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巨石を眺めるふたりが創作したポエム

「ジェーン、これホント大きいなあ」「エドワード! どうやって運んだのかしら」
 エドワードこと江藤と、日本語が得意な英国人ジェーンの国際カップルは、ある城の前に来て居た。
「巨石を運ぶ文化は、古代からあったから、中世の後期だと意外に余裕だったのかもよ」「エドワード! そう、でも凄いよ。これ何トン?」

「重さは想像出来ない。それにしても、大きな石だなあ」腕を組み、静かに石を見つめる江藤。
「どうやって運んだのかしら」対照的に、ジェーンは赤いヘアゴムで纏めた、金髪を左右に動かしながら、石のすぐ目の前まで駆け寄る。そしてスマホを取り出していろんな角度から巨石を撮影していく。

「よし、できたぞ」江藤が大声を出して満足そう。
「エドワード! 何が出来たの?」
「うん、詩。 この巨石見ながら考えてみたんだ」

「へえ、良いね。聞かせてよ」
「もちろん。今から語るから、ジェーンはその巨石見ててね」
 ジェーンは巨石の方を向く。
そして「It's always okay!(いつでもオッケーよ!)」の声。

それを聞いた江頭は、大きく深呼吸をする。そして、ゆっくりと語り出す。

変わらなくていい  

しっかりした重みある巨体

風雨にもダメージを受けない
 
日が沈み、暗闇になっても

日が出てきて、明かりが灯っても
   
寒くなろうが
 
暑くなろうが
 
社会が進歩しても
 
疫病や災害で苦しんでも
 
変わらない、変わらなくていい

ジェーンは、江藤の朗読を途中から、目をつぶって聞いた。そしてその余韻を噛み締めた。
「どうだった? 」
「うん、良かった。エドワード凄い!」
「そうか、それは良かった」江藤は、上機嫌。

 ところがジェーンの次の言葉で顔色がほんの少しだけ変わった。
「ても、私の方が上手いの出来る気がした」

 これに思わず不快な顔になる江藤。でも、そこは堪えて作り笑顔。
「ふうん、出来ると言ったよな、なら、ジェーンも詩を作ってよ」

やや嫌味っぽさを出す江藤。しかしジェーンは、全く意を介さない。
「うん、ポエム作るよ。Wait 5 minutes!(5分待ってね)」

 この後、ジェーンは、目をつぶって考え出す。しばらくの沈黙の静けさが流れた。だが厳密に言えば、他の観光客の会話、鳥の鳴き声。風が吹くことで聞こえる木を揺らす音や遠くに聞こえる雑音といったざわめきの声は、例外だ。

 そんな沈黙は、5分は掛からなかった。

「エドワード! 出来たよ!」
「ようし、楽しみだジェーン!」
ジェーンは、目の前の巨石を強い視線で睨む。そのまま声を発する。「Let's go!」
と言って右手を上げると、日本語でゆっくり語り出す。

そのままだって構わない
そのまま時間が経っても
    
季節が変わっても
 
そのままだって構わない
 
多くの人が通り過ぎても 

誰ひとり動物や鳥も来なくても
 
そのままだって構わない
  
そこにいるだけでよい
 
そこにいるだけで素晴らしいから

 ジェーンが、語り終えると江藤は、手を叩いた。「おう、良いなあ。ジェーンさすがだ」江藤に振り返ったジェーンは、少し照れながら舌を出す。
「特にさ、最後良いよね」
「でしょう。そこにいるだけで良いのよ。本当に落ち着くし」
「え? それってひょっとして石じゃ無くて?」
「あ、エドワード! もう終わり!」
と、言いながら顔が赤いジェーンであった。

こちらの企画に参加してみました(引用の部分のみ)


追記:昼間にこの案内が来ました。ダッシュボード見るとそれまでの再興の記事だったビュー数を軽く10倍以上にまでなりましたから、その威力のすごさがわかります。

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今日からこちら伴走します1日目

※次の企画募集中 → 皆さんの画像をお借りします画像で創作1月分

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シリーズ 日々掌編短編小説 359

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