徳の瓶 | 大智度論の物語
持戒する人は、叶わぬ願いはなく、破戒する者はすべてを失う。
譬えるとこんな話がある。常に天に供え物をする貧しい人がいたが、その人は富と名声を求めるため、誠心誠意供養し、12年が過ぎた。天はその人を憐れみ、現れて尋ねた。
「何を求めるのか?」
「私は富と名声が欲しいです。望みをすべて叶えたいのです!」
天は「徳の瓶」という器を与えて言った。「必要なものは、この瓶から得られますから。」
その人は「徳の瓶」を手に入れた後、欲しいものは何でも手に入り、何一つ欠けることはない。そこで、彼は家を立派にし、高級な乗り物を備え付け、かつての友人を食事に招いた。客は尋ねた。
「君は以前貧しかったのに、どうして今日はこんなに金持ちになったのか?」
「天から瓶を一本もらったのだ。その瓶からはいろんな物が出てくるから、こんなに裕福になったんだ。」
「俺たちにも見せてよ!」
頼まれると、男は瓶を取り出し、その言葉の通り、瓶から次々といろんな物が出てきた。それを見ている男は瓶の上に上って得意げに踊り始めた。すると瓶が割れ、出てきたすべての物も、一瞬にして消えてしまったのだ。
戒律も「徳の瓶」と同じだ。
持戒することによって、さまざまな幸運を手に入れることができるが、ひとたび戒律を破って高ぶると、得たものを全て失う。