批評会用

批評初心者の感想②(笹塚 心琴『ご縁があれば』評)

第1回透明批評会8月度 笹塚 心琴さんの『ご縁があれば』評をすることになりました。批評は今回が2回目ですが、他の人の小説を批評はその作品をより深く読まないといけないので、本当に勉強になります。それでは今回の批評(感想)を書いていきたいと思います。

こちらが今回の作品です。

この作品は、いろんな要素がブレンドしているように思いました。メインテーマは「死」という非常に重い内容にもかかわらず、そこに爽やかな恋物語が違和感なくいブレンドされていて、それももう一つのテーマ「縁」といういわば運命の出会いの要素が混じっていて、さらに人間と死神の恋愛という「禁断の恋」までもが含まれているのですごくレベルが高い気がしました。

主人公の橋場詩織(はしばしおり)は、常に生きることの意味を考えていて、その考えすぎたことをきっかけで、絵を壊してしまい秋野という人物に出会います。他の人の批評の中では、秋野はこの時点で詩織に恋を持ったから出会いのきっかけが増えていったのかなということも書かれていましたが、私もそういう気がしました。ただ元々は、自殺者が増えることを食い止めたいという一心で、その予備軍の様な思考を持っている「詩織」に注意喚起をするために近づいたのではないのかと、しかし実際に本人にあった時に「禁断の恋」に目覚めてしまったのではないかとも思いました。

いきなり「死神」といわれてバカにされたと思った「詩織」ですが、葬儀会場でも再会し、本物とわかってからは、どうしても気になる運命の存在。同僚の後押しもあって高尾山に自ら会いに行く詩織。高尾山をネットで調べたら修験道の霊山とあったので、死神秋野はこの山を通じてあの世への扉を通じているのかいうのがわかります。ついに4度目の再会をした2人は、偶然の「縁」があるのではなく「運命の出会い」と確信し、詩織が天寿を全うするまで一緒にいることを誓い合うという不思議なハッピーエンドで終わります。

この作品は、死神のイメージも変わりますし、禁断の恋についても触れられていますが、恋愛ならば 同じ人間同士でも「差別」が含まれて実らない恋などが現実問題としてあります。しかし恋愛は本来自由でたとえ異種間でもいいというのは、恋愛の差別に苦しんでいる人の励みになる気がしました。

そして、死に対する考え方「自殺はダメ」という強いメッセージも感じました。生きることの意味を考えるのは私もしたことがありますが、確かに考えること自体に意味のないことだし、人間はいつか死ぬわけですから自ら死を選んではいけないというのもその通りですね。


人の魂をこの世からあの世に送る死神の死神の仕事、本当は上司(最高神?閻魔?)のような存在の指示で客観的に働いているものが、「恋」をするという禁断のこと。さて、果たして上司?がOKをだしたのでしょうか?(それとも無許可、もしくはこの世のことに関しては口を挟まない??)むしろ人間に交じっているからそういう死神夫婦は他にも実在しているのか?人間だけ年を取るのか、それとも合わせるように老けていき、人間が天寿を全うし無事にあの世に送り届けたら、また若返るのか? 

多分そこは読者の想像の範囲ですね。

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そこでもし、この部分を「私が書くとしたらどうするか?」と考えてみました。

1つ目は最初の出会いで、絵が壊されるシーンがありました。死神である秋野は全く意にも介さずに許しますが、そこでの説明を物語の終盤に組み入れても良いのかともいました。つまり本業はあくまで死神なので絵はちょっとした副業だから気にならない、ただそこに詩織への恋愛感情があるということだとしても、それをにじませながら少し会話を入れた方が、良い気がしました。

2つ目は、葬儀会場で怪しまれる格好をしていた秋野を見つけた時、この時に秋野が詩織以外の人物にも見えるものかどうか?死亡した山内さんを紹介するくだりは、もう他の人には見えないのかどうか?そのあたりがあると、この世とあの世を往復する秋野が、この世の人からは見えない異空間にいるから怪しまれず、死後の山内さんを迎えに来ている。そこに詩織だけが見えたのは秋野の死神による力なのか、芽生え始めた二人の恋の力で偶発的に起こった奇跡なのか?そのあたりを少し加えた方が良という気がしました。

3つ目はは死神に対する誤解の様なものを説明しても面白いと思いました。どうしても日本の死神の場合はネット上で検索すると人を死に追いやる「悪」の側面が強くあります。本文でも秋野がそのようなことを呟いているシーンもあります。でもここで出てくる死神は全く逆の考えなのです。死神自体が空想のような存在ということもあるのですが、これも終盤に自らの説明の前に加えてみて「私の存在を世間では人を死に追い詰める悪のイメージがあるが、実は大きな誤解で本当は違うんだ」みたいのがあったらもっと良いのかなと思いました。

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以上です。最後は私が勝手に考えた事ですが、ここまでいろんな要素が混ざっているの作品なのにハレーションを起こすことなく綺麗にまとまっているので、これは読んでいて楽しかったですし、自らの作品の参考になると思いました。

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