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鳥手板4to6「板の向こう①トリテ」

金沢小立野ゲームのとらです。
2015年ころにボードゲームに出会い
2020年にボードゲームの創作をはじめ、
ゲームマーケット2022春で「ノゾクダイス」を頒布しました。
このnoteでは3作目となる「鳥手板4to6」の創作の過程を、
私の創作したボードゲームに興味を持っていただいた方と
何かを新たに生み出そうとしている方へ向けて伝えたいと思っています。

トリックテイキング

私にはトリックテイキングの面白さに気づかされ、ゾクッととなったゲームがあります。
それは「Cat in the box」[1]です。
カードにスートがないのに、マストフォロー切り札有のトリテとは?
と誰しもが感じる疑問を頭にふわつかせながらルールを読み進めると、
カードプレイ時に色を決めてしまうというパワープレイルール。
これには衝撃でした。
マストフォローなので次の人も同じ色を主張することになることや
その色はないと宣言してしまうこともできしまうのもシビれます。
出した色と数字を主張するためのチップのアイディアが秀逸で、
いわゆるカウンティングにあたるものをしなくてもよいし、
ボーナスにもつながるし、
このゲームの分かりにくくなりそうな部分を一気に解決しているように思えました。
そしてなにより、観測して結果がわかるという量子力学的なシステムがまさにフレーバーにぴったり合致しているのが感動的です。
つじつまが合わなくなってパラドックスになるのも最高です。
このゲームに出会ってからトリックテイキングに対する好感度がめちゃくちゃ上がりました。
実はそれ以前はトリックテイキングのプレイ感がしっくりきていませんでした。
マストフォローという自分の選択が介入しない気がする感じがぴんと来ていなかったのかもしれません。
現在は逆にこのマストフォローという仕組みこそがトリテの面白さの源なのかなと思っています。
「Cat in the box」はマストフォローの表現を、量子力学的な観測後に色が決まることに適応することで、不思議な挙動を創り出しているのだと思います。

トリテの基本

トリックテイキングとは何かを説明しないまま進めてしまいましたが、
ここでトリックテイキングとは何かについて簡単に説明します。
あくまで私見の域を出ない説明ですがお許しください。
トリックテイキングのゲームでは、プレイヤーが順番にカードを1枚ずつ出していき、全員が出したカードの強さを比べて勝ち負けを決めるミニゲームを繰り返します。このミニゲームを一般にトリックと呼び、トリックで勝つことを「トリックをとる」と言ったりします。決まった回数のトリック後に得点計算を行いゲームの勝敗を決めます。
また、トリックの最初にカードを出すプレイヤーをリードプレイヤーといい、そのプレイヤーが出したカードのスート(カードのマーク)をリードスートといいます。他のプレイヤーが順番にカードを出す際は、手札にリードスートのカードを持っているならば必ず出さなければいけません。この縛りをマストフォローといいます。
もちろんこれらの基本的な部分を変化させて様々なトリックテイキングゲーム(=トリテ)が創られています。

トリテを彩る要素

多くのトリテでは、何回トリックをとったかは大切な要素です。
自分がとるトリックの回数をビッド(最初に予想する)するトリテ(「スカルキング」[2]など)や、規定回数のトリックを目指すトリテ(「ブードゥープリンス」[3]など)や、出来る限りトリックをとらないようにするトリテ(「テキサスショーダウン」[4]など)などがあります。
フォローの仕方もマストフォロー以外にも、同じスートが出せないマストノットフォロー(「ポテトマン」[5][6]など)や、何を出してもよいメイフォロー、条件によって出せるカードが変わるタイプ(再び登場「テキサスショーダウン」など)のものなどがあります。
トリテは得点要素も様々ですが、マストフォローのルールが「回避できない」要素を含んでいて負の得点をとらされるゲームが多い印象です。
トリックの回数や獲得したカードの数が得点になったり、ビッドの成功で得点になったり、特定のカードを獲得することで得点になったり、それらが逆に負の得点となる場合があります。

トリテとテーマ

面白トリテはたくさんあるのですが、テーマがそれでなければならないというゲームは少ないのではないでしょうか。
私のボードゲームの好き要素としてテーマとシステムの合致があり、ノンテーマのトリテやいい感じの絵柄になってるトリテ(「ブードゥープリンス」の絵柄はいい感じですが「スカルキング」の絵柄と入れ替わっても、問題なくいいゲームです)が多い中で、何かテーマとトリテシステムが合致すものができないかと考えるようになりました。
面白システムに自分が欲しい要素を加えようとする「金沢小立野ゲームズスタイル」[7]です。

マストフォローの結果として被らない数字の列の生成があります。この数字の順番をうまくテーマに生かせないかと考えました。並びといえばフォーメーションということで、アイドルグループのフォーメーションに対応できるのではと考えました。
となるとゲームの名前もすぐに思いつく訳です。「鳥手坂46」ですね。
色々考える中で最終的なゲーム名は「鳥手板4to6」となりましたが、トリテでアイドルテーマとなればこれ以外にありえないでしょう。
また、フォーメーションを決めるという事はセンターを決めるという事になります。ゲームとしてはセンターをとりに行くことを目的としました。

アイドルといえばアクリルスタンド

早速モックを作りテストプレイ会へ行きました。
最初に持って行った当時の富山テストプレイ会ではトリテも多くテストプレイされていました。
テストプレイの感じとしてはセンターをとりに行く感じや、アイドルテーマはいい感じでしたが、肝心のセンターを決めるのがわかりにくいという致命的なプレイアビリティの欠陥が露呈しました。
最初のバージョンでは1人ずつカードを出していく普通のトリテスタイルで、全員のカードの数字を見て真ん中の数字を決定するという直感的でない方法をとっていました。
そこで登場したのがアクリルスタンドです。カードを出すたびに対応する数字の場所にアクリルスタンドを置くことで、リアルにフォーメーションを完成させていく、まさにアイドルの選抜を体験するプレイ感となりました。
さらに、数字が被った場合は既に置かれたアクリルスタンドの前、つまりフロントにアクリルスタンドを置くことになり、真ん中の数字が被った数字の場合はよりフロントにあるアクリルスタンドがセンターとなります。これもまたアイドルのフォーメーション感がでていい感じになりました。

テストプレイではジョジョの奇妙な冒険第5部スタンドのアクリルスタンドを使っていました。

トリテと鳥手板4to6

トリテのシステムに合致するテーマとしてアイドルグループのフォーメーション。
トリテの仕様としてはスタンダードなマストフォロー切り札有。
トリテの変わった要素としてはセンターの獲得とセンター獲得プレイヤーが次のリードプレイヤー。
付随して通常のトリックの獲得もあり、1トリックで2つの得点要素があります。また、規定回数トリックを目指す要素も含んでいますが、その目標には幅があり4~6トリックを目指します。「4to6」は4~6を示しています。
カード以外のコンポーネントとしてアクリルスタンド。

「アイドルはセンターが引っ張る!」をキャッチフレーズに鳥手板4to6デビューします。

[1]「Cat in the box」は常時次人さん(操られ人形館)デザインの量子系トリックテイキングゲームです。ゲムマページ
[2]「スカルキング」はBrent Beckさん、Apryl Stottさんデザインの海賊テーマのビッド系トリックテイキングゲームです。特殊効果カードもあり、全員の目標トリックの思惑が交錯する終盤が盛り上がりポイントです。
[3]「ブードゥープリンス」はクニツィア様(Reiner Knizia)デザインのチキンレース系トリックテイキングゲームです。規定回数のトリックをとると全プレイヤーのとったトリック数を得点として抜けていきます。終盤に近付くにつれ全体のトリック数が大きくなり高得点のチャンスではありますが最後まで残ると一気に得点は減るため、いつ抜けるかのチキンレースが熱いです。
[4]「テキサスショーダウン」はMark Majorさんデザインの押し付け系トリックテイキングです。できる限りトリックをとらないことを目標とします。通常のトリテではリードスートではないスートを出すことで負け確定になるのですが、このゲームでは後のプレイヤーはそれまでに出ているスート全てがマストフォローの対象となります。最終的な勝敗を決めるスートは多数決で決まるため、安全だと思って出したカードが後ろからのだまし討ちでトリックを獲得しなければならなくなるスリリングな展開が待ち受けます。
[5]「ポテトマン」はGünter BurkhardtさんとWolfgang A. Lehmannさんデザインの突然終わる系トリックテイキングです。すでに出ているカードのスートと違うスートを必ず出さなければならない縛りがあり、出せなくなった瞬間にラウンドが終了します。温存しすぎると終わってしまうし、早く仕掛けても点数になりにくく、場の空気を読むことが大切です。
[6]ゴクラキズムさんのブログの中で「トリックテイキングの定義」という記事があり、そこではトリックテイキングの定義として「スートがあり、トリックを取ること(または取らないこと)を目的としている。」がしめされています。そして、得点カードを獲得している「ポテトマン」がトリックテイキングがらはずれていますが、このnoteではマストノットフォローの例として書かせてもらいました。ゴクラキズムさんのブログは網羅的に様々なボードゲームを取り扱っているブログで、ルール解説もわかりやすくいつも参考にさせていただいています。
[7]金沢小立野ゲームズスタイルという言葉は初めて使いましたが、金沢小立野ゲームズの大事にしていることに「自分が欲しくなるコンポーネント&デザイン」があります。

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