Love songのようにはいかないけど
大学の課題をするために何処かいい場所はないか探していた時にある喫茶店が目に入った。人もそこまでいなく集中できる気がして足を運んだ。
カランカラン
店員:いらっしゃいませーお好きな席どうぞー
窓際のちょっと広めの席に座った。早速飲み物を注文し、パソコンを開いて課題に取り組む。課題をやる時は毎回イヤホンを付けて音楽を聴きながら行う。周りの音をシャットアウトして集中できるから。
数分後…。人の気配がしてイヤホンを片方外し上を見上げる。
?:お待たせしました
店員さんと目が合った瞬間時が止まった感覚になった。
?:アイスティーです
店員さんから目が離せない。
?:ガムシロップはお使いになりますか?あの…
〇:はっ…!…すみませんっ…大丈夫です
『森田』と書かれた名札を付けた店員さんは少し微笑みながらその場を去る。
僕は恥ずかしくなって取っていたイヤホンを耳に入れアイスティーを勢いよく飲む。
そのイヤホンから流れてきた曲は最近流行りのラブソング。普段はあまり意識して聞かないけどこの時ばかりはその曲に意識が向いてしまった。だって曲の歌詞に書かれてる女の子がさっきの店員さんに似ていたから。
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その日からその喫茶店に通いつめるようになった。あのラブソングも毎日聴いている。毎日聴いているとまるで森田さんと一緒にいるような気がして…。いつもと変わらない日常が楽しくなっていた。
今日も喫茶店で課題をして…ちょくちょく森田さんを見つめる。
〇:今日もかわいいなぁ…ボソッ
店長:おいおい…心の声漏れてるぞ〜
〇:あっ…すみません…///
店長:森田ちゃんに気づかれるぞ〜
〇:揶揄わないでくださいっ!!
店長:はいはい(笑)
この店によく通うようになって店長さんから『常連客』として認知されるようにまでなった。
〇:あっ、すみません…ア
店長:いつものだね〜
〇:はい…///
店長:ちょっと待っててね〜
注文も『いつもの』で通るくらい(笑)
課題を進めていると…。
?:お待たせしました〜
店長の声と違って顔を上げると森田さんがアイスティーを持ってきてくれていた。
〇:あ、ありがとうございます…///
ひ:いつも頑張ってるね
〇:毎週課題出されるので…(笑)
ひ:それにいつも来てくれてるし
〇:ここでやる方が捗るので(笑)
嘘だ。本当は森田さんに会いたいから…なんて言えない。
ひ:いつもありがとね…よかったらこれ食べて?
森田さんはクッキーを渡してくれた。
〇:いいんですか!?
ひ:うん(笑)いつも頑張ってるからご褒美(笑)
〇:ありがとうございます…///
森田さんはカウンターに戻って行った。
その姿を僕は目で追っていたら、森田さんと不意に目が合ってしまう。目が合った森田さんは微笑んでくれた。僕は恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。
ひ:ふふっ…かわいいなぁ…ボソッ
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今日はCDショップに用があって来ていた。
〇:確かここに…あった!
お目当てはいつも聴いてるラブソングを歌ってるグループのCD。いつも聴いてたらファンになってしまった。
?:あれ?〇〇くん?
急に名前を呼ばれて振り返るとそこには森田さんが笑顔で手を振っていた。
いつもとは違いメガネをかけていてめっちゃ可愛かった。
〇:あっ…森田さん…こんにちはっ…///
ひ:なんかお店以外で会うのって初めてで新鮮だね!(笑)
森田さんは僕の近くに寄ってくる。いい匂いがしてさらに緊張してしまう。
ひ:〇〇くんもこのグループ好きなの?
〇:は、はいっ!…よく聴いてて…
ひ:私もそうなんだ〜
そう言って森田さんはCDを一枚取る。
ひ:特にこの曲が好きなんだ
森田さんはCDの裏側の文字を指さす。その曲は僕が毎日森田さんを想って聴いていたラブソングだった。
〇:僕も好きですっ!あっ…///
気づいたら声を大きく出してしまった。
〇:ごめんなさい…///
ひ:あははっ!大丈夫だよ〜〇〇くんって面白いねっ!
〇:いやぁ…///
森田さんに面白いって言われるとなんだか嬉しい。
ひ:この曲の男の子ってさ内気でしょ?私はもっと勇気出していったら結果変わったかもなぁって思って聴いちゃってさ〜
森田さんの言う通り、この曲は男の子が一目惚れして女の子にどう思いを告げようかって悩んでいるところ描いている。結局思いを伝えれなかったって感じで終わってるし。
ひ:片想いで終わってるのがこの曲の良さでもあるんだろうけどね〜現実ではもっと積極的に来てほしいっ!って思っちゃうなぁ…って素人が何言ってんだってね(笑)
〇:僕も思ってましたから大丈夫ですよ(笑)
だからこそ今の自分と森田さんが重なって好きなんだと思っていた。けど…。この曲のようなままじゃダメなんだな…。片想いで終わらせちゃ…。
ひ:あっ…そろそろ行かないとっ!…じゃあまたお店でね
森田さんは笑顔で僕に手を振ってレジに向かおうとする。
今がチャンスなんじゃないのか。森田さんと距離を縮めるチャンスじゃ。
〇:あ、あのっ!
ひ:うん??
森田さんは僕を見つめる。
〇:あの…森田さんっ…よかったら今度二人でお出かけしませんか…?
ひ:えっ…
森田さんはきょとんとした顔で僕を見つめる。
あぁ…やってしまったかもしれない。急に自分が働くお店によく通う大学生にデートのお誘いをされても気持ち悪いだけだよな…。僕やってしまったな…。悪い考えばかりが頭の中を埋め尽くす。
ひ:いいよっ!
〇:やっぱダメですよね…ってえっ!?いいんですか!?
ひ:うん(笑)
〇:やったー!
柄にもなく大声で喜んでしまった。
ひ:〇〇くん声大きすぎ(笑)
〇:あっ…///すみません…///
ひ:ふふっ(笑)じゃあ連絡先交換しよ?
〇:ふぇっ!?
あ、やべっ…次は変な声出た。恥ずっ。
ひ:だって連絡取れないじゃん(笑)
〇:それもそうですよね…(笑)
ひ:じゃあこれ追加して〜
こうして僕は森田さんと連絡先を交換できた。
ひ:じゃあまた連絡するね〜
森田さんは笑顔で手を振りながらレジに向かう。森田さんを見送りながら心の中では全力でガッツポーズをした。
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その日から毎日とはいかないけど森田さんと連絡を取るようになっていた。
そして、二人でお出かけする日がやってきた。二人で来た場所は、森田さんと連絡を取り合う中で森田さんが行きたい!と言っていたカフェ。
そこはフレンチトーストが有名でカップルでくる人が多い。僕たちももしかしたらカップルと思われてるのかなぁなんて思っていた。
ひ:ん!!とてもおいし〜
森田さんは頬に手を当てながら美味しさを噛み締めている。
〇:うん!美味しい!
ひ:うふふっ…〇〇くん美味しそうに食べるね〜
〇:そ、そうですか…///そういう森田さんも美味しそうに食べるじゃないですか(笑)
ひ:だって美味しいんだもん(笑)
可愛い…。
フレンチトーストを食べ終え、二人で近くの公園を散策することに。
ひ:私こうやってのんびり散歩するのが好きなんだ〜
〇:なんかいいですね〜最近は暖かいし…
ひ:〇〇くんもハマった?(笑)
〇:そうかもしれないです(笑)
ひ:じゃあさ…今度一緒に散歩しようよ!
〇:いいですよ(笑)
ひ:えへへ…やった〜
森田さんとこうやって歩きながら談笑するのはとっても幸せだった。今なら僕の気持ち言えるのかな…。森田さんの話に集中しながら今日はそればっかり考えてた。
ひ:〇〇くん?
〇:は、はい!?…な、なんですか?
ひ:なんか考え事してた?(笑)
〇:いや…ぼーっとしてました…(笑)
ひ:ふ〜ん…
森田さんは何か言いたげだ。
ひ:ねぇ〇〇くん
〇:はい
ひ:前にCDショップで会った時の事覚えてる?
〇:はい
ひ:じゃああの曲の話も?
〇:はい
森田さんが何を言いたいのか。僕は分かってしまった。僕はダメダメだな…森田さんにリードされちゃうなんて。
ひ:私は〇〇くんから言ってほしいなぁ(笑)
勇気を出せ。ここまで森田さんに言わせちゃダメだ。
〇:森田さん
ひ:はい
森田さんは僕の正面に立ち、真っ直ぐに僕を見つめる。
〇:僕、森田さんの事が好きです
人生で一番緊張した瞬間。森田さんは笑顔だった。
ひ:ふふっ…私の事好きなんだなぁって伝わってたよ(笑)
〇:やっぱり…バレバレでしたか…(笑)
少し照れ臭くなって視線を逸らす。
ひ:うん(笑)バレバレ(笑)……これまで私を好きって言ってくれる人は何人かいたけど…その誰よりも〇〇くんが一番好き
〇:えっ…
ひ:一生懸命だし…頑張り屋だし…それでいて優しいし…私も〇〇くんの事、結構仕事中に見れるんだよ?(笑)
〇:そうだったんですか!?
ひ:うん(笑)…気づいたら目で追ってた、〇〇くんって誰にも優しそうだから…その優しさを私だけのものにして独り占めしたいなぁって思ってたんだよ
ひ:〇〇くんの頑張り屋な所も一生懸命な所も優しい所も〇〇くんの一番近くで見ていたい
〇:僕もひかるさんの一番近くにいたいです
ひ:ふふっ…いいよっ!(笑)これからよろしくね?〇〇…///
〇:っ…!?…///
不意の呼び捨てに僕は人生で一番照れてしまった。
ひ:なんで何も言ってくれないの〜恥ずかしいんだけど…///
〇:すみません…///不意に呼び捨ては可愛すぎて…
ひ:照れたならいいけど…///ってか"森田さん”呼びはもうやめてね?(笑)
〇:はい!"ひかるさん”!
あのラブソングに似た僕の恋の結末は曲の結末とは違う、僕たちだけの結末に変わった。
end.
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