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【九州スポーツビジネスサミット2021】 スポンサーアクティベーションを推進するためにクラブは己を知ることからはじめよう

今回の九州SBSで最も興味あったセッション「スポンサーアクティベーション」。今回はTEAMマーケティングの岡部さんがチャンピオンズリーグの事例を紹介しながら、スポンサーアクティベーションについて深掘りしていきました。いつもなら当たり前に考えることを、アクティベーションでは深く考えていなかったなと猛省した内容でした。

くろっぷ的ポイント
・スポーツを通じてマーケティングファネルをすっ飛ばせる
・マネーフォワード の事例は日本の新しいアクティベートの形の一つ
・クラブは己を知ることから始めよ

登壇者

・Ascenders 橋本貴智さん
・Team Marketing 岡部恭英さん
・九州産業大学 福田拓哉さん
・アビスパ福岡 平田剛久さん

スポンサーアクティベーションって何?

このnoteを読んでいる方は、アクティベーションって何?って方もいると思うので説明しますと、アクティベート=活性化させるということで、スポンサーの権利を活用して、自社のマーケティング活動を活性化させることをいいます。

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例えば、「キリンはサッカー日本代表を応援しています」とか、「日本代表選手デザイン缶発売」とか、「コカコーラ製品を買って聖火リレーランナーに募集しよう」とか、見たことないですか?これら全てアクティベーション活動になります。

仮にアビスパ福岡のホームゲームで広告看板を出すとします。
実はこの時、「アビスパ福岡応援しています」という呼称権や、サイトや資料などにアビスパ福岡のロゴやエンブレムを掲載できるプロパティ使用権、スタジアムで販促ブースを出したりサンプリングしたりできるプロモーション権などの権利が付与されるんです。

日本では広告看板を出す=スポンサーフィーというイメージが強いのですが、海外ではこれらの権利をいかに使って自社のプロモーション活動を行うかということが盛んに行われています。

その際、パートナー契約を結ぶ時、同額かそれ以上のアクティベーション費用を用意するといいます。それはマーケティング効果を最大化するためであり、当然のことだと考えられています。

チャンピオンズリーグでの事例を紹介

・ハイネケン

2015年のCLファイナルで行われたリゾート地「イビサ」でのパーティ。有名なDJや元ブラジル代表のレジェンド「ロベルトカルロス」さんなどを招聘して、ここでしか体験できないイベントを開催しています。

CLのトロフィーを世界中でお披露目できる権利を取得したハイネケンは、世界中でトロフィーのお披露目イベントを開催しました。

この映像は、ハーフタイムショーで行われ、チャンピオンズリーグは全く関係のないメキシコのスタジアム。ここでハイネケンカラーがふんだんに使われており、ハイネケンブランドをイメージが高まったのではないでしょうか。

・NISSAN

続いてはNISSANで昨シーズンのFinalです。

コロナ禍らしく、ドライブインシアターを展開。
参加できるのはNISSANの電気自動車(EV)のみで、お昼からトークショーやアクティビティがあり、優勝トロフィー(本物)が飾られるとなど特別な体験ができます。
時間になると、優勝トロフィーはNISSANの電気自動車に乗って、リスボン中を巡って試合会場へ。

イベント会場ではそのまま車から、巨大スクリーンでチャンピオンズリーグの決勝を観戦。

しっかり、電気自動車=NISSANのイメージが付けれたのではないでしょうか?

ペプシ

ペプシの権利は、オープニングライブの開催。
著名なアーティストをゲストに呼んで、試合前にオープニングライブを開催し、会場を盛り上げます。

芝生を痛めないように養生シートをはり、ライブ終了後は試合に影響がないようにきれいに撤収。試合は翌日ではなく1時間以内にキックオフなので、相当な準備がされているものと思います。

そして、アクトは全てペプシカラー!否応でもペプシが印象付けられます。

Jリーグでのアクティベーション事例

日本でのアクティベーション事例としてマネーフォワード 社が紹介されました。昨年、横浜F・マリノス、コンサドーレ札幌、アビスパ福岡の3クラブのスポンサーとなり、早速SNSでのハッシュタグ企画などを実施。

早速、各クラブの心を掴んでいました。

Jリーグ開幕直前の今週からは、新たなハッシュタグ企画を実施されています。

先日、この取り組みをなぜやるのかということを言語化し、「パートナーシップにおけるコンセプト」を発表。

Challenge Forward!
〜サッカーに生きる人々をもっと前へ〜

1. Club Forward
2. Supporter Forward
3. Partner Forward

スポーツクラブのパートナーになって終わりではなく、クラブ・サポーター・他のパートナー企業と地域の未来をコワーキング(共創)していくという方向性を示したことで、一気にマネーフォワード のブランド価値は向上したと思いますし、これからのアクティベーション活動が楽しみです。

マーケティング視点で考えるアクティベート

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上記の図は「マーケティングファネル」と呼ばれるもので、消費者が商品を購入するまで行動・思考を記したものです。

認知(Awareness)   :ブランドのことを知る
興味(Interest)   :ブランドについて興味を持つ
調査(Consideration):ブランドについて調べる
意思(Intent)    :ブランドの商品を購入したいと思う
評価(Evaluation)  :ブランドの商品で間違いないと確信する
購入(Purchase)    :ブランドの商品を購入する

とあり、例えば「スタジアムに看板を出す」という行為は、ブランドのことを知ってもらうための「認知」になります。

ハイネケンの場合は、世界一のビールメーカーであり、ヨーロッパにおいては認知率が非常に高い。では、なぜスポンサードするのでしょうか?

チャンピオンズリーグファイナルのパーティでは、参加者は特別な体験ができます。イビサでのかっこいいパーティ、レジェンドとの交流などの特別な体験を通じて、またそれを映像として配信することで「ハイネケン=かっこいい!すごい」というイメージ作りが出来上がります。

それによって、ハイネケンについての興味関心を持ってもらうInterestにつながるのです。

また、会場では当然ですがハイネケンが振る舞われます。
それ自体も、体験(デモ)になっていて、日常に戻った時、スーパーのビールコーナーでは追体験したくなりハイネケンに手が伸びるIntentとなっています。

通常、消費者は商品を購入する際、マーケティングファネルにあるConsideration(調査)を行うのですが、チャンピオンズリーグを通じて商品のブランドへの好感度が一気に高まり、すっ飛ばすことができるという点で、投資対効果があると考えているのではないでしょうか。

消費者が、他社との比較をしている段階では、商品スペックや価格という点がクローズアップされます。その際、ブランドは、他社の動向に目がいってしまい、利益率を下げことになったり、過剰な機能追加をしたりと、ブランドの本質的価値を失うことも珍しくありません。

スポンサーアクティベーションには、比較をさせないブランド価値の創造という役割もあることがわかります。

もちろん、それだけではないですが。。

今後スポンサーアクティベーションを広げるためには?

橋本さん:パートナーのアクティベーション事例をたくさん作ること、そして企業はアクティベーション効果を振り返ること

平田さん:パートナー企業とのコミュニケーションの強化。一緒にアクティベーション企画を考える。また、クラブのブランド・ビジョンを突き詰め、アビスパカラーを打ち出していくこと

岡部さん:究極は自己を知ること。自分たちがどういうクラブで何を目指しているのか。大切にしたい価値(コアバリュー)は何か。を明確にして、フェーズ毎のアクションに落とし込んでいくこと。
そうすると、自分たちのクラブが、マーケティングファネルのどこに寄与できるかを知ることができ、企業もアクティベートしやすくなる。(提案も)

ということで、アクティベーションは企業のマーケティング活動なので、クラブ側も、これまでの「地域のためにスポンサー支援をお願いします」ではなく、どのようにスポンサー企業のマーケティング活動に寄与できるかを提案できるようにならないといけないということがわかりました。

逆に自分のような企業側の人は、スポーツ支援することで、スポーツクラブをハブにというか、テコにして、マーケティング活動の活性化(アクティベート)を自ら考え、実行していかないともったいないなと感じました。


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