験生の共通点と対処法
難関校対策の一環として「先取り学習」に取り組んでいる受験生も多いのではないでしょうか。
私も2007年発売の本で先取り学習を提唱して以来、早期から指導している難関校受験生には、ほぼ全員に『予習シリーズ』(四谷大塚の塾教材)による先取り学習を進めていただいています。
先取り学習で『予習シリーズ』を使用する最大のメリットは、最短距離で「必要十分な先取り学習」を完了できることです。
例えば、新5年生のタイミングで開始すれば、約4ヶ月(2~5月)で先取り学習が終わり、6月以降は次のステップに進むことができます。
もちろん『予習シリーズ』以外の教材を使用したり、プロのサービスを利用して先取り学習を進めていく方法もあります。
「先取り学習を効率的に完了させる」という目的に向けて、お子様の状況等を鑑みて最適な方法を選択していただくのがいいかと思います。
しかし、不適切な取り組み方をすることで先取り学習が機能せず、十分な成果を得られないケースも少なくありません。
先取り学習を成功させるためには、リスクと対処法についても理解しておく必要があります。
先取り学習に失敗する受験生の共通点として、特に多いのは「長期化している」ことと「精度が低い」ことです。
逆にこの2点をクリアしていれば、先取り学習が失敗する可能性はほぼなくなります。
長期化するというのは、例えば新5年生のタイミングで開始して半年以上かかってしまうようなケースです。
先取り学習の目的は、早い段階で最低限の基礎固めを行い、受験勉強を中長期的に効率化することです。
例えば、5年生5月に先取り学習が終了すれば、入試本番まで残り20ヶ月の学習が効率化され、本格的な入試対策にかけられる期間も長くなります。
ただ、先取り学習が長期化すると、その遅れた分だけ「効率化される期間」が短くなってしまいます。
また、長期化している受験生ほど、先取り学習が完了しない(挫折する)傾向があります。
長期化を避けるためには、完璧主義にならないことと、先取り学習のための時間を「天引き」することが有効です。
前者については、学習内容を深追いしたり必要以上の反復をせず、目的(最低限の基礎固め)を見失わないようにします。
『予習シリーズ』の場合は、基本(例題、類題、基本問題)のみを行い、応用(練習問題)はカットする感じになります。
後者については、自宅学習の冒頭で先取り学習を一定時間(30分など)行い、その後、塾の課題(宿題、復習)を行うようにします。
これと逆の順番(塾課題を先に行い、残り時間で先取り学習を行う)だと、先取り学習の時間を確保できなくなる傾向がありますが、冒頭で先取り学習の時間を「天引き」することで解決するケースが多いです。
精度が低いというのは、先取り学習で取り組んだ内容の理解が浅く、再現性が明らかに低い(数値替えレベルの類題が解けない)ケースです。
私が5年生に実施している『予習シリーズ』確認テスト(下記資料参照)でも、事前に「ほぼ理解できている」とご報告をいただいていたり、チェックシートで全問題が「○」になっていたお子様が、厳しい結果(10~20点など)になるケースもあります。

精度の低さを避けるためには、受験生本人の自己申告を鵜呑みにせず、随時「効果測定」(確認テストなど)を実施することが有効です。
先程のケースでは、仮に確認テストを行って厳しい結果になった場合でも、早い時点で(精度が低いことに気づいて)取り組み方を修正すれば、先取り学習に限らず、その後の学習全般を改善することができます。
先取り学習は、正しい方法で取り組めば再現性が高く、非常に有効な手段となります。
上記のリスクと対処法を理解し、必要があれば取り組み方を見直していただくのもいいかと思います。
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