「エモい」についての考察
この記事を書くきっかけ
不用品の整理の際、長年仕舞い込んでいたワイヤレスマイクの動作確認を行うためにPCの音楽をワイヤレスマイクで送信し、ラジオで再生したところ、音質が悪いのに懐かしいような何とも言えない、とても「エモい」雰囲気の演奏になり心地よく感じ不思議に思いました。同様にエモいと感じさせる写真は、鮮明で高精細な写真である必要はなく、むしろボケてたり、粒子でざらざらだったり、色が偏っていたりと鮮明とは対極的であるということとよく似ていると感じました。
一体これらがエモいと感じる理由とは何なのだろうかと、考えてみたくなりました。
エモいとの出会い
そもそも昔はなかった言葉である。ちょっと思い出してみたい。
「エモい」という言葉が流行り始めた頃、どうもエモいと言う言葉の意味がピンと来なかった。Emotionalが語源であることも分かってはいたが、それでもピンとはこなかった。「エモい」を「エモーショナルな」とは置き換えられない。言葉というのは難しいもので、ロジカルな意味は大して違ってないのに、文脈によって不適切だったり違和感を感じるというようなことはよくあると思う。
2024年の今、bingにエモいとはと聞いてみた。
心が揺さぶられて、何とも言えない気持ちになることを表す俗語
何とも言えないって、言葉の説明なのに言語化困難といってるような…
そもそも慣れが必要な曖昧さを含んだ言葉なのだろう。
やっとピンときたのは、誰かがSNSで書いていた「いとをかし」に近いという話だった。当初は「エモいフレーズ」のように、音楽の文脈でよく耳にする言葉だったと思う。音楽以外に使うのはおかしいのかな?と思っていたけれど、それが次第に写真などでも使われるようになったと記憶している。
エモいに関係の深い言葉
考察のとっかかりとして、ちょっと生成AI(Copilot)に表題のようなことを尋ねてみたら、以下のような答えが返ってきた。
感情的 (Emotional): 「エモい」は「emotional」から派生した言葉で、感情が揺さぶられる状態を指します。
ノスタルジック (Nostalgic): 過去を懐かしむ気持ちや、昔の思い出に浸る感情。
センチメンタル (Sentimental): 感傷的な気持ちや、心がしみじみとする状態。
哀愁 (Melancholy): 物悲しい気持ちや、寂しさを感じる状態。
郷愁 (Homesickness): 故郷や過去を懐かしむ気持ち。
AIが例を挙げてくれたので考えやすくなった。
趣深い、情緒がある、風情がある、シャビーな、クラシカルな、旅情のある、ひなびた、牧歌的、切ないなどは、エモいと重なるニュアンスのある言葉だと思う。
エモいの要素
上記のような言葉から思いついたいつくかの観点をまとめてみた。
論理的か感覚的か
間違いなく感覚的なもの。元の意味通り。
機械的か人間的か
一見、人間的よりかとも考えたものの、案外これは関係ない要素のような気もする。
「電車」や「建物」のような無機物の写真でもエモさを感じることはある。
外向的か内向的か
切ないとか、思い出に耽るような、内向よりの感覚。
少なくとヒャッハー、イェーイ！（笑）みたいなニュアンスとは対極的に思う。
未来か現在かそれとも、過去か
少なくとも未来のエモいは考えづらい、想像の世界のエモいは考えづらく、現実であることが必要に思う。過去か現在のどっちか。
動的か静的か
これは静的に思う。映画や音楽のような時間軸に変化を伴う表現でも、もちろんエモいは感じることはあるが、その印象は「リズムに乗る」ような時間に伴った起伏がなく、心に静かに湧き起こるイメージ。
豪華か質素か
華美、豪華とは反対寄りのニュアンスだと思う。
豪華絢爛でエモい、はちょっと想像しずらい気がするが、例えばゴシック様式の家具でもエモい絵面にはなり得るので、これも絶対要素ではない気がする。
結局エモいとはなんなのか
「内向的感情」であること、と「静か」であること、が相当に本質的要素のように思われる。これに、クラシックな雰囲気とか質素さなどが合わさり一種の「様式美」化したのが今のエモいなのかなと思う。
そのような内向的感情のうちでも、拳を振り上げるほどの怒りや、喜びあがるほどの喜び、泣き叫ぶような悲しみ、といった激しい感情とは対極的な、どちらかというと感覚的で静かな内向的感情（懐かしさであったり旅のムードであったり）を呼び起こすモノ・コトが「エモい」モノ・コトであると、今の時点ではまとめたいと思う。
次に踏み込みたいこと
エモいに属する内向的感情にどのようなものがあるか。
そのような内向的感情を呼び起こすにはどうすれば良いのか。