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PERFECT DAYSとパトリシア・ハイスミスとアラン・ドロン

追悼:アラン・ドロン

下書のまま2ヶ月放置してる間に、世界中の女性を♡瞳にしたアラン・ドロンが旅たってしまった。
「太陽がいっぱい」のトム・リプリーを演じたアラン・ドロンは無敵だった。まさに(完全)犯罪。彼氏に言い寄られてNon! と断れる女性はいないだろう。
個人的には『若者のすべて』の貧乏でやさぐれたボクサー役が好き。しかし、『山猫』のイタリア貴族役も『ボルサリーノ』暗黒悪役も『地下室のメロディ』サスペンスものも、何やってもハマる“絵になる男“ と認めざるを得ない。

R.I.P  安らかな旅立ちをお祈りします


さてここから元の話題へ

残暑が厳しい2024年、年初に観た映画:パーフェクト・デイズの余韻がまだまだ続いている。

というのも、主人公ヒラヤマがあのとき古本屋で買い求めた“パトリシア・ハイスミス”の小説をせっせと読んでいるのだ。
一冊は「太陽がいっぱい」正統派美男子俳優アラン・ドロンの出世作。何度もテレビの水曜(水野さんの解説イメージがないから金曜?)ロードショーで見た映画の原作だ。
二冊目は「アメリカの友人」、こちらはヴィム・ヴェンダース監督自身によって映画化されている。

…以下ネタバレを含みます…


太陽がいっぱい

物語:その日暮らしの詐欺師トム・リプリーは裕福な父親から、イタリアで遊びほうけている息子・ディッキーをアメリカに連れ戻してほしい、と依頼される。トムは、イタリアでディッキーとGFの家に滞在スルマでこぎつけるが、帰国への説得に失敗してしまう。次第にクルーザーを運転し、休日には絵筆を持ち、イタリア語を話し、食うに困らないディッキー自身のその優雅な暮らしに嫉妬がつのり、ついに貸ボート上で彼を衝動的に殺してしまう。
その後、加害者トムは、ディッキーになりすまして小切手を引き出し、イタリア警察の追及をかわすだけでなく、そのGFや父親までも欺いて完全犯罪を目論む。

映画:主人公はアメリカ人ではなくフランス人に置き換えられている

ラストシーン
南欧の陽光まぶしい海岸で、アラン・ドロンは完全犯罪に成功し
「太陽がいっぱい…だ」とまぶしさに目を細め微笑む


そして、はるか後方で「おぉーい、ボートに何かひっかてるぞ。人の死骸みたいだ」 
と漁師からの声が聞こえ、暗幕。ーfinー

哀愁ただようトランペットが奏でるテーマ曲、フランス映画らしい、アンハッピーエンドだった。

アメリカの友人

物語:「太陽がいっぱい」の6年後、トムはフランス郊外の屋敷にフランス人妻と家政婦とともに、優雅な暮らしを満喫している。
トムは初対面時のちょっとした腹立ちから、余命わずかのトレヴァ二―を、殺人者に仕立て上げることを思いつく。
しかも、相手はマフィア、殺しのプロである。誠実で汚れ仕事に無縁の額縁屋トレヴァニーはもしも失敗したら即死、成功したとしても報復の恐れがある闇仕事を余命いくばくもない自らの命を賭け、引き受けてしまう。
そして、愛妻には医療旅行と言い訳するのだが、その怪しい行動に不信感を抱く妻シモーヌ。彼女はとてもタフで”おんなのカン”を働かせ、あの“アメリカの友人”トムと知り合って犯罪に巻き込まれたんじゃない? と、悪事から夫を守ろうとするのだが。はたして?

原作では トムは自ら殺人の罪を背負わせたトレヴァニーに対し、二度目の標的は手強過ぎるためサポートのつもりが不意に自ら実行犯となってしまい、逆にマフィアに狙われる立場になるのだ。
最初は犬猿仲だった二人。一度目の殺人では弱い立場のトレヴァニーだったが、トムに抗いながらも巻き込まれていくうち、二人はチームのように役割分担していく。

『太陽がいっぱい』のトムはハンサムなのはもちろん、賢い×クール×母性本能をくすぐるような拗ねた横顔がアラン・ドロンにピッタリだった。トム・リプリーの完全犯罪はその後シリーズ化されている。その心理描写の妙が素晴らしいため、ぜひ一読をおすすめする。

ちょっとした無邪気な噓から、あるいは心地よい自己欺瞞から、徐々に邪悪な物語が生じてくるのだ。

パトリシア・ハイスミス著:アメリカの友人

実は映画『アメリカの友人』はまだ未見。
パトリシア・ハイスミスに一目おくヴィム・ヴェンダース監督は、トム役にいかにもアメリカ―ンなデニス・ホッパーを配し、大胆な解釈で映画化したという。
つまり、PERFECT DAYS沼から抜け出すためには映画『アメリカの友人』をどこかで観るしかない。

『文学の映画化』などというものは存在しない。あるのは
根本的に異なる二つのもの、つまり書物と映画だ。両者には同一の見方というものはあるかもしれないが、同一の事物は存在しない

映画監督ヴィム・ヴェンダース著:映像の論理

Patricia Highsmith

◾︎The Talented Mr. Ripley, 1955. 
『太陽がいっぱい』佐宗鈴夫訳

◾︎Ripley's Game, 1974. 
『アメリカの友人』、佐宗鈴夫訳

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