インプットが暗記で終わる人、応用ができる人 【SHOWS Books #5】
<リード>
実業家・北野唯我さんと新規事業家・守屋実さんが、「未来をつくる人を増やすための教科書づくり」の一環として対談を行なう【公開本づくりプロジェクト】の第2回が2021年7月18日に行われました。
北野さんが描く「ミラツク構想」を土台に、今回は「事業の種の見つけ方」をテーマとして話を展開。「教科書」を銘打っているように、「ミラツク構想」では学校が意識されています。
本対談では、学校で教えてほしかったビジネスの話や、これからの生き方や働き方にまで話が及びました。全5回にわたってレポートします。
〇第1回(2021年6月実施)対談レポートはこちら
〇本対談を動画(約100分)でご覧になりたい方はこちら
Writer:落合真彩
<本文>
若手の伸びしろと成長スピードは適切なアサインとフィードバックで実現できる
北野:SHOWSメンバー(※)からの質問です。「ジョブ型雇用が進むと、スキルのある人が重宝され、若者が雇用されない方向性も考えられますが、守屋さんはどうお考えですか?」
守屋:日次や週次、月次雇用のレベルだったらそうかもしれないですね。
北野:ああ、なるほど面白い。
守屋:時間軸の問題です。短期だったら成長余力はいらないので。だけど現実はそんなことなくて、会社も事業も1日で終わることはないし、長く時間を見れば、そこに「成長」や「柔軟性」が必要になってくる。そう考えると、可能性がある若者の方を雇用する戦略を取ることは大いにあると思います。
北野:そうなんですよね。若い人の成長って、その人に適切なアサインメントと適切なフィードバックをした時に凄まじいスピードで果たされると思うんです。でもそういう感覚を持っている人はそんなにたくさんいないとも思っていて。
前回の対談記事のクリエイティブを担当したSHOWSメンバーの方は、本業はデザイン関係ではないのですが、お話ししたときに僕は「絶対デザインいける」という確信がありました。デザインって理解能力があって、かつ美しいものや綺麗なものを集める癖がある人に向いているから、「絶対この人は伸びる」と。でもこういう感覚って共有しづらいですよね。
守屋:それはそういう教育が染み付いているからで、その弊害で、今みたいなことが伝えられないのかなと思っています。僕もまだ上手く説明できないのですが、応用が利かなかったり変化に弱かったりする人は多いですね。物事は多面的であって、1つの側面を見ても意味はない。構造を分解していくと、核心部分はシンプルだったりします。
そこまで考える力があると、違うケースに応用したり転用したりできる。それを「行間を読む」とか「本質を理解する」と言ったりします。これができないと、北野さんがさっき言われた話を「デザインとは、理解能力と美しいものへの感性である」という暗記になってしまう。
北野:なるほど。
守屋:転用できる「メタスキル」みたいなものがあると、1個教えると10個習得できるんですが、教育がそういう教育にはなっていない。だから暗記の穴埋め問題になって、1から10まで全部教えないとわからない人が多い。
北野:昔、北野武さんが言っていて深く共感したことがあります。数学の「因数分解」は、社会に出たら意味がないと言われるけど、映画をつくるときにすごく有効だと。
因数分解的な思考ができない人はたとえば、AさんがBさんを殺す、AさんがCさんを殺す、AさんがDさんを殺す、というシーンをそれぞれ撮る。だけど因数分解的な考え方をすると、BさんCさんDさんの遺体をまず映し、そして
Aさんがナイフを持っているところを撮る。これだけで証明できるんだと。
そうすると映像はキュッと短くなるし、シャープでわかりやすくなるとおっしゃっていました。暗記と転用の違いは、そういうことですよね。
※SHOWS:北野唯我さん運営のオンラインコミュニティ。メンバーは本対談をライブ配信で視聴し、リアルタイムで質問や感想を投稿。対談の活性化につなげるとともに、登壇者から毎回深い学びを得られる。
本質が理解できる人とできない人の違い
北野:ビジネスにおいても暗記より転用力が重要だということはわかりますが、守屋さんは何で転用できるようになったんですか?
守屋:田口さん(ミスミ創業者・田口弘氏)に新規事業の量稽古をさせられたからだと思います。20年間ぐらいトレーニングさせられたから、結果として身についたということです。
北野:確かに、田口さんから常々フィードバック受けていたっておっしゃってましたもんね。
守屋:たいていの場合は考えるのは面倒だし、そんな脳みその使い方はトレーニングされていないから、応用が利かない人になってしまうんです。エッセンスをインプットして、それをいろいろな形で変幻自在にアウトプットできるからこそ、人間に価値があるんです。1のインプットを1で返すようなら、機械には絶対かなわないですから。
北野:面白いですね。これは本質だなぁ。
守屋:本質を伝えれば現象はいくつでも対応できるはずなので、どうやってその本質を伝えるのかが重要ですね。だからこういう場とかを通じて、世の中に伝わる形で出せたらいいですね。それこそ、「未来をつくれる人」が増えるんじゃないかな。
北野:今回も本質に迫るトークが多くて、お聞きしていてとても興奮します。ありがとうございます。来月も定例対談を予定していますので、またよろしくお願いします。(終)
― SHOWSでは、今後も定期的に公開対談を行ないます。北野さんや守屋さんと一緒に「未来をつくる人を増やす本」をつくってみませんか?
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