大切なものは目には見えない
大切なものは目には見えない。
このことが、目で見えるかたちの
視覚芸術である絵画にもある
ということを知った。
絵は見えるものとして存在する。
その大切なものは目には見えないとは、どういうことか。
絵画の法則について、話を聞いた。
絵画は、キャンバスなり壁画なり、
枠の中に表現される。
まだ何も描かれていない枠の中は
何もないようで、空間がある。
ないけどある。
その真っ白なキャンバスに白い一点が生じるだけで、
空間のエネルギーに変化が生まれる。
線を引く。
線には、4種類あって、
縦、横、斜め、曲線。
まず、縦の線が一番大切だという。
活きている線を描く。
線に心がある。
下に刺す線、
上に昇っていく線、
強い線、溶け込む線……
活きた線が骨格となる。
まるで、書の世界のように
線が空間を支配する。
そして、一番大事な線は見えない。
その見えない大事な線が、空間の深さとなる。
いわゆる遠近法は、見えるものを深くする。
そうではなくて、見えない線を描くことで
その空間が深くなる。
形のないことに集中する。
見えないそれが、空間を動かしている。
深さのある絵となる。
そういう絵画の法則を聞いて、
老子と同じだなと思った。
老子は、重要な働きをしているものは見えないし、
見えてはいけないと言った。
星の王子さまも、
「大切なものは、目に見えない」と言った。
ものごとの本質は、目には見えないもの。
見えない本質を感じていく。
どれ一つとしてなくてはならない線であり、
たったひとつの線が欠けても、
すべてがこわれる。
まるで、いけばなのよう。
なくてはならない点と線で空間がつくられる。
まるで、この世界のよう。
私たちもすべての存在も、
どれひとつ欠けても、壊れてしまう均衡で、
私たちは生きている。
この宇宙のことわりが、
すべてのことに散りばめられている。