やつはしさん主催の海外マンガ展よかったです!
去る10月27日(日)に東京都中野区で開催された、海外漫画コレクター・やつはしさん主催の展示会にお邪魔しました
書誌的見地から言っても大変興味深い展示内容!
貴重なコレクションを拝見してまいりました
まずは所感あれこれ
やはり個人的にはラテン系の国々の作品に惹かれました
・スペインの漫画家Borja Gonzálezによる優美な画風の2作品…それぞれ、人の顔に、目鼻や口を一切描かないことによって、本来有機的な存在である人間の表情を廃して無機質化に至らしめた結果、むしろかえって作品全体の美的演出が際立つことに!?と感じられました
ただやはり、フランス語で書かれているテキストをもうちょっと読み込むことで、このような登場人物の無表情化がどんな効果を出しているのかが、さらにわかってくるのかな、とも思いました
・ブラジルの漫画家André Ducci による作品"Fanfare"(2021年刊行)には「そうか、フランス語の作品を入手する、という手があったかあ」と衝撃を受けました…うーん、コレクターさんによる冴えた目のつけどころに、あっぱれです
・ところで、アジアのラテン系ともいえる韓国語の漫画も拝見しているうちに、なかなか進まないハングル学習も、漫画だったら楽しくサクサクと進められるかも…という望みが湧いてきました
全体的には、原書に限らず翻訳書も含めて、多様な国々の作品を見せていただけたので、書誌的研究にも存分に資する、すごく面白い内容だったなあと思います
ポルトガルからの移民関連をテーマにしたフランス漫画
そんな中、特に心惹かれたのが、ポルトガル出身の家系に生まれたフランス在住の女性漫画家 Madeleine Pereira が初めて単独で手がけた漫画"Borboleta"(2024年刊行)でした
インターネット上で見つけたポルトガル国営放送RTPのインタビュー音源によると、作者は「父親は、どうしてポルトガルからフランスに移住したのかを、普段あまり詳しく話してくれず、次第に自分のルーツであるポルトガルのことが知りたくなったので、この漫画を描いた」とのことで、1960年代後半を中心とするポルトガル北部のいくつかの町が、物語におけるメインの舞台となっています
1974年の無血革命を前に、そろそろ国民の不満も高まりつつあった時代とうかがえるような、授業内容に不服そうな子どもを描く場面もあったりと、当時のポルトガルの状況を詳しく伝えてくれていて、史料的価値のある作品かも…
ちなみに、更に調べたところ、どうも
独裁政権時代におけるポルトガルの状況を描いた、フランス漫画の系譜…
といえるような、4~5タイトル程度の作品群があるらしいのです
まあ、フランスも、ポルトガルからの移民が多く住む国ですし、独裁時代が終わりを迎えた革命から50年も経ったことをきっかけに、そういったあたりへの関心が高まってきているようですね…
もっとフランス語を勉強して、そういう漫画も読めるようになりたいなあと思いました
以上、本当にたくさんの発見や気づきをくださった展示会の開催者・やつはしさん、どうもありがとうございます!
またこのような機会をいただけるのを、ぜひぜひ楽しみにしてます!
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