男性育休第一号となり、得たものと失ったものまでの一部始終
初めての子どもが9月末に産まれ、10月初旬から6週間もの育児休業を取り終えました。
育休を実際にとった男性視点で感想を書いていきますので、
これからパパになる夫
ママになっていく妻
若い部下を持つ上司
育休に関わる方に読んでいただければと思います。
育休を取ると決めるまで
2021年2月に妊娠が発覚しました。
「え?そこから?」と思われた方、読み飛ばして頂いても構いません。
目の前の事実に理解が追い付かず、「おめでたいね」と他人事のようなコメントをしてしまいました。
(うれしい気持ちと不安な気持ちと混乱しているのと混ざってました)
その1週間後にはつわりが始まり、重かったため安定期に入る4月まで3回もつわりで入院してしまいました。
お互い変化についていけず、この時期が一番大変でした。
病気じゃないから対処のしようがない・・というのが特に。
病院に行くのも、つわりで水を飲んでも吐いてしまう状態だったので点滴を打ってもらうためでした。
そんな山場を乗り越え、4月中旬には安定期に入りました。
4月に異動で引っ越すはずが、6月に延期になったのは運がよかったです。
妊娠中の引っ越しとなったので、あまり重いものを持たせぬよう引っ越しは基本的に1人でやりました。
どこで産もうか?という話題が出るまで引っ越ししてから時間はかかりませんでした。
選択肢は2つ
・妻の実家(都会)近くの病院で出産(いわゆる里帰り)
・引っ越し先(田舎)の近くで出産
後者を選んだ理由は、いくつかあります。
・コロナ禍のため、県をまたぐ移動は避けた方がいい
・喜び・辛さを含んだ育児の共有を最初からしたい
・2人の時間を最後まで楽しみたい
妊娠9ヵ月に入る頃には里帰りしなければならず、出産2ヵ月前から離れてしまいます。
婚姻届を出してから半年しないうちに妊娠が発覚したので、2人で過ごす時間をちょっとでも長くしたかった、という背景があります。
2人で話し合い、地元で出産する方針に決めたのですが、クリアしなければならない条件が1つありました。
産後から動けるようになるまでの間、育児休業を取得する、です。
出産に向けて女性の骨盤は緩くなっていくため、産後最低1か月は安静にするようです。
いつから、どれくらい取得するかをも決めなければなりません。
予定日通り産まれるとして、余裕をみてその10日後から
安静にする1か月から余裕をみて1.5ヵ月休むこととしました。
育児休業を取得すると決めてから産まれるまであと3ヵ月
職場を説得する働きかけをしていくことになります。
育休取得に向けた職場への働きかけ
育児休業を取得するためには、上司と職場に納得してもらうのが一番です。
※令和3年6月に育児・介護休業法が改正されましたので、こんな苦労もなくなるかもしれませんが・・。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要(令和3年法律第58号、令和3年6月9日公布)
ちょっと脱線します。
厚生労働省のHPをご覧いただければわかりますが、
妊娠・出産を伝えた場合、会社として育休を取得するかどうか意向を確認しなければならないからです。
従来は、顔色を伺いながら「育休取ってもいいっすか・・?」
って言っていたのが、2022年4月1日の改正をもって会社側から、
「育休取りますか?」と、確認してくれるわけですからね。
社員・職場の理解も深まるかもしれません。
さて、話を戻します。
まずは、7月初旬に上司へ育児休業を取得したい旨を伝えました。
上司に驚かれ、困惑してました。
「取得してほしいが、その期間のお前の業務は誰がするのか?」という顔です。
「それを何とかするのが上司だろう」という意見もありますが、
そうも言いづらい私の職場事情がありました。
6月に新設された部署であり、業務を本社から移管するために転勤されました。
移管から1ヵ月しか経ってなかったため、上司は私たちの業務をあまり把握しておらず、自分が代わりにすることも、どのような業務を誰に任したらいいのかも分からない状況だったと思います。
理想は、取得期間中誰かに業務を回してもらうことですが、それはできそうにありません。
そこで、リモートで業務を行う代わりに取得を認めてほしいと悪魔の取引をしました。
期間についても、当初3ヵ月と伝えましたが、1.5ヵ月へ短縮しました。
(この辺は交渉の常套手段です)
これで上司も安心したのか承諾しました。
加えて、2週間に1回同僚の不安を取り除く会を3度開きました。
具体的には、書類業務の引継ぎやどのような業務を電子化するかなど、業務の整理です。
このような経緯を経て、職場の理解を得たのでした。
そして、9月末に産まれ、その1週間後から育児休業へ入りました。
またしても脱線します。
私は運よく出産に立ち会えました。
コロナ禍でどこの産婦人科も立ち合いを認めていませんでしたが、
お世話になっていた産婦人科では、その出産日から立ち合いを認めることになったのです。
「おぎゃー、おぎゃー」
約10時間の陣痛を傍で見守り、ようやく生まれ産声を聞けた時は2人で何とも言えない喜びに包まれました。
立ち会えたからこそ、こんなに大変な思いをして人が生まれるんだなと噛み締めながら、これから子育てできるんだとより強く思いました。
生まれたての赤ちゃんってこんなに可愛かったっけ?
と、思ってしまう自分に驚くこともあり、
リモート立ち合いでは得られにくい経験をしたかなと思ってます。
(薄情なことに、リモート立ち合いしながら仕事のWEB打ち合わせに参加しようなんてしてましたから・・)
育休中に経験したこと
無事に生まれ、両家の両親へおじいちゃん、おばあちゃんだね、なんて言いながら連絡をしました。
出産後1週間は入院しており、テレビ電話や送られてくる写真・動画を見てはニヤニヤしてました。
妻は退院しましたが、寝返りはおろか、立ち上がったり座ったりできない状態だったため、率先して育児と家事に取り組む必要性がありました。
そんなことを知っていたのか、妻側のお母さんが退院翌日から10日ほどこちらへ滞在することになっていたようです。
慣れない子育てに、家事全般を義母と協力して行うことになるわけです。
顔合わせ等含め数回しか顔を合わせたことのない義母と共に暮らして協力し合うのですから、心の距離はかなり縮まったと思います。
買い出しも2人で行きましたからね。
これは今後にも響きそうです。
そんな数日を過ごし、育児は最初からできなくても開き直ってやることができました。
妻も私も子育ては初めてで正解を知らない上、義母は温かく見守ってくれたからです。
オムツを変えたり、身体をきれいにする沐浴だったり。
赤ちゃんが泣いたときは2人で原因を特定するようになりました。
おむつなのか
眠いのか
お腹が減ったのか
など
初めから親である親はおらず、子どもと一緒に成長する
と聞いたことがありますが、まさにその通りです。
子育てに正解はなく、みんな手探りなんだろうなと思います。
育休残り3週間というところで、妻が体を動かせるよう接骨院に通い始め、食材の買い出しも一緒に行くようにしました。
育休が終われば、日中はサポートしてあげられません。
妻の不安を取り除くのも育休中のミッションと言えます。
最終的に、完全に戻らなくとも多少歩けるようにはなり、無理しない程度には家事もできるようになりました。
(本当によかったです)
育休を通して得たものと失ったもの
ここまで書いたことを要約しつつ、まとめます。
まずは得たものから。
育休を取ったことでよりよい夫婦関係を築くことができたと感じてます。
妻が子育てを主導して進めるのではなく、2人が当事者として最初から子育てに関われたというのは、これから子育てをするスタンス(姿勢)の形成・すり合わせに貢献し、今後にも影響を及ぼします。
所属している会社よりもパートナーと過ごす時間の方が長いです。
大切にすべき方を大切にする、シンプルでいいと思います。
2つ目は、子育ての苦労と喜びを最初から共有できた点です。
調べたら出てくるであろう”新生児あるある”は身に染みて理解できました。
「こんなにオムツ変えるもんなの?」
「全然泣き止まない」
「げぼったり、うんこ漏れたり汚れ物の洗濯大変」
などなど。
大変だけども、「かわいいなぁ」とか言ったりして、2人で楽しみながらできた時間は貴重でした。
これからこんな時間は取れないかもしれない。
それでもこんな時間をとれるようにしたいなと、お互いに考えるきっかけにもなりました。
3つ目に得たものはお互いの家族間交流が増えたことです。
育休と関係ないようにも見えますが、休んでいたからこそお互いの家族と長く接する機会を作れたと思います。
里帰りだと、こうはならなかったかなと、振り返って思いました。
さて、失ったもの1つ目は、業務上の信頼です。
と言っても、リモートで仕事をするという悪魔の取引をした私が悪いのですが、思ったように仕事できなかったことが敗因です。
ミルクの感覚は3時間おきだからその間は仕事できると思ったら大間違いでした。
育児休業を取るならば、業務は持ち帰らないことを強くお勧めします。
これは、本人だけでなく、上司や同僚の協力も必要です。
組織マネジメントする上での今後の課題となるでしょう。
2つ目は、収入の減少です。
補償で月収の2/3は補填されますが、それでも減ることには変わりありません。
一応、知っておいた方がいいと思います。
私は、取得してから知りましたから・・。
振り返ると、失ったものは些細なことです。
キャリア形成の弊害になる?なんて思うかもしれませんが、
たかだかこれくらいで失われるような働きをしなければいいんだと思います。
(そう簡単な話でもないですが)
番外ですが、当社では初の男性育休者となり、人事・総務は社内外へアピールしようとしているようで、業務上関わりがない部署をはじめ、公式には取得を喜んでいるようでした。
最後に
全員に育休を取ってほしいとは言いません。
ただ、”男性が育児のために休むというのは特別だという認識”は変わるべきだと考えてます。
自分の子どもなのに、まるで他人事
育児という現実から目をそらしているのではないか、と思えてなりません。
「育児よりももっと高級な仕事がある」
「育児なんか誰がやっても同じだから俺がわざわざやる必要ない」
という価値観を否定はしません。
しかし、「育児には責任を持つべきだ」という考えならば、
自分から携わる機会を作る1歩を踏み出してもいいのではないかと思います。