お味噌汁はおふくろの味ならぬ、三浦春馬君の味。
好きなお味噌汁の具を3つあげよ。
このコロナ禍になってからというもの、もうかれこれ10カ月近く、自宅でのテレワークが続いている。
会議もすべてオンラインで済むようになり、何と便利でストレスフリーな世の中よ万歳!と好意的に思う反面、無くなってしまって若干困るものもある。
その最たるものが、雑談。
人と話すにしても、いきなり仕事の用件に入ってしまい、他愛もない会話がなくなった。
案外、それが結構重要な情報収集のルートであったり、円滑に物事を進めるためのコミュニケーションツールであったりしたのだなと、失って初めて思うありがたみ。
ということで、私のチームメイトとの会議では、アイスブレーキングも兼ねて、冒頭の2分間は、敢えてどうでもいい話をすることにしている。
その時々で、話すことは芸能ゴシップであったり、家庭のことであったり、趣味のことだったり、コロナ関連のことであったりと違うのだが、この間の会議では「好きなお味噌汁の具を3つあげよ。」というお題だった。
各々、好きな具を言う。
Aさん「まず、第1位から言いましょう。僕は、ジャガイモですね。」
Bさん「私は、すごいベタですけど、お豆腐です。」
Cさん「キャベツに卵を落としたヤツが好きですよ。」
一同「あ~~~、いいね~~~!!」
私「しじみです。」
Bさん「それ、二日酔いの時に飲むとイイとか言われてるやつじゃないですか!(笑)」
私「だって、しじみからうまみが出るから!」
Aさん「じゃあ、次。第2位は?」
Bさん「茄子もイイですよ。」
Aさん「あー、僕はなめこ。食感がイイ。」
私「あおさも美味しいですよ。」
Cさん「海藻ですよね?」
私「そうそう、ただポイって入れるだけでいいから簡単で……。」
以降、思い思いにお味噌汁の具の話をして、3つ言い終わってなくても、2分経ったところで雑談は終了し、会議の本題へ突入した。
私はその会議を進行する必要がなかったので、ミュートにして暫し皆が話すのを聞いていたのだが、急に涙が出てきた。
全く予期せぬ方向から、私の泣きスイッチを押したのは何か。
「あおさのお味噌汁」だ。
あおさのお味噌汁は、私にとってのおふくろの味でも何でもない。
ある時から、お味噌汁にあおさを入れるようになった。
私自身、ずーーーーっと忘れていたのだが、さっき「あおさ」と口に出した瞬間に、急にその使い始めのきっかけを思い出したのだ。
そのきっかけとは、「SMAP×SMAP」のビストロSMAPに、春馬君が篠原涼子さんと一緒に出演した時のことだ。
2013年のドラマ「ラスト♡シンデレラ」の番宣で出た二人。
その時、春馬君がお得意の料理として披露したのが「あおさのお味噌汁」だった。
佐伯広斗くんを演じていたロン毛の春馬君、髪を後ろで一つに束ね、豆腐を手の上で賽の目に切っていた。
豆腐、長ネギ、あおさだけのシンプルな組み合わせだったけれども、食したSMAPのメンバーは銘々に「美味しい!」と言っていた。
当時、私は「ラスト♡シンデレラ」は見ておらず、春馬君のことも恐らく何とも思っていなかったと思うが、とにかくその回の、そのあおさのお味噌汁の印象が深く残ったのだろう。
その週末、近所のスーパーマーケットに行き、鮮魚売り場の片隅にあおさが売られているのを見つけた。
一緒に行った家族に「これね、お味噌汁に入れると美味しいって。この間のビストロSMAPで三浦春馬君が言ってたよ。他にはネギとお豆腐を入れるの。」と言って、あおさを買って帰った。
家では、春馬君の作ったお味噌汁と同じように、お豆腐と長ネギとあおさを入れた。
春馬君のお味噌汁は、おだしもお味噌も何種類かを合わせていたように思ったけど、それは真似できる時だけ真似をした。
あおさのお味噌汁は美味しい。
その後、我が家の定番のお味噌汁の具となった。
あまりに我が家の食卓に馴染みすぎて、使い始めたきっかけがなんだったかすっかり忘れていたけれど、あおさは春馬君の影響で入れ始めたものだった。
そのことを突然思い出し、何だかうまく表現できないが、「私の中に、春馬君いた。」と、自身の中に三浦春馬君由来のピースがあったことを改めて発見できたと思った。
これまでの記事でも何度も書いているけれど、私は春馬君の熱心なファンでもなく、見た作品もごくわずかで、接点は数えるほど、というか、ほとんどないと言ってもいいぐらいなく、その接点の少なさについては、春馬君がこんなことになってしまった今となっては悔やむところでもあった。
その僅かな接点に、少しだけ付け加えられるようなことが見つかった。
私にも、あったんだ。
お味噌汁の具なんて、本当にちっぽけな、つまらないことだけれど、私の生活の中で、春馬君の影響を受けていたものがあったんだと思うと嬉しく、そして、春馬君がいなくなった今、こうして思い出したことが切なく、さめざめ涙が勝手に流れた。
話を戻すが、私はオンライン会議中の身だったはずだ。
思考が、7年前の、春馬君のあおさのお味噌汁まで飛んで行き、泣きまでするってどうなんだ、仕事中なのに。
涙と一緒に鼻水も出たから、グズグズ鼻をかむ。
幸い、そのオンライン会議はカメラはオフで、音声だけにしてあったので、私が泣いていることは皆にはバレていない。
と思うが、次に発言したときに私がエラい鼻声に変わっていたのを、聞いた皆はどう思っただろう。
その鼻声の原因が、三浦春馬君のあおさのお味噌汁だとは、ゆめゆめ思わないだろう。
それにしても春馬君、得意な料理に選んだのが「あおさのお味噌汁」って、つくづく「春馬君のセンスって最高ね!」って思う。
当時23歳の春馬君、それこそ白馬に乗った王子様のようなキャラを演じていたのだから、今どきの言葉で言うなら、もっと映えそうな料理を作ってもよかったのかもしれない。
例えば、アクアパッツァとかパエリア(ただ語感が良かったから書いてみただけ)でも良かったし、若い男の子だからガツンとくる味の濃いスタミナ食っぽいのでも良かったのかもしれないし、お味噌汁にしても、もっと豪勢な具材にしたって良かったのに、「あおさのお味噌汁」を選ぶ、23歳素朴男子。
ロハス、健康志向、そんなワードも思い浮かぶ。
誰かに作り方を教えてもらったのかしら。
当時はそこまで気にして見てなかったけど、「あおさのお味噌汁」は春馬君っぽさを実に見事に現していたなと、今となっては思う。
さぁ、あおさのお味噌汁を作ろうか。