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無印のソファに沈む
毎日毎日、寝落ちしている。
夫に「なんでこんなに眠くなってしまうんだろう」と話すと「それは今にはじまったことではない」と返される。
noteも読みたい書きたいがあるのに、ままならない。
読みたい本だってたくさんあるのに読めない。
創作大賞だって、まだ読めていない作品があって、気になっている。
微熱さんのブックカフェのレポを書きたいのに書けないもどかしさ。
くまは冬眠する生き物だ。
しかし今は真夏だ。
真夏のくまはどうしているのだろう。
あんな毛皮を着て暑くないのか。
たまには毛皮を脱ぎたいなと思ったりするのか。
裸でタオルケットにくるまるのは、なぜ小さい頃からあんなに気持ちいいものなのか(急なカミングアウト)
心地よい刺激がある。
仕事中の煮え切った暑い車中でカチ割り氷系のアイスを食べる爽快感。
ゆで卵の殻が思った以上につるりとむけた時の満足感。
子どもたちがふとした瞬間にもたれてくる時のぬくもりが伝わってくる安心感。
伝わらない伝わらないと思っていた話がお姑さんに意外と伝わっていた、私だけに訪れる大きな感動。
思い出すと思わずにやけてしまう好きな人の笑顔の圧倒的な破壊力。
noteで熱のこもったことばを頂けた時の、孤独が薄らいでいくあのざらざらとした気持ちの揺らぎ。
サムネイルは私の娘が最近着ている「パルプフィクション」のTシャツだ。
創作を書かせてもらえる機会を頂き、そこでも話題に出てくるTシャツの柄のモチーフとなっている「パルプフィクション」という映画。
サミュエル・L・ジャクソンがハンバーガーを食べてスプライトで胃に流し込んでいくシーンがある。
彼はただ食べて何かを話しているだけだが、殺意や粛清といった大きなうねりが、見えないところで風船のようにどんどん膨らんでいく。
咀嚼することを考える。
取り込んでいくこと。
取り込まなくていいこと。
取り込まれてしまったこと。
取りこぼされてしまった食べ物。
同化して混ざって、自分と相手の境目がなくなってしまう連鎖。
あるサービスの利用者さんが、安楽死を考えているという話を耳にして、その当人に久しぶりにお会いした。
彼は食べないことを選んだ。
正確には口からの経口摂取はできないので、胃から栄養を摂ることを拒否した。
「この国では死なせてくれないじゃないですか」
「だったらこの方法しかないですよね」
この、彼がとった......唯一とれる世界に対する最大の抵抗は、今はストップしてしまっている。
「とにかく話が聞きたかった」
「会いに来たかったんです」
私の発することばなんて、儚い泡のように消えていってしまうと思ってはいるが、別れ際に彼がじっと私を見ていてくれたことは、私も忘れたくないなと思いつつ。
世の中にはどうにもならないことがたくさんあって、みんなそんなことをお互いに知ることもなく、ぎしぎしと狭い世の中でひしめきあって生きていることに、あらためて少し戸惑いながら
私は今日も無印良品のソファに沈んでいく。
けしからんのはこのソファの寝心地の良さなのだ。
うとうとと、意識を曖昧にしながら、私はまた宇宙の向こう側へと足を踏み入れていく。
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