批評初心者の感想③(天羽々幽香『XXX』評)
旅に出ていたので遅くなりましたが、第1回透明批評会9月度 天羽々幽香さんの『XXX』評を致します。旅先での移動中に何度も読みながら、そして他の人の批評を見ながらどうにかまとめることができました。
この作品を呼んで最初に感じたのは、「玄人受け」という印象でした。というのは、この作品は読者に色々な想像を膨らませられるように感じたからです。タイトルの「XXX]というのも読者に自由に解釈してほしいという意味にも感じました。恐らく絵画だと「抽象画」の様なものではと思いました。
そのため読むのに慣れていない人は少し辛いような気がしますが、じっくり読むのに慣れている人にとっては、非常に面白い余韻を感じる作品、つまり玄人受けの様な気がしました。
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それを踏まえて私個人が解釈した内容は、「哲学」と「アストラル体(霊魂)」と「ソウルメイト」というキーワードでした。冒頭から主人公は人の生きる本質の様なものを、ひたすら考える所から始まります。この行為は哲学そのもので、世の疑問をひたすら考えているという感じです。
そして、それだけでなくその後に「こころ」というのが見えるとあります。それは物質的に見えず、主人公だけが見える「こころ」と称する何か?これは「アストラル体」ではないかと思ったのです。
そこには古代ギリシャ哲学者の「プラトン」のイデア論というのを思い出させてくれました。プラトンは実際に目に見えるものは本質ではないイデアと定義したとあります。また別の意味では目で見る物質とは違う方法で見える存在であるようなな意味があるようです。これはこの物語の後半以降の記述で、あるあらゆる物質が白黒になって朽ちるとあります。物質は実は本質の無いもので、実は物質ではない。そんな風でしょうか?
そして、こころというものの「正体」はそれは人間の肉体に宿っている姿とされる「アストラル体」ではないかと思いました。これはいわゆる「霊魂」で肉体を失った死後の姿という状態でよく登場する物ですが、そうなるとこの主人公はイデアの能力の様なものが、身についていて人々の霊魂が見えるようになったとなります。
そしてある女性の「こころ」は、それらとは別の物という記述があります。「不平等に黒く濁っており、艶やか」というのは一般的には悪い印象がありますが、ここで主人公はそれを美しいと感じるだけでなく、「欲しい」と思います。それは欲しいのではなく、互いが引き寄せあっていた出会うべき霊魂だったのではと感じました。
ソウルメイトは魂同士が引きあうようなものと聞いたことがあります。この主人公は他の人が見えない「こころ」という霊魂を見る力が自然に見えそして出会うべき存在と出会ったという事でしょうか?
出会った女性が笑い出すのはどういう意図か?この笑いはその後の流れを見ると好意的と見る方が良いでしょう。以降主人公と共にする記述からして「さすが!よくわかりましたね。そうです、私はあなたと出会うべき霊魂です」という意図を持って笑ったのでしょうか?
そしてその出会いと共に、物質はもはや何の意味もなく朽ちていく。アストラル体の霊魂からすれば物質などもはや何の意味もないという風に描かれているように見えました。
水だけ色を失わなかったのはどういう意味か?ここは難しかったですが、恐らくはソウルメイトである霊魂にとって水の存在だけは不可欠であるという意味でしょうか?実際の人間も水がないと生きていけませんが、それは肉体の欲するものではなく霊魂が欲しているものではないかと、そんな解釈を入れながら読むとしっくり来ました。
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以上が私が読んで感じた内容です。これは如何ようにも解釈できる文学作品だから、あくまで私が感じた一つの考え方という事です。
そして、その解釈を前提に、もし私が書くならというのをやると、どうしても私が感じたようなキーワード「哲学」「アストラル体(霊魂)」「ソウルメイト」を本文中にさりげなく入れたくなります。例えば主人公の語りの中でそのキーワードを、どこかでその言葉を知って、その意味を軽く伝えるような記述が入ったら、読むのに慣れていない、素人の様な人でもより楽しめる作品になるのではと思いました。
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