別役実不条理劇『いかけしごむ/寝られます』感想

劇団タイコバンさんの公演を観てきた感想を細かいこと覚えているうちに残しておきます。
こういうの未だに書き方分からないので読みにくいかもですが、以下、簡単に感想です。

いかけしごむ

観た順番にBパートの話から。伊藤さん、出演するたび上手くなっていく。あと、出囃子も衣装もかなり素の本人過ぎてウケました。なんで、出囃子がある。
たこ丸さんはやっぱりスーツが似合う。なんだかんだ、相性がいい役者二人だなぁと思いました。あるいは、相手に合わせるのが上手いのか。
二人の呼吸の合わせが綺麗だなと思いました。面白い漫才見てるみたいな??Aパートの方はコントっぽかった気がします。
たこ丸さん、真人間も異常者もどっちも見応えかる役者だなと思いますが、今回はどっちの面も見れて良かったです。大変だったでしょうに…
真ん中あたりの席座ってたんですが、女がお絵かき帳をめくるシーンできれいに似顔絵がパラッと見えて痺れました。
Bパートは大まかに、女のリアリティが強かったなという印象です。また、お互いのリアリティをぶつけ合ってバトルをしているみたいにも見えました。

Aパートは先述した通り、コントって印象でした。全体通して、女のリアリティに男が迷い込んじゃったみたいな印象。かんたさんのコメディぢからが強かった。イサカさんはイサカさんでその世界の中でかんたさんの作る世界に上手く乗っかりながら、でもやっぱり男の変な感じも出ていてBパートとはまた違うテイストを楽しめました。この二人の役者の組み合わせも良かったなと思います。
また、伊藤さんの女はリアリティが強かったけど、かんたさんの女は存在の強度が高かったという印象です。男が認識している世界を塗り替えるという点では同じようなものだけれども、その過程が異なっていました。
また、この回は終始空気がコメディチックなまま進んでいきましたが、警官の雰囲気が絶妙にハマってたように思います。観ながら、これどうやって締まるんだろ…と思っていたら、警官がガッツリ空気を変えてすげ〜〜となりました。そのあと、また女がおちゃらけてましたが。
このパートは二人のリアリティの位置がどこにあるんだろうと観ていても観終わっても、なんだか不思議です。

寝られます

Cパート。まず明転した瞬間、女がキャラクターすぎて、うわぁ!となりました。出だしの見え方は直前の『いかけしごむ』Bパートとは対極でしたね。それで、しっかり似合って着こなしてるんだから齋藤さんすごいなというのが第一印象です。齋藤さん、こういう虚構な役ひときわ上手いですね。篠森さん演じる男も、この魔女に振り回されながらなんだかんだおかしい人間で最高でした。それと、男のリアクションの取り方や温度感もあり、いちいちやり取りが面白い。男の素の笑いが出ていたのも観ていて面白かったですけど、その笑いがノイズになっていなかったのは立ち方が上手いなぁと思いました。
全体的にポップでフィクションな雰囲気のまま、現実が塗り替えられていったように見えました。

Dパート。この二人が出る芝居はもう十回くらい観たんじゃないかという気さえします。この回は魔女がマジな感じの魔女で、お〜となりました。魔女すぎる。
Cパートはコント寄りな印象でしたが、この回はかなり会話劇な印象です。死んだ子供のために死ぬべきというものが、遅効性の毒のように男の中に緩やかに広がっていったように見受けました。
飯田さんの魔女も永い時を生き続けてきた魔女の風格があり、岡部さんの男も長い旅を続けてきたくたびれた雰囲気があり、全体的に寂しさや虚しさみたいな印象を受けました。

最後に

不条理劇は、多分2019年演フェスの『社長吸血記』ぐらいしか観たことがなかったですが、かなり楽しめました。そして、疲れました。
今回の作品の現実と虚構を対等に扱う姿勢は、虚構に対して誠実だなぁという印象です。虚構は現実の下に置かれがちですが、対等なものであると言っているのは面白くもあり、その言説の真っ直ぐさに恐怖もあるなとゾクゾクしました。
また、先日ツイッターでも少し言及しましたが、虚構が現実を飲み込む不条理劇の形は、この世界ではいくらでも存在することだなぁと改めて考えました。もっと色々別役実作品観てみたいですね。あるいは自分でやってみたいなとも思います。
別役実の虚構に対する誠実さを知れたいい公演でした。
あ、あと、本筋とはあまり関係ありませんが、オペで入っていた後輩がチョイスした客入れの中にユリイ・カノンの『あしたは死ぬことにした』が流れ出した瞬間、うわ〜〜ってなって、終わったあとに「あしたは死ぬことにした、流したよね…?」と思わず言いに行っちゃいました。なつくて、なつくて。オペもお疲れさまです。
なんて書けば良いのか分からなくて、数日かけて書いたらまとまりきらなくなりました。ともかく、出演者、関係者の皆様公演お疲れ様でした。


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