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クジラと蛇口のいちごつみvol.3
短歌:藤田美香
写真:蛇口ひろこ
で「クジラと蛇口」というユニットを組んでおります。
短歌のやりとりのような、手紙のやりとりのような、ただの日記のような、そしてたまに写真も入るかもしれないこの企画。
よろしければお付き合いください。
※トップの写真:蛇口ひろこ
息しても増える気がする体重のゆえにだんだん痛いひざ裏/藤田美香
言えないことばかりが増える十月の真ん中にある空の青さよ/蛇口ひろこ
朝四時の点滅信号に手を上げて横断歩道の真ん中に立つ/藤田美香
運転をするときの手が好きだった父は免許を返納したり/蛇口ひろこ
タイムラインの「返納デイズ」を読みながら不意にバイクに乗りたし夕べ/藤田美香
ピカピカのバイクはシャッター下りたままのガレージの奥で眠り続ける/蛇口ひろこ
ガレージの隅に隠れてガレージを森で隠した泣きもしないで/藤田美香
もうそろそろお暇しますとそわそわと靴も履かずに森へ帰った/蛇口ひろこ
靴下は履かずにいます沈沈と深くなるこの部屋のつめたさ/藤田美香
靴下に穴があいたら繕って踝あたりに違和感を置く/蛇口ひろこ
うっすらと抱く違和感に気付かないふりができます恋のうちなら/藤田美香
紙袋からはみ出したバケットを抱くのが夢で少し叶った/蛇口ひろこ
つまらない一日だった欄干にバケットハットを被せて帰る/藤田美香
何を示唆しているのだろう目の前の赤い欄干にとまる青鷺/蛇口ひろこ
誰も口にしないことで示唆される思い出がただの昔になること/藤田美香
小春日に届く吉報凍てついた朝も過ぎれば思い出になる/蛇口ひろこ
予防線を張るのが癖になっていて言われて気付く吉報だ、これ/藤田美香
のど飴の代わりに舐める氷砂糖溶けきる前に噛み砕く癖/蛇口ひろこ
宝石のようだと言ったらひとかけら祖母が食はせし氷砂糖/藤田美香
太陽のひかり届かぬ海の底 宝石珊瑚はゆっくり育つ/蛇口ひろこ
いつのまにパンツがLになったのかしずかに育つわたしのからだ/藤田美香
きらきらとはしゃぐひとたち遠目にて海水パンツに砂がめり込む/蛇口ひろこ
信号もヘッドライトも街灯もきらきら近視の世界はきらきら/藤田美香
信号が赤になるたび迂回して歩き続けた一年でした/蛇口ひろこ
新しい年にになるたび新しいわたしになりたいわけでもなくて/藤田美香
年明けて二日も経って新しい筆ペンで書く賀状の宛名/蛇口ひろこ
筆ペンの穂先がしっぽに見えてくる午後はゆっくり墨でも磨るか/藤田美香
クリスマス母娘二人で迷いなくイカ墨リゾット大口で喰む/蛇口ひろこ
どんどんと溶けだしてゆく感情のリゾット少し芯をのこして/藤田美香
4Bのえんぴつの芯を小刀で削る尖らないように削る/蛇口ひろこ
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【61.ゆえに→62.増える→63.真ん中→64.手→65.返納→66.バイク→67.ガレージ→68.森→69.履かずに→70.靴下→71.違和感→72.抱く→73.バケット→74.欄干→75.示唆→76.思い出→77.吉報→78.癖→79.氷砂糖→80.宝石→81.育つ→82.パンツ→83. きらきら→84.信号→85.信号・赤・~になるたび・迂回・歩き→86.新しい→87.筆ペン→88.墨→89.リゾット→90.芯】
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