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『お坊さまと鉄砲』クリカ・アカデミー最優秀賞決定!
『お坊さまと鉄砲』という魅力的なタイトルのブータン映画が間もなく上映されるという情報をどこかで目にしておきながら、その後、色々なことに気を取られている内に、いつ頃上映されるのかを確認しないまま2025年を迎えていた。
数日前、誕生年が私と同じで誕生日がLと同じチベ友のTさんと新年の集いをした折、この映画の素晴らしさと新宿武蔵野館での上映が1/23(木)までという話を聞いて慌てて予定を調整し、1日1回午前のみの上映に駆けつけることが出来た(会場で1/30(木)までの延長を確認)。幸運にも水曜はファンサービスデーでお得な料金で観られたのだが、まずは感想をひとこと。
この映画は《全人類への贈り物》とも思えるような作品で、万難排して観る価値がある!
グレゴリオ暦ではまだ新しい年が始まったばかりだが、時間芸術学校クリカのアカデミー賞では、この作品が本年度の最優秀作品賞に決まってしまったほど、とにかく何もかもが素晴らしい。ウィットの効いた脚本、ブータンの美しい風景、素朴な人柄がそのまま現れているキャスト(殆どが俳優ではない)。そして何より、この映画が訴えようとしているエッセンス。
「青い律動の嵐の年」が始まってすぐの頃、ちょうどLが【映画 ブータン 山の教室( A Yak in the Classroom's)】という記事を書いているが、『お坊さまと鉄砲』は、その映画で長編デビューを果たし、第94回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたパオ・チョニン・ドルジ監督待望の2作目であった。
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映画制作の師ケンツェ・ノルブ監督(『ザ・カップ 夢のアンテナ』などで知られる)のテイストと精神を継承しながら、2作目にして既に師を上回った感のあるドルジ監督は、その才能を、今の時代だからこそ、ブータンだからこそのテーマを通じて、思い切り開花させている。
ここ数年、祈りや祭りの大切さを訴える動きが再び盛り上がって来ているが、この映画はそれをより大きく普遍的にしたようなところがあって、心温まる話を愉快に描きながら、実にシャーマニックで奥深い働きがある。この映画を見て、何が人々の心を分断させているのか?何を大切にすべきなのか?を悟ることは、世界中の争いごとを終わらせる大いなる祈りの輪に加わるのに等しい。
登場人物がそれほど多くなく、関係性もシンプルで、各人物が何を動機に行動しているのかが分かり易く描かれているので、それを象徴として捉えると、お金や見栄で決まる国家間の関係性や、ロビイストが仕切る見せかけの民主主義、善意で行われる文化の破壊、武器の流通や犯罪組織の成り立ち、洗脳装置としてのメディアなど、まさに今の世界の在り方(貪・瞋・痴)がクッキリと見えて来る。
民主化の最中にあった(と当時は認識していなかったが)2007年にブータンを訪れた私たちにとっては、類稀なる優れた君主だった前ブータン国王の画像が出てきたり、ケンツェ・ノルブ・リンポチェがテレビ画面の中にチラッと登場したり、唐辛子たっぷりの辛そうな食事や緑あふれる農村の様子を、嬉しくも懐かしく思い出しながら楽しめる映画でもあった。
12月から始まった上映期間が既に終了してしまっている地域もあるが、まだまだ観られる劇場も各地にあるので、私たちの感覚を信頼して下さっている方は、ぜひ迷わず映画館へGO!
以下はおまけで、この映画を観る前後に読むと参考になるかもしれない「贈り物」に関する記事である。「普遍人類学」という新たな領域を開拓している注目の研究者・板尾健司氏の連載だが、私がこの人物に着目しているのは、文化人類学から現代の経済システムまでを貫く普遍的な法則を扱っているからだ。ぜひ一読をお薦めしたい。
★プレゼント交換には想像以上の価値があった…文化人類学から読み解く「贈り物の法則」
★失敗したら「ゴミ人間」と見なされる…パプア・ニューギニアで行われた「過激なプレゼント交換」
★贈与によって「社会の格差」が作り出されていた…数学が明らかにした権力構造が生まれる仕組み
最後(3つ目)の記事には「利率が0%だと、もらったものをそのまま返すだけになるので、格差は生まれようがない。「競覇的な贈与」が富と名声の格差を生む。」とある。逆に言えば「利率」にこそ問題があるということだ。
私は経済にはとても疎いのだが、「利率」の発生からインチキ臭いシステムが始まったのはずっと昔に気づいていたので、文化人類学的な見地からの数理モデルでもそれが証明されたのには、頷きまくりであった。20世紀以降の状況でいえば、盛り上がりそうな所(国や企業)に貸し付けては利率で儲ける世界の中央銀行システムにこそ、格差問題の根源があると見ることも出来る。
この記事の内容を知った上で、『お坊さまと鉄砲』を見直すと、きっと新たな発見があるだろう。(D)
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