エンジニアに必要な課題解決力の本質を知る(中級編)
エンジニアとして経験を積むと、課題解決に対する視野が少しずつ広がってきます。初級の頃は自分の担当範囲で課題を解決することが求められてきましたが、中級に差しかかると、プロジェクト全体の進行や価値を意識し、さらにクライアントやその先のユーザーといった幅広いステークホルダーにとっても価値を生む解決策が必要になってきます。
ここでは、チーム全体の生産性やプロジェクトの目的に沿いながら、広い視点での「課題解決力」を意識するためのポイントをお伝えします。
中級エンジニアとして意識する3つの課題解決の視点
1. チーム全体が抱える根本的な課題を見つけて解決する
中級エンジニアにとって求められるのは、自分の作業範囲にとどまらず、チームやプロジェクト全体が抱える「根本的な課題」にも目を向けられる力です。たとえば、プロジェクトがスムーズに進まないとき、その原因が「仕様変更への対応が遅れている」「チーム内の情報が適切に共有されていない」といった構造的な課題にあるかもしれません。
こうした状況では、ただ自分のタスクを進めるだけでは本当の意味での解決にはなりません。課題解決力とは、現場で直面している問題の背景を見つめ、「どうすればチーム全体が効率よく進めるか?」と考える視点を持つことです。情報共有の仕組みを見直したり、業務フローを改善する提案をすることで、チーム全体の進行がスムーズになる場合もあります。自分が課題の本質に向き合い、プロジェクト全体が前に進めるように支援することが、中級エンジニアに求められる大切な役割です。
2. ステークホルダーにとって本質的な価値を生む解決策を意識する
チームだけでなく、クライアントやその先のユーザーにとって「本質的に価値を生む解決策」を考えることも重要です。クライアントやユーザーは、エンジニアの手がける製品やシステムの「価値を感じる」最終的な受け手です。ここで、自分の解決策が彼らにどのような利益をもたらすか、また長期的にどのように役立つかを意識してみましょう。
具体的には、機能を追加するときに「この機能がユーザーにとってどれだけ使いやすいか」「クライアントのビジネス目標にどれだけ貢献するか」といった視点で見つめることが大切です。中級エンジニアは、「クライアントやユーザーにとって何が価値なのか」を意識しながら、課題の本質を突き、価値を感じてもらえる解決策を選ぶ力が求められます。
3. 持続可能で長期的な視点を取り入れた解決を目指す
中級レベルになると、短期的な対応に追われがちなエンジニアリングにおいても、「持続可能で長期的な視点」を持った課題解決が重要になります。例えば、一時的な修正で解決するのではなく、今後のメンテナンス性やチーム全体の生産性にどのような影響を与えるかを考え、再利用可能でシンプルな構造にすることも一つのアプローチです。
こうした持続可能な解決策は、チームやプロジェクトの安定性を保つことにもつながり、クライアントやユーザーにも安定した価値を届けられるようになります。長期的な視点で「どうすればより良い価値を生み続けられるか」を見据えた解決策を提案できる力が、中級エンジニアとしての成長につながります。
僕の経験談:チームとステークホルダーのために選んだ解決策
僕もキャリアの中で、チームやクライアント、さらにその先のユーザーにどう価値を提供するかを考えるようになり、課題解決に対する考え方が変わりました。
あるプロジェクトで、ユーザーからの要望に応える機会がありましたが、そのときにまず重視したのは、**「要望の本質を掴む」**ことでした。単に表面的な改善に留まらず、「その要望の意図はどこにあるのか」「どういった課題を解決したいのか」「困っているのは誰か」といった部分を丁寧に掘り下げていくことがポイントだと感じています。ただ、なぜなぜと問うばかりでは関係がぎこちなくなるので、聞き方やタイミングには配慮が必要です。
また、その際に意識したのは、こちらの理解を相手に伝え、答え合わせをしながら進めることでした。口頭だけでなく、時には図や文章にして見える形にすることで、相手が求めている本質的な課題や解決の糸口が明確になっていきます。実際、このプロジェクトでもクライアントの要望に対し、「A→B→C」という入力順序だったフローを「A→C→B」に変えるという再設計を提案し、操作がよりスムーズになり、ユーザー体験が大きく向上しました。
このように、いただいた情報を鵜呑みにせず、本質的な理解をもとに解決策を提案できたことで、クライアントからの信頼を得ることができたのも非常に大きな成果でした。この経験を通じて、ただ要望に応えるだけでなく、本質を掴み、さらに良い提案をすることで信頼が生まれ、より大きな価値を提供できると実感しました。
こうしたプロセスの積み重ねによって、自分の課題解決力が磨かれ、自分の価値を高めることにもつながっていくのだと感じています。
まとめ
中級エンジニアに求められる課題解決力は、チームやクライアント、さらにはユーザーといったステークホルダー全体に対して価値を意識し、提供する力です。課題を単に解決するだけでなく、「その解決がどんな価値を生み出すか」を考え抜くことで、エンジニアとしての成長と、プロジェクト全体の成功に結びつけることができます。
日々の取り組みで、こうした「チーム全体」「クライアントやユーザー」「長期的な視点」を持つことで、エンジニアリングの幅が広がり、本質的な価値を提供できるエンジニアへと成長していきましょう。