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「地藏菩薩本願經」に見る業と報い

『地藏菩薩本願經』より抜粋


(前略)その時、四天王たちが座から立ち上がり、合掌して恭しく仏に申し上げた。
「世尊よ、地蔵菩薩は久遠の昔からこのような大願を発しておられますが、どうして今なお衆生を度し尽くしていないのでしょうか?それどころか、さらに広大な誓いを発しておられるのはなぜでしょうか?どうかその理由を私たちにお説きください。」

仏は四天王にこう言われた。
「善いかな、善いかな。今、私は汝たちと、未来および現在の天人の衆生の広い利益のために、地蔵菩薩が娑婆世界、特に閻浮提(地球)において、衆生を慈しみ哀れみ、罪と苦しみから救い出す方便について説こう。」

四天王が言った。
「そうでございますか。どうか私たちにその教えをお聞かせください。」

仏は四天王たちにこう説き始められた。
「地蔵菩薩は久遠の昔から今に至るまで、無数の衆生を救済してきたが、その誓願はまだ果たされていない。それは、この世にいる罪深く苦しむ衆生を慈しみ、その上で未来においても、無限の因果の連鎖が断ち切れないことを見抜いているためである。だからこそ、地蔵菩薩は再び大いなる誓願を発し、この閻浮提において、百千の方便を用いて衆生を教化しているのだ。

「四天王よ、例えば地蔵菩薩が以下のような衆生に出会った場合、彼らにその悪業の報いを教える。

地蔵菩薩が殺生(生命を奪うこと)を行う者に出会うと、
「短命という報いを受ける」と教える。

盗みを働く者に出会うと、
「貧困に陥り、苦しみ痛むという報いを受ける」と教える。

邪婬(不適切な性行為)を行う者に出会うと、
「孔雀や鳩、鴛鴦など(淫欲心の強い)傍生として生まれるという報いを受ける」と教える。

悪口を言う者に出会うと、
「家族の不仲という報いを受ける」と教える。

他人を誹謗中傷する者に出会うと、
「舌が失われ、口に潰瘍ができるという報いを受ける」と教える。

怒りを頻繁に爆発させる者に出会うと、
「醜い容貌となり、身体が不自由になるという報いを受ける」と教える。

慳吝(けち)な者に出会うと、
「願ったことが叶わないという報いを受ける」と教える。

飲み食いを度を超えて行う者に出会うと、
「飢えや渇きに苦しみ、嚥下障害に悩むという報いを受ける」と教える。

思うままに狩猟に興じる者に出会うと、
「驚き狂って死ぬという報いを受ける」と教える。

親に反抗し、不孝を行う者に出会うと、
「天地の災害によって命を失うという報いを受ける」と教える。

山林を焼き尽くす者に出会うと、
「狂気に陥り死ぬという報いを受ける」と教える。

子に対して悪意を抱き、虐待する養父母に出会うと、
「再び生まれる時、鞭打たれ虐げられるという報いを受ける」と教える。

巣から雛を捕らえる者に出会うと、
「家族が引き離されるという報いを受ける」と教える。

三宝(仏・法・僧)を誹謗する者に出会うと、
「盲目や聾唖として生まれるという報いを受ける」と教える。

仏法を軽んじ、教えを侮る者に出会うと、
「永遠に悪道から出られないという報いを受ける」と教える。

常住(寺の財産)を破壊し無駄にする者に出会うと、
「無数の劫の間、地獄に留まるという報いを受ける」と教える。

清浄な修行者を汚し、僧侶を誹謗する者に出会うと、
「永遠に畜生界から出られないという報いを受ける」と教える。

煮たり焼いたり切ったりして命を傷つける者に出会うと、
「輪廻の中で、される側となって順番に償うという報いを受ける」と教える。

戒律や齋戒を破る者に出会うと、
「獣や禽類として生まれ、飢餓にあえぐという報いを受ける」と教える。

理由もなく器具や用品を毀損する者に出会うと、
「求めるものが手に入らないという報いを受ける」と教える。

我執が強く高慢な者に出会うと、
「低い地位に堕ち、下働きさせられるという報いを受ける」と教える。

二枚舌で争いを引き起こす者に出会うと、
「舌を失い、百の舌を持つ苦しみを受けるという報いを受ける」と教える。

邪見を抱く者に出会うと、
「辺地(仏法に接しにくい場所)に生まれるという報いを受ける」と教える。

その他、数多くの悪業の報いを説いて衆生に教え諭す。そして、これらの報いを受けた後には地獄に落ち、無数の劫を経ても出ることができない場合がある。

「だから、汝たち四天王よ、人々を守り、国を護持しなさい。そして、悪業によって迷わされる者が出ないように努めなさい。」

四天王たちはこれを聞くと、涙を流して悲しみ、合掌してその場を退いた。

(後略)