Vol.9 津波古遥希|異分野にすぐ興味持っちゃう好奇心ドリブン研究博士
1.どのような研究をしていますか?
私は、フィンランド型先天性ネフローゼ症候群とアルポート症候群の2つの遺伝性腎疾患に着目し、治療法開発に向けた評価系の構築やスクリーニングの研究を行っています。私たちの腎臓は、糸球体という部位において、血液を濾過し老廃物や毒素などを体外へ排出する重要な役割を担っています。しかしながら、糸球体濾過機能を維持するために必要なタンパク質をコードする遺伝子に変異が起こると、糸球体の網目構造が壊れ、糸球体障害に伴う大量のタンパク尿が出現し、最終的には腎不全に陥ります。現在のところ、上記の腎疾患の患者は、人工透析や生体腎移植に頼るしかありません。そのような状況において、新たな治療薬シーズや治療薬標的因子が同定されることは、世界的に大きな発見であり、患者さんを救うきっかけになり得ると考えています。
2.どんな人生を経て、熊本大学に?
熊本大学薬学部(通称:熊薬)に入学した理由は、幼少期からの好奇心と理科の授業が好きだったからです。幼少期の時の私は、好奇心旺盛で自分が疑問に思ったことをなんでも人に聞いたりするのが好きでした。また、中学・高校では、理科が苦手でしたが、補講の授業で化学の基礎を学ぶことができ、科学の面白さを学びました。最終的に幅広い分野の領域を学べ、科学力を医療に貢献させることができる薬学部に行こうと決めました。そこで、地元(沖縄)から一番近く、3年生から研究室配属され早くから研究できる熊薬に入学しました。
大学入学後は、部活動やバイト、県人会を通して、先輩や後輩、同級生と出会い楽しい思い出ができたり、時には人間関係に悩んだりしました。研究室生活では、客員教授である甲斐先生から、人生をうまく生きる(世の中の流れにうまく乗る)ためのコツを学び、今はそれを自然と行えるように試行錯誤しながら頑張っています。指導教員の首藤先生からは、薬学領域のことだけでなく、先の見えない変動の大きな世の中(VUCA時代)で価値ある人材になるためには、「今、何をすべきか?」を考える機会を多く頂き、そのおかげ研究以外にも、部活や県人会の幹事、フットサル大会の開催、甲斐先生の御退職記念や実習での動画作成などいろんなことに挑戦できています。
3.人生の中で、心に残っている言葉は?
研究が上手く進まず、自身を他人と比べ、落ち込んでいた学部4年生の時に見た、ジブリ映画の「耳をすませば」に登場するおじいちゃんの言葉が心に残っています。主人公の雫が初めて小説を書き、自分の実力不足を実感するのに対し、おじいちゃんが「物語を書くのは、自分の中に原石を見つけて時間をかけて磨くことなんだよ、初めから完璧を期待しちゃいけない」と言っていました。私は、その言葉を聞いて、「初めて挑む人が、一朝一夕で研究を思い通り進められるはずがない。完璧を目指すのでなく、目の前の得られた結果を1つ1つ真摯に受け止めていこうと思いました。
また、客員教授の甲斐先生の「運を運びたければ、足を運べ」やスティーブ・ジョブズの「Stay hungry, stay foolish」言葉から、はじめの一歩を踏み出す勇気をもらっています。