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我に返る(140字小説)

秋の夜長は、虫たちの音色を聞くためにある。

まるで交響曲のような、厳かな合奏。

時折挟むインターバルの後の、一気の大合奏。

これは、やがて訪れる静かな冬に向けての、

壮大なクライマックスである。

小さな虫たちの渾身の音楽。

中でも‥‥

妻の声。

「何でもいいから早くご飯食べて。片付かないでしょ」


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