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「僕と築50年位の貸家 」その2

大家さんの許可を得て 僕は早速 ホームセンターへ。夢もなにもない ただ古いだけの貸家のベニアの板と壁を何の色で明るくするか…
そう考えたら ワクワクして来た。
何色もあるペンキの色が 輝いて見える。
「扉は…空色にして、壁はオフホワイトかなぁ…」と心の中でつぶやいたつもりだったけど
思わず 声に溢れていたようで
近くで せっせと品出ししている店員が
不思議な顔をして僕を見ている

やべ…。やっちまった…。

空色のペンキ缶とオフホワイトのペンキ缶を
カゴにそそくさと入れて逃げ出す様に
その場を立ち去る。
本音を言えば もっと あの古いだけの貸家を
希望が持てる色に染めたくて色探しをしたかったけれども バツが悪い…。

…ペンキを塗るなんて作業は 初めてだ。
何が必要か…調べもしなかった。
ペンキ売り場の近くに必要な物があるか??
と、とりあえず 近場にあったローラーを取る。
ペンキとこれさえあれば塗れんじゃね??
僕の気持ちは もう既にカゴに入ったペンキ達をローラーで塗ったような気になっていた。

会計を済ませ、築50年位の貸家へ戻る。
ガラスに格子が付いた 引き戸の玄関。
鍵を開けるのも閉めるのにも コツがある…。
これは なんとなくの世界だ… なんとなく
片足でどちらかの戸を押して鍵を回せば 開いたり、閉まったり…

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