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日常的な宇宙

私の友人は少し変わっている。
彼とは学生時代に知り合い、毎日将棋を指して遊んだ仲である。
知り合った当初は日本語がちぐはぐで、これほど頭の悪いやつがいるのかと不審に思ったが、不思議とすぐに成績上位グループに属していた。

彼と将棋を指しながら真面目な話をしようとするのがいつものパターンである。
大抵の場合、私が何を問いかけてもまともに答えてもらえないのだが。
今日の会話は、こんな風だった。

「宇宙人って居ると思う?」
「私がそうだよ」
「つまんな……そういうんじゃなくてさ」
「我々地球人も広義の宇宙人であってだね……」

また適当なことを言い始めたな、と思いながら話を続ける。

「違くてさ、地球以外に人間のような生命体は存在するのかって話」
「地球外生命体の存在はわからないけどね……。少なくとも、今私たちが目の前にしている将棋というゲームは、宇宙と繋がっているんだよね」
「どういうこと?」
「僕たちは将棋を指しながら宇宙を旅しているんだよ」
「将棋が複雑なのは知ってるよ。宇宙に存在する原子の数が、発生しうる局面の数と近いとかなんとか」
「そういう話もあるね」

ゆったりと返された。どういう話なんだ。
会話は続いていく。

「一つ一つの小さなロジックは、宇宙の法則とはかけ離れているように思えるけどね。それらを一つずつ丁寧に追っていきながら、僕たちは旅をするんだ」
「なるほど?」

こういう恥ずかしいセリフを当たり前のように言うところは、学生時代から変わっていない。

「広大な宇宙が物理法則によって星を形作るように、将棋という無限にも思える有限の世界も、大きな法則に従って、一つの局面に収束していく……」
「そろそろ話も収束させてくれると助かるんだけど」
「なんて話している間に、また新しい星が生まれたみたいだよ」
「いやポエムかって……」

と言いかけて、出来上がった局面を見る。

「……確かにこれは、ちょっと宇宙っぽいかも」

今日も言いくるめられてしまった。
だからこそ、彼との会話はいつも楽しい。

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私の友人は少し変わっている。
今どき大真面目に「宇宙人って居ると思う?」なんてことを聞いてくる稀有な人間である。

私が地球に来てから、どれほど時間が経っただろうか。
私は地球外生命体で、あるとき地球に降り立った。
隠す必要はなかった。話しても信用してもらえないからだ。
見た目も地球人そっくりに擬態している。
もっとも、一度擬態してしまうともう一度姿を変えるのに結構なエネルギーが必要なので、元の姿を見せてしまうというような心配はない。

私が降り立ったのは日本という地域であった。
選んだわけではない。偶然である。
そこで私は言語を学びつつ、学校という機関に潜り込んでこの世界の成り立ちを学んだのであった。

件の友人とは学校で知り合った。
気のいいやつで、地球について何も知らない私に様々なことを教えてくれた。
あるとき将棋というゲームを教えてもらってから、彼とよく遊ぶようになった。

今日も彼と将棋を指しており、不意に冒頭の疑問を投げかけられたというわけだ。

「宇宙人って居ると思う?」

「広大な宇宙が物理法則によって星を形作るように、将棋という無限にも思える有限の世界も、大きな法則に従って、一つの局面に収束していく……」
「そろそろ話も収束させてくれると助かるんだけど」
「なんて話している間に、また新しい星が生まれたみたいだよ」
「いやポエムかって……」

彼の顔が少しずつ驚きに変わっていく。

「……確かにこれは、ちょっと宇宙っぽいかも」

地球での生活も、もうしばらく楽しめそうである。

手合割:平手
先手:
後手:
手数----指手---------消費時間--
1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00)
2 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00)
3 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00)
4 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00)
5 7七銀(68) ( 0:00/00:00:00)
6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00)
7 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00)
8 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00)
9 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00)
10 4二銀(31) ( 0:00/00:00:00)
11 7八金(69) ( 0:00/00:00:00)
12 3二金(41) ( 0:00/00:00:00)
13 6九玉(59) ( 0:00/00:00:00)
14 4一玉(51) ( 0:00/00:00:00)
15 5八金(49) ( 0:00/00:00:00)
16 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00)
17 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00)
18 5二金(61) ( 0:00/00:00:00)
19 6七金(58) ( 0:00/00:00:00)
20 3三銀(42) ( 0:00/00:00:00)
21 7九角(88) ( 0:00/00:00:00)
22 3一角(22) ( 0:00/00:00:00)
23 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00)
24 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00)
25 3七銀(48) ( 0:00/00:00:00)
26 7三銀(62) ( 0:00/00:00:00)
27 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00)
28 同 歩(34) ( 0:00/00:00:00)
29 同 角(79) ( 0:00/00:00:00)
30 4三金(52) ( 0:00/00:00:00)
31 3六銀(37) ( 0:00/00:00:00)
32 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00)
33 同 歩(76) ( 0:00/00:00:00)
34 同 角(31) ( 0:00/00:00:00)
35 7九玉(69) ( 0:00/00:00:00)
36 3一玉(41) ( 0:00/00:00:00)
37 8八玉(79) ( 0:00/00:00:00)
38 2二玉(31) ( 0:00/00:00:00)
39 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00)
40 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00)
41 4六角(35) ( 0:00/00:00:00)
42 6四角(75) ( 0:00/00:00:00)
43 3四歩打 ( 0:00/00:00:00)
44 同 銀(33) ( 0:00/00:00:00)
45 3五歩打 ( 0:00/00:00:00)
46 4五銀(34) ( 0:00/00:00:00)
47 同 銀(36) ( 0:00/00:00:00)
48 同 歩(44) ( 0:00/00:00:00)
49 6四角(46) ( 0:00/00:00:00)
50 同 銀(73) ( 0:00/00:00:00)
51 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00)
52 7六歩打 ( 0:00/00:00:00)
53 同 銀(77) ( 0:00/00:00:00)
54 7五歩打 ( 0:00/00:00:00)
55 6五銀(76) ( 0:00/00:00:00)
56 同 銀(64) ( 0:00/00:00:00)
57 同 歩(66) ( 0:00/00:00:00)

あとがき

こちらは鷺宮ローランさんの企画である「第1回 局面に無駄ストーリー込める選手権」に投稿した作品です。
実際に自分が指した棋譜の局面図から、文章を書いて遊ぼうというやつです。
対局相手はくりそらさんで、検討時に出てきて楽しかった局面を題材にしました。

他作品も含めてローランさんが朗読してくださっているので、気になる方はこちらのアーカイブを御覧ください。


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