静岡県裾野市・保育園1歳児虐待・隠蔽事件を踏まえ、メディアの取り上げ方の違和感と、本当に考えないといけない事のお話
【目次】
今回の虐待と深刻な保育士不足を関連付ける違和感
メディアが言う【保育の質】って人間性ですか
メディアとメディアでコメントしている保育士は誰を助けたいのか
誰もがWIN WINになる為に1番取り組まなければならない事
バス置き去り事故が多発していた中で、今回、内部告発により発覚した保育士3人による1歳児虐待とそれを隠蔽した園長の事件。
衝撃的な内容ゆえに、多くのニュースメディアで取り上げられました。
先に書いておきますが、
この事件の本質は、【逮捕された3人は人様のお子さんを預かり保育をする保育士に不適合な人間性であった】です。
❶こういう事件や事故が起きる度に、いの一番に保育業界人が口にする言葉は、《深刻な保育士不足》です。
確かに、日本は《深刻な保育士不足》です。
では、今回逮捕された3人の保育士は、人数が潤沢であれば今回の16項目にも及ぶ虐待はしなかったのでしょうか?
逆に、昔から先進国の中での保育士の配置人数基準が低い日本の保育園での保育の中で、虐待をしてこなかった保育士の皆さんは何故虐待をしなかったのでしょうか?
虐待内容は、保育の素人から見ても、《忙しいから》《人手が足りないから》起きてしまった内容ではありませんよね?
その保育士の人間性・質の問題であり《深刻な保育士不足》と直接関連ありませんよね?
《人数不足だから虐待が起きた》という話の流れが、そもそもズレ過ぎで違和感しかないのです。
【虐待内容の本質】よりも《虐待》という言葉だけを強調し、見方によっては、現場の保育士の立場を逆に締め付ける様に誘導したいのですか?と感じても全くおかしくありません。
《深刻な保育士不足》は間違いなく大きな問題ですが、そんな直ぐに変えられない事だけをずっと言い続けても、現場の保育士の疲労は何も改善されません。
今必要なのは、【個々の園がどうすれば《深刻な保育士不足》がいつ解消されるか分からない中、怪我やトラブルを可能な限り減らし、子どもに良質な保育を提供できる様にどの様にすれば保育の質の改善が出来るのか】の具体案です。
これを明確にし取り組めば、【子どもの安全は一定レベルで保たれ、保護者の不安を緩和し、信頼関係も築ける】のです。
❷メディアやメディアに呼ばれる保育士が、口を揃えて【保育の質】と言う言葉を話の中に入れてくるのですが、正直、【保育の質】と言うものが何を指しているのか具体的な説明をしているところを見た事も聞いた事もありません。
今回の取り上げ方を見る限り、《【保育の質】とは【保育士の虐待をしない人間性】と【余裕のある人員確保】という条件さえ揃えば良質》と言っている様にしか思えません。
虐待なく子どもの世話さえしていれば質の良い保育だと言う認識であれば、保育士資格なんてなくていいと思います。
私が言っている【保育の質】とは保育士免許を持っている人がプロとして保育の基本が身に付いていて、それを人様の子どもに日々提供できる状態であるかどうかです。
こういう事を、何故今回の事件や以前の事故などで保育関係者の口からひと言も出てこないのか謎です。
だから、先に書いた《【保育の質】とは【保育士の虐待をしない人間性】と【余裕のある人員確保】という条件さえ揃えば良質》を前提に、事件について話している様にしか受け取れないのです。
《今回の虐待》に対して
《深刻な保育士不足 (日本の配置基準の問題) 》
《行事・書類作業による保育士への負担》
《防犯カメラ設置》
基本的にどのニュースメディアでも大きくこの3つを軸にしか話題にしない意図は誰の為?
❸防犯カメラの設置は私も大いに賛成です。
ただし、保護者に対しての設置目的と理由の説明が必須条件です。
ただ、これはあくまで安心材料の1つでしかありません。
なのに、何故かこの事ばかりを主張する保育関係者を、メディアは使いたがります。
《深刻な保育士不足》《行事・書類作業による保育士への負担》《防犯カメラ設置》基本的にどのニュースメディアでも大きくこの3つを軸にしか話題にしていません。
中には、保育業界と関係ない方が、子どもの心理学面から意味あるご意見を発言して下さっていたりもしてはいますが。
今回の虐待事件について、この3つの軸で話を回す事は、とても表層的で、何を解決したいのか、【子ども】【保護者】【現場の保育士】の誰をどの様に救いたいのか、全く見えてきません。
保育士も人間です。深刻な人員不足で思考がキャパオーバーになり、大声を出してしまうといった事は起きないとは言えません。しかし、その場合、とても一時的です。今回の3人と違って多くの保育士には理性と良心があるので、その後罪悪感に襲われ反省し改善しようとしますので。
そんな中、今回の様な内容よりも【虐待】という言葉の印象だけを強調する《保護者の不安な気持ちを煽り立て不信感を持たせる取り上げ方》をしては、保育士はどんな事でも保護者の匙加減で【虐待】と受け取られクレームが入ると真剣に間違っていない保育をしていても不安と恐怖に駆られてしまいます。
そもそも、キャパオーバーであったとしても、子どもに手が出してしまう人、それはもう保育士の資質を持ち合わせていない人間確定ですので保育士失格です。
私の人生の中では、派遣で入った園で過去に2人、今回の様に中堅とベテランの人間でそういう不適合者が実際にいました。確かにそんな保育士は何処にも存在しませんとは言えません。
どんな立場の大人であれ、サイコパスやマニュピレーターの人間性の人は例外ですが、そんな事までフィーチャーし出したら人間誰も信じないのが1番家族を守れるなんて極論が出てきてしまいます。
ですが、大半の保育士はそうではありません。
しかし、今のメディアの取り上げ方では、そのキャパオーバーの状態になれば、今回の様な虐待が日常的に起きかねないという印象を受ける人が多いと感じます。
結局、ただただ、【子ども】【保護者】【現場の保育士】3者ともを不安にさせる様に、煽っているだけに感じます。
保育の質を上げる事は、子どもに対してだけでなく、保育士の心と体の負担も大きく軽減できます。
❹保育の質が高い保育士は、虐待をしません。寧ろ、子どもも保育士もずっと穏やかです。
その中での子どもの成長や、子どもが家で保護者に話す内容は、確実に質が違い保護者も自然と不安がなくなっていきます。
それは何故なのでしょうか。
答えはとても簡単です。
保育士が保育の基本をしっかり身につけ、子どもに提供出来ていると、子どもはその提供された保育の中で、集中力と距離感によるメリハリを自然と習得していくので、自己肯定感も高く、落ち着いて過ごせるようになります。成長と共に自主性と協調性も徐々に身に付いていきます。
その上で、もし人員が潤沢であれば、より一層個々に目と手が行き渡り、保育士は、もっと自分がしたい保育を欲張って提供していく様に自然となります。
そういう保育の中で育つ子どもは、家庭に戻っても保育士の事や園での事を楽しく話します。
自分の事を色々出来る様になっていく姿も自然と家庭でも見せていきます。園にも率先して行きたがります。
そんな子どもの姿を見た保護者は園に不信感を持つでしょうか?
徐々に信頼していくはずです。
3者ともにWIN WINなんです。
あと、これは断言できるのですが、いくら大人の数を増やしたところで、最低限の保育の基礎が身についていない人ばかりであれば、確実に事故やトラブルは減るどころか増えます。
量がある事に越したことはないのですが、質がなければどんなに量があっても《形無し》でしかないのです。
それなのに、メディアもメディアに呼ばれる保育士も、その点に関して一切触れません。