USCPAを受験してた話③ FAR編

受験の順序

USCPAは4科目の合格が必要な試験となります。
4科目とはすなわち、
FAR(Financial Accounting and Reporting)
AUD(Auditing and Attestation)
REG(Taxtation and Regulation)と
BEC(Business Environment and Concepts)です。

JCPAは短答式が財務会計論、管理会計論、監査論、 企業法
論文式ではこれらにプラスして租税法と経営学、経済学、民法、統計学から選択らしいので、難易度は別として
FAR=財務会計論
AUD=監査論
REG=企業法、租税法、民法
BEC=管理会計論、経営学、経済学
で統計学はない代わりにBECでIT分野も出題される感じかと思います。

最後のBECは会計士としての能力よりも基本的なビジネスの知識を問う科目であり、2024年の試験制度変更に伴い、ITを絡めた監査手続きや税務、ビジネスにそれぞれ特化した選択科目の中から一つ合格すれば良い形になりました。

また、USCPAはほぼ年中いつでも受験出来ますが、4科目合格するまでは合格実績に対して有効期限が設けられます。当初は18ヶ月間、後に試験制度の変更に伴い30ヶ月まで延長され、受験期間が間延びする一因ともなりました。(メリットを十分享受したので文句は言いません)

受験してから合格発表まで少し間が空くので、パスしたか不安な状態で次の科目の勉強を始め、落ちていたら並行して復習、再受験が必要という大変さがあり、難度上昇に一役買っていたと思います。

では、どのような順序で受験すれば良いのかというと、おおよそ以下が日本語圏では王道として推奨されています。
まず他の科目の基礎となり、単純に範囲が広く、量も多いFAR。
次にFARの裏側とも言える監査論のAUD、もしくは金利計算などでFARと重複する内容が含まれるBEC。
最後はラストスパートに暗記問題が多く含まれるREG。

一方、英語圏の掲示板を覗いてみると独立性が高いBECは最初か最後で良いという意見もあり、実際、BECは言われるほどFARとの関連性は無いと感じたので、FARが終わってからAUD、REGをやるのが良い程度かなと思います。
予備校のテキストも参照するセクションが書いてあったり、説明しなおしてくれるので順序が変わったところで支障はありません。
尤も私が受験を始めた頃は、出題傾向が変わる前にBECを取りきったほうがいいという話もあったので、FAR⇒BEC⇒AUD⇒REGの順に受けることにしました。

現在はBECに代わる選択科目をどれにするか(どれが一番受かりやすいか?)という観点も加わったのでゲーム性が向上したと思いますが、もし今から着手するとなれば、事業会社全般で役に立ちそうなBARを選ぶと思います。

いずれにせよ、入塾すると段ボール一箱分の全教材をまとめて送ってくるので、視覚的にも結構げんなりします。そのうち2/3は問題集とその解説&日本語訳なので、PCでしか問題演習をやらなかった都合、ビニルすら破かないまま終わりましたが。(今は問題集は発送してないみたいです)

FARの出題範囲、特徴

FARは予備校のカリキュラム上は1~5の5分野、テキストは計4冊(今は3冊らしい)に分かれていましたが、提携大学との単位認定の都合による便宜的なな分類であって、印象としては基本的に財務会計を問われ、時々、公会計からも出題される科目でした。

特に公会計(FAR 5)は、1~4までと全く考え方が異なり、実務でも触る機会がないため、苦戦したというか最後まで覚えないまま試験に突入しました。
Blueprint見ても出題比率は低い(5~15%)し、そもそもFAR全体の分量が多すぎて出題されない可能性も高いだろうとナメていたのもありますが。
ちなみに新制度ではこの分野の大半はBARに移行したらしいですが、もしかすると当時から徐々に出題を減らしていたのかもしれません。

FARの1~4ではUS-GAAPにおける一般的、つまり、民間企業の財務諸表の作成方法を学びます。ファクタリング時の処理や差金認識、リースの分類、年金、ヘッジ会計やら在外子会社の換算調整など、面倒かつ細々したルールも多く、テキストを見返したら大体は既に忘れていました。試験でも半分くらいは出題されなかったので肩透かしを食らった覚えがあります。

試験へのアプローチ

どの科目にも共通する試験の特徴として、与えられた4時間の試験時間を使って、5つのセクション(テストレット)に分けられた問題を解いていくことになります。
第1、2テストレットはMC問題(Multiple Choice Questions)と呼ばれる4択からの択一式、第3~5テストレットはTBS問題(Task Based Simulation)と呼ばれる記述式に近い演習問題となっています。
また、各テストレットが終わると休憩を取ることが出来ますが、第3テストレットの直後のみ15分の休憩時間が与えられ、それ以外は持ち時間を消費する形式となっています。

MC問題は単純に用語を知っているか問うものから、ちょっと面倒な計算が必要な問題まで試験範囲全般から幅広く出題されます。論点を忘れていたらいくら悩んでも答えられないのですが、全てのテストレットに均等に時間を割いた場合、48分間でFARは25問、つまり1問あたり60~90秒程度で次々答えていかないと間に合わないため、瞬発力と同時に何十問も回答する持久力が求められるシャトルラン的な試験となっています。

一方、TBS問題は、与えられたリード文と場合によっては資料(クライアントとの交信メールや試算表など)を読み、指示に沿って作業を行う必要があり、計算ミスをして以降の回答が全滅する悲劇もあり得る内容となっています。

僕の場合、どの科目もMC問題だけ演習し、TBS問題は一切やらないまま受験しました。
実際のところ、TBS問題は難しいことが聞かれることはなく、MC問題さえ自信を持って回答できれば十分と判断したためですが、あとは本番の集中力が続けばいいなという感じでした。

あと旧制度では、問題文に記載された取引が準拠すべき会計基準を探し、条文番号で答えるという、ググり力を試す問題も出ていました。
きちんと都度基準に当たることが出来るか試す意図があったと思われますが、キーワードを検索欄に入れればそれっぽいのがすぐヒットするため、差がつかなかったんでしょうね。

受験期

前回書いた通り、アラスカ州の受験に必要な会計の単位を持っていなかったため、FARの学習を進めながら単位を認定して貰う必要があります。
大学の単位なので、学期が一つの区切りとなりますが、トリメスター制のため、4月、7月、11月末を跨ぐと次の学期末まで待つ必要があり、最悪の場合、12月に取った単位は5月以降にならないと出願資格にカウントできないことになります。

学習開始から半年後の10月に受験することを考えていたので、7月末までに単位を揃える必要があり、エアメールに振り回されながらも必死に講義を消化し、毎週末試験を受けることになりました。学生時代よりも試験勉強した気がします。

理解を置き去りにして単位をかき集めた感はあったのですが、秋になる頃にはアラスカ州への出願も無事に完了し、次のステップでは試験会場の予約となります。

試験会場はPrometricの東京、大阪2会場ありますが、当時はかなり予約が取りづらい状況であり、2, 3ヶ月先まで埋まっていました。また、たんだん円安が進み始めた時期であり、1回あたり700ドルかかる受験料は10万円コースと出費が増えることになりますが、仕方ないので申し込むだけ申し込み、試験対策に突入します。
ちなみにこの年のボーナスは全額米ドルに変えたので、キャッシュフロー的には支出が増えたものの、円評価では資産が増えていったのでリスクヘッジの有難みを実感しました。

テキスト1周しただけでは何も覚えていないので、MC問題をやる⇒理解していないところはもう一度読むという流れで取り組む訳ですが、全部で900問近くあるわけで、1問1分で解いたとしても15時間かかり、並行してBECの講義も受けているため、2週間かけても1周出来るかな?という分量です。
まだまだコロナ禍もあり、大規模な飲み会は自粛ムードだったので勉強時間を捻出できていたものの、当時、流行の最先端を征くオミクロン株に罹り、1ヶ月弱はベッドの上で過ごすことになります。


そんなこんなであっという間に試験1ヶ月前になるわけですが、予備校は1.5~1か月前に模擬試験を受けることを推奨しており、初回合格を諦めつつも受けてみることにしました。

模擬試験は敢えて難しく作られているのですが、合格者平均をはるかに下回る結果で、特にMC問題の正答率が壊滅的であることに絶望します。
ただ、よくよく見返してみるとnotやleastといった否定表現の見落としによるケアレスミスが多く、丁寧に読んだうえで、苦手分野の復習をすればいけるかも?ともなりました。
また、このとき初めてTBS問題を解いたのですが、ちゃんと指示に沿って手を動かせばいいだけで別に対策要らないな?と思い、対策を捨て、苦手な論点に特化することにします。
そもそも模擬試験は、時間配分が通りに解けているか確認し、出来ない分野を自覚できれば十分なわけです。

ただ、あまりにも範囲が広いので、ここからはテキストの目次をエクセルに貼り付け、各ユニットの論点(1ページから4ページ程度で、試験で聞かれるのは精々2個ぐらい)を思い出せるか書き出し、ユニット名から何も思い出せない場合はテキストをもう一度読む⇒MC問題で定着するというやり方で勉強しました。
公会計はもう対策しないと決めたので、流すぐらいしかやりませんでしたが、FAR1~5合計で500ユニット位あるので、本当に分量が多い科目だと思います。

運の悪いことに試験の直前はパルデア地方に長期出張していたので、復習すらできなかったのですが、試験当日の夢に財務諸表の一連の処理がシャカシャカ流れ出し、頭の中で各分野の知識が結びついた謎の自信で試験会場に臨みます。

まぁ、かつては受験競争を文字通り最後まで戦い抜き、本番勝負に強い自信はあったのですが、10年前のノウハウはすっぽり抜け落ち、水筒すら持たないまま無補給状態で試験会場に向かい、長時間PCの前に座り続けることすら厳しいぐらいの体力だったのですが。

試験本番はMC問題をゆっくり解いたため、制限時間を使い切って最終テストレットは見直しせずに提出することとなり、手応えとしてはもしかしたら落ちたかもなと正直微妙でしたが、結果は80点超えで一発合格となりました。
最初に受けることが多い科目であり、ここで挫折して撤退する人も多いことを考えると、受験生全体のレベルはさほど高くないということだと思われます。(ここで一発合格した結果、試験をナメて後で苦労することになりますが)


勉強期間は英文会計入門と合わせて約半年間、予備校推奨の20時間/週を目処に勉強してたので、600時間といったところでしょうか。ほぼゼロスタートからの半年間ではTBS問題の対策まで手を広げる時間は正直ないと思います。

Blueprintを元に出題範囲を把握し、メリハリを付ける戦略がうまくハマっただけかもしれませんが、合格することだけを考えるともっと短期間で合格もできたと思います。

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