毒出し 小学生のときの記憶
私は10代を楽しく過ごせなかった側の人間だ。
小学校も、中学校も、高校も、あまりいい記憶はない。
小学生のときの記憶で、とりわけ覚えている出来事がある。
体育の授業でチーム対抗のスポーツをしようとなり、チーム分けをするときの出来事。
どのようにチームを分けるかというと、
チームのリーダーとなる2人がまず前に出てきて(スクールカーストの上位にいる人たちですね)、その2人が交互に自分のチームに加えたい人を指名していく。
私たちのクラスでは「取り合い」と言っていた。
「取り合い」により、スクールカーストが可視化された。
運動が得意な子や明るく友達が多い子、可愛い子は早い段階でリーダーに指名されていく。
運動が得意ではない子や、いわゆる“陰キャ”の子は、いつまで経ってもリーダーから指名されない。
「取り合い」は一度だけ行われたのではなく、チーム分けが必要な場面で何度かなされていたと記憶している。
そして、「取り合い」が行われたとき、いつも最後に残るのが私だった。
この残酷な方法でのチーム分けを、
その場にいた担任は止めようとしなかった。
というより、担任の同意のもとで「取り合い」は行われていた。
どのようにチーム分けをしようか、という話になったとき、
クラスでは「取り合い」の他くじ引きなど、複数の案が出ていた。
そして「チーム分けをどの方法で行うか、多数決で決めましょう」
と担任が言い、最終的に「取り合い」となった。
「取り合い」がなされている最中、
担任はどんな思いで生徒を眺めていたんだろうか。
最後の方まで指名されない生徒がどんな思いをしているか、想像しただろうか。
心の底から思う。
学校はおかしな空間だ。
あのとき、指名されず、最後まで残ってしまった自分へ。
辛かったね。
小学生のときは学校が世界の全てなのに、
その学校でうまく立ち回れなかったね。スクールカーストの最下層に属してしまったね。それがクラスメイト全員が見ている場で可視化されてしまったね。とても怖かったね。
でも、大丈夫だよ。
取り合い?なにそれ。
そのリーダーに選ばれることが、私のアイデンティティなの?
違うよね。
取り合ってくださらなくたって結構よ。
学校はおかしな空間だから。あなたが悪いんじゃない。あなたがいる場所が変なの。
今は学校ほどおかしな場所にはいないよ。
小学生のときに味わったほどの辛い思いはしていないよ。
今はね、優しい人たちに囲まれて生きている。
スクールカーストの概念なんてない場所で生きているから。