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京都みなみ会館

私が初めて行ったミニシアター。
知ったのは旧館が閉館する際に京都新聞に掲載されていた記事をお母さんが読み、私に教えてくれたからである。「さよならみなみ会館爆音上映」でベイビー・ドライバーを鑑賞した。旧京都みなみ会館でみた最初で最後の映画であった。

さよなら爆音上映

それまではミニシアターというシネコンとはまた別の世界があると言うことを知らなかった。旧みなみ会館はここが映画館なのか…?という怪しい雰囲気が漂っており、本当に入って大丈夫なのか?と思いながら階段を登ったのを覚えている。整理番号順に劇場外に並んでいる間も、自分がみる前の回でかかっている映画の音が聞こえた。赤い扉にはたくさんのサインがあり、歴史のある映画館なんだなぁと実感した。

旧みなみ会館
サインがいっぱい

いよいよベイビー・ドライバーの入場がはじまると、みな思い思いの席に向かった。私は通路を挟んで左の前から五列目くらいを選んで座った。この赤い椅子がフカフカで感動した。年季が入っているけどこの上なくフカフカで心地よかった。みあげると幕には「みなみ会館」の文字、上映前のブザーとともに映画が始まった。

赤いフカフカな椅子

この旧館での映画体験が最初で最後になると思うと、なぜもっとはやくに知ることができなかったのだ…とかなり後悔の念が押し寄せた。ミニシアターという世界をはじめて知り、すっかり京都みなみ会館のフアンになっていた。だからその分、新しくなって復活するというニュースを聞いたときはそれはもうすごく嬉しかった。オープンの日を楽しみに待った。

シン・京都みなみ会館ができてから初めてみたのはTommyだった。どこのお店だったか忘れたがフライヤーが置いてあったから、手に取ってみた。なんか怪しそうな映画だ…ロックオペラってなんだ?とフライヤーをみて思った。新しく生まれ変わったみなみ会館はどんなだろうかと期待に胸躍らせながら向かった。旧みなみ会館に行ったときはその怪しさから、「ここほんまに映画館か?」と疑ったが、シン・みなみ会館は綺麗な建物すぎて、どこが映画館かわからないほどみちがえっていた。劇場の準備ができましたとスタッフのアナウンスがあり、階段を登ってスクリーン1に入った。入口には旧みなみ会館の赤い扉が、入ると視界に広がる赤いフカフカな椅子、みあげると「京都みなみ会館」の文字…。新しくなったけど、旧みなみ会館のときに感じた良さが全て受け継がれていて感動した。

初めてみたのはTommy

そこでみた初めての映画Tommyはなんとも不思議な映画だった。The Whoのある一曲が映画になったというのが正しいのだろうか。全編にわたってずっとロックミュージックが鳴っている。とにかく音の迫力がすごく圧倒されてしまった。そのうえ画も強くて、なんじゃこりゃ?!という気分でエンドロールを眺めた。みたあとしばらく呆然としながら映画館をあとにしたのをよく覚えている。市バスに揺られながら、また絶対映画をみに来ようと思った。

それからいろんな映画をみにいった。研究室のコアタイムより早く切り上げて背徳感とともにみる夜の映画、何もない休日にふらっと1人で寄ったこともあったし、彼氏とも妹ともみなみ会館へ足を運んだ。一つものすごく後悔しているのは、コロナが流行り出す前にやっていた「轟オールナイト」に行かなかったことである。ちょうどホテルの音響バイトが夜遅くまであったため、行くのを諦めたのだ。また次の機会があるだろう、とそのときは妥協したのだが、その後コロナが流行してオールナイト上映、ましてや映画館へ行くことすら困難になった。バイトなんてサボって行けばよかった…と今でも悔やんでいる。ベイビー・ドライバー、マッドマックス、デスプルーフの3本立てなんてそうそうないし、みに行けるときにみるべきだと痛感した。

大学院を卒業して、そのまま京都に就職が決まったから、週末はほぼ映画館で映画をみている。シネコンでみる公開を待ちに待った作品ももちろん良いのだけれども、みなみ会館の良さは新作だけでなく、リバイバル上映としてユニークなラインナップの旧作がみれることである。配信で簡単に映画がみることができるようになったけど、映画館でみる体験に及ぶものはないと思っている。映画が始まるまでに映画館の周辺で暇を潰す時間が何よりも贅沢だよなぁといつも思う。私がみなみ会館で映画をみるときは、イオンモール京都でぷらぷらして、コメダ珈琲やマクドで腹を満たし、ふらっと歩いて東寺方面へ向かう。みなみ会館の近くにあるブックオフでお目当てのDVDがないか物色した後、みなみ会館に入りフライヤーをみながら近日公開でみたいものがないかどうか探す、というのがルーティンである。

確かに配信だと映画館に足を運ぶ必要もなく、同じ時間で2、3本はみれるかもしれないが、わざわざ足を運ぶことに意義があるよなぁと私は思う。昨今レコードが見直されているのと同じようになるんじゃないかと私は思った。レコードショップに行かずとも配信サービスでたくさんの曲が手に入る。でもそれでは味気ないと思い始めた人たちは、わざわざレコード盤をレコードプレイヤーにセットして、針を落として音を鳴らすという行為が新鮮で良いということから、レコードが見直されている。それと同じで映画館に行く人が少なくなり劇場の数はこれから減ってしまうかもしれないけど、わざわざ映画館に足を運んで映画を体験することが見直されて、突然再燃するみたいなことになるんじゃないかとふと思ってしまった。

私にとっては映画館は無くてはならない場所だけれども、世間一般ではそうでもないのかと思うと少し残念である。年々劇場に足を運ぶ人も減っているらしい。最近は映画料金をどこも値上げしているし、正直チキショーと思ったりもするけど、映画館が淘汰され無くなるくらいなら、値上げしてもいいから劇場をなくさないでくれと思うようになった。

閉館のニュースは家族LINEで知った。会社の昼休憩に携帯をみると、京都みなみ会館閉館の文字。思わず二度見した。このニュースは私にかなりのダメージを与えており、今もショックを受けている。そのニュースをみた昼休み以降はずっとなんで閉まるの?しか考えられず、今までみなみ会館でみていた素晴らしい映画たちは今後どこでみればいいのなどとも思ったりもした。Twitterにはたくさんの閉館を惜しむ声や、みなみ会館でみた映画の思い出がつぶやかれていて、「そやんな〜…(共感)」となった。最近では会社でツラいことがあり仕事をしたく無くなって定時より1時間はやく帰ってグッドフェローズをみるなどもした。要するにみなみ会館は私の心のオアシスで、いい映画をみて気分を切り替え、その次の日の仕事はよく捗った。そんな心のオアシスがなくなると聞いて、空洞になった。みなみ会館で映画をみるという素晴らしい体験をもうすることができなくなるのかと思うと、すごく寂しくなった。閉館まで2ヶ月半、私は大金持ちではないから映画館を買うなんてことはできない。だから足繁く行ける作品はみにいこうと思っている。

一年くらい前(やったかな?笑)に自分の家の郵便受けに、近所の家の郵便物が間違えて入ってたことがあった。封筒をみるとみたことのあるロゴマークが印刷されており、みなみ会館の会員に送られる書類であることがわかった。「あ、あの奥の家の人もみなみ会館が好きなんや」と嬉しい気持ちになりながら、間違えて自分の家のポストに入ってた郵便物を正しに行った。その人も今回の閉館のニュースにショックを受けているだろうな…なんて思いつつ、今日もみなみ会館で出会った作品たちに思いを馳せる。

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個人的にどんな作品をどういう状況でみたかの話を聞くのが好きなので、私がみなみ会館でみた印象に残っている映画体験について簡単に記す。(みんな好きじゃなかったらごみん笑)

・ジャンゴ 繋がれざる者
研究室のコアタイムの少し前に抜けて、大学からの交通費をケチるために、持っていたバス乗り放題定期券を駆使してみなみ会館へ行った。シアターでは自分より前に座っている人がおらず、視界がとてもクリアだった。ジャンゴの反撃シーンをみて、ああなんて面白いんだと思った。タランティーノ映画はなぜあの暴力的なシーンが繰り広げられるのかの理由づけがきちんとあるから好きである。爽快感とともに映画館を去り、寒空の下バスを待った。

・悪魔のいけにえ
boid サウンド上映でみるホラー映画ということで、ずっと気になっていた悪魔のいけにえをみにいくことにした。始終漂う不穏な雰囲気、レザーフェイスが振り回すチェーンソー。女の人の目がアップになり始めたところで突如音響トラブル。ノイズがガァァァアと鳴り響き、一瞬演出?と思ったけど、トラブルだった。ホラー映画がさらにそのトラブルのこともありさらにホラー感が増した、印象深い鑑賞となった。

・グラインドハウス国内最終上映
私が愛するデスプルーフの国内上映権が切れるという残念なニュースを目にした。あー、どこかで最後上映してくれないかな…と探しても東京の映画館ばかり。そんな中グラインドハウスとして上映するというみなみ会館のツイートをみたときは歓喜のあまり声が出てしまった。横で見ていた妹には尋常じゃない喜び方でキモいと言われてしまったが。。妹もみたいというので、一緒にみにいった。
ミニシアターでは周りの人たちの笑い声がよく聞こえる。私が好きなシーンでみんなもウケていて、そういった場の雰囲気のおかげで面白さが倍増した。

グラインドハウス フェイク予告も楽しい

・ポールトーマスアンダーソン特集
その週は珍しく土日ともなにも予定のない休日だった。家で寒さに耐えるのだけでは面白くねぇなと思ったので、上映中の映画を映画館のホームページで確認した。そこで目に留まったのが「ポールトーマスアンダーソンにゾッコン、ムチュウ」とタイトルがついた特集だった。「あー、リコリスピザの監督か」とくらいにしか思わなかったのだけれど、ハードエイトという映画をみにいってみた。するとこれが予想以上に面白くて、次の日のブギーナイツもみてみようという気になった。オープニングのBest of my Loveのイントロを聞いたときに、うほっ!これは!好きなやつだ!と直感的に察し、私のオールタイムベスト作品となった。登場人物全てが個性的で不器用だけど憎めない。無修正版だったのでラストシーンは思わず、うおって声が出てしまった笑

・テリーツワイゴフ二本立て
カルト的人気のあるゴーストワールド。別冊映画秘宝の紹介文を読んでからずっとみたいと思っていた。しかしレンタルも、DVD販売も全然見当たらず、ブックオフで中古はみつけたのだが7700円もする高級品だったので、クラムとゴーストワールドの二本立てを上映しますというツイートをみたときは歓喜した。ゴーストワールドのイニードの生き方は尊敬できるなとも、子供っぽいなとも思った。ブシェミが今回も変なおじさんの役で笑った。繰り返しみたいと思うような作品で、クラムと二本立てでみることの意味が理解できた素敵な企画だった。
この上映をみに行く前に親戚のおばちゃんと会う用事があり、おばちゃんに京都駅まで車で送ってもらった。なんとそのおばちゃんも若い頃、旧みなみ会館によく行ったという話で盛り上がった。

・グッドフェローズ
仕事がしんどくて、モチベーションが下がっていた。ああ、さぼりてぇ…と思いながらパソコンと向き合っていた。そんなときにTwitterで目にしたグッドフェローズの文字。スコセッシ作品の中で一番好きな映画だから、これは!!と思った。会社を定時の1時間前に出れば、みに行ける時間だったから、早退してみなみ会館に直行した。劇場には私を含めて2人。嬉しいような寂しいような気持ちになったが、仕事をサボってみているという幸福感があった。エンドロールは最後までみる派だからもう1人が途中で退場したあとも1人画面を眺めていた。エリッククラプトンの泣きのギターを聞きながら、ああみてよかったなと思い、その次の日は仕事がよく捗った。

7/16 AKIRA公開35周年の日にみた

みなみ会館は私にとってなくてはならない場所だ。復活はいつまでも待っているよ…。

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