『中学への算数』のリスクと対処法
『中学への算数』は難関校受験生向けの月刊誌で、通称「中数」と呼ばれている定番教材です。
メインは「日日の演習」(問題と解説が各10ページ前後の記事)で、各号のテーマ(「図形と比」「場合の数」など)に沿って、主にその年度の入試問題が20大問ほど掲載されています。
日日の演習は、重要問題が厳選されていることに加えて、新傾向の問題を含む「難関校入試の流行」が反映されていますので、上手に活用すれば、難関校対策の「強力な武器」になります。
ただ、『中学への算数』(日日の演習)に取り組んだものの、十分な成果が得られないケースもあります。
使用するタイミングと方法を間違えなければ、難関校対策として最も「投資対効果」の高い教材なのですが、それを間違えると投資対効果は低くなってしまいます。
1つ目のリスクは「重要問題を網羅しづらい」ということです。
日日の演習は、問題数(約20大問)と出題年度(基本的にはその年度の入試問題から選定)の縛りがあるため、各テーマの重要問題を網羅することは難しくなっています。
そのため、日日の演習を1年分(約20大問)仕上げても、各テーマ(分野)の完成度に不安が残ってしまいます。
対処法として私が(家庭教師の生徒さんに)実践していただいているのは、日日の演習を3年分(各テーマにつき3冊)行うということです。
各テーマの厳選された約60大問に取り組むことになりますので、重要問題が漏れる可能性は低くなります。
もちろん、日日の演習3年分を行うというのは大変なことですが、2年目以降は(類題の重複、難易度に慣れることで)思っていたより楽だったという声を家庭教師の生徒さんからも多くいただいています。
実際、これまで難関校に合格してきた生徒さんの8割以上が、入試本番までに3年分を完了しています。
2つ目のリスクは「定着していない可能性がある」ということです。
日日の演習を10冊以上終えても効果を実感できないというケースでは、学習内容が十分に定着していない可能性もあります。
以前、面談で「中学への算数(日日の演習)を10冊以上終えたのに、成果が出ない」というご相談をいただいたことがありました。
そこで、授業で実施している確認テスト(数値替えの問題)を提供して
行っていただいたところ、ほとんどの問題が解けなかったようですが、
実際にはこのようなケースも多いと思います。
対処法としては、1冊終えるごとに「効果測定」を行うことが有効です。
解説を読んで理解できなかった問題は外して、理解している(ことになっている)問題から何問か選んで、親御様の前で解いてもらえば、大雑把な定着率を確認することができます。
日日の演習で得られる成果は、定着率によって大きく変わります。
私が6年生の毎回の授業で実施している(日日の演習の)確認テストでは「対平均得点率」(※) という数値を算出していますが、直近数年間で下記のデータ(母集団29人)が出ています。
(※) 得点が75点、全実施者の平均が60点なら75÷60=1.25→125%
対平均得点率120%以上 → 学校別模試の算数偏差値63(平均値)
対平均得点率80%未満 → 学校別模試の算数偏差値49(平均値)
例えば、サピックス開成模試(2024年9月実施)では、合格可能性80%偏差値は62、合格可能性50%偏差値は52ですので、偏差値63なら合格可能性80%以上、偏差値49なら合格可能性40%前後ということになります。
『中学への算数』(日日の演習)については、プロの受験指導者の間で評価が分かれることも多いのですが、適切に活用すれば、非常に大きな成果を得られる教材です。
私のサイトに掲載している合格体験記でも、多数の親御様が『中学への算数』(日日の演習)の具体的な取り組み方を書かれていますので、よろしければご参考ください。
■公式サイト「中学受験の戦略」(合格体験記など)
https://www.kumano-takaya.com/
■著書『開成合格率79%の東大卒家庭教師が公開する
難関校合格への99の戦術』
https://www.amazon.co.jp/dp/475393568X/