意志を持つことで世界が広がる
Writer:落合真彩 (Twitter)
2021年5月に発売された『起業は意志が10割』(守屋実さん著、講談社)。同書のP51に記載された図を指し、実業家・北野唯我さんは「この図には10万円の価値がある」と表現しました。これを機に親交を深めた2人は、2021年6月、新しいプロジェクトをスタートさせました。
ベースとなっているのは、北野さんが描く「未来をつくる人を増やす」構想=「ミラツク構想」。過去ではなく未来を見て、自らの手で未来をつくる人を増やすことを見据えた構想となっています。
今回、北野さんが守屋さんとともにつくろうとしているのは、ミラツク構想の根幹を支える「教科書」です。具体的には、「何のために学ぶのか?」に答える本となります。
学ぶことで得られた知恵は、「悩み」を「チャンス」に変えてくれるものとなり、さらには仲間やお金を集められる「意志」となります。ただ一方で、学ぶ目的が明確になっていなければ、情報をインプットすればするほど「迷う」原因にもなります。
だからこそ、原点に立ち返り、「学ぶことの本質」を紐解いていこう。そんな想いに基づいて、【公開本づくりプロジェクト】が始まりました。
今回は、定期的に行なわれる北野さんと守屋さんの公開対談の第1回。1回目から、新規事業家・守屋さんならではの大スケールのエピソードがあふれ、教育やキャリアについて熱い議論が交わされました。
本レポートで対談の様子をお楽しみください。
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意志は「気づいたら持っていた」「たまたま乗り移った」でもいい
北野:第1回は「何のために学ぶのか」というテーマと、「意志」について掘り下げていきたいと思います。守屋さんは、講演や著書で何度も「意志」こそ全てと述べています。
守屋:はい、「自らの意志を持つことがもっとも大事である」ということが、僕の最大の持論です。
ただ、強い意志を最初から持つ必要はないし、そんなことは難しいと思っていて。むしろ、理屈で考えて意志を持つと、苦しくなると思います。そういうものって湧き出てくるものだと思いますから。「気づいたら持っていた」「誰かと過ごすことでたまたま乗り移った」、それでも全然いいと思います。
じつは僕自身、気づいたら意志を持っていたタイプなんです。52歳で52個の新規事業をつくってきましたが、初めは新規事業のプロになろうなんて思ってもいなかったし、特に新規事業が好きだったわけでもありません。
北野:意志とは「後からついてくる」と。これは勇気付けられますね。その中でも、特に印象に残っている「意志ある人との出会いはあったりしますか?
守屋:ありますね。具体的には2人います。ミスミ創業者の田口弘さんと、その後ミスミの第二創業期を支えた三枝匡さんです。会えば会うほどすごいし、今でもまだ「すごい」と思い続けている2人です。
北野:やはり、そうですか。逆に、最初は意志があるなと思った人が、実際にはなかったというケースはありますか?
守屋:腐るほどあります(笑)。「こういう新規事業をやりたいんです!」ってプレゼンしてきても、その熱量が続かない人はたくさんいます。
北野:それって見分けることはできるんですか?
守屋:1ヶ月くらい一緒に過ごせば勝手に見分けられると思っています。新規事業って全部が全部うまくいくわけじゃないので、うまくいかないときにその人の執念やこだわりの弱さが透けて見えてくる。少なくとも田口さんとか三枝さんみたいなトップランカーを知っていると、わざわざ見分けようと思わなくても、化けの皮が勝手に剥がれていきます。
ただ、その「見分け方」にしても、「意志の持ち方」にしても、あまり頭で考えていると、かえってわからなくなったり混乱したりするので、自然体で臨むことですね。そうすると、勝手に答えは出ますよ。
北野:以前お話ししたときも思いましたが、守屋さんは、自然体というか、「フィジカルな感覚」で人を捉えてますよね。面白いです。
そばにいるだけで焼き尽くされてしまう感覚。1流の経営者のみが持つ”熱量”とは?
北野:具体的に、先ほど挙げられた田口さんと三枝さんはどんな風にすごいと思われたんですか?
守屋:2人のタイプは真逆です。田口さんは「無の経営」を大事にしていて、全然意思決定をしない。人事も給料も評価も。それがすごく高尚というか、衝撃的でした。
たとえるなら校長先生みたいな人です。学校で一番偉いけれど、授業やクラスで生徒に触れる機会がなくて、何をしているのかわからない。僕たち社員が事業をつくっているときに「これどうしたらいいですか?」と聞くと、「それを考えるのがあなたです。あなたが経営者だから」って、新入社員にも言い返すスタイルです。
もうひとりの三枝さんは、衝撃的に強い人ですね。
北野:衝撃的に強い。
守屋:もう、そばにいるだけで焼き尽くされて死んじゃうんですよ。三枝さんの経営スタイルはストロング。圧倒的に強いです。
北野:圧倒的に強いというのは具体的にはどういうイメージですか?
守屋:僕は27歳の時に動物病院向けのアスクル(事務・オフィス用品等の通販サイト)みたいな事業をつくったんです。初年度売上が3億で、6年目で20億まで伸びました。当時日本に8,000件あった動物病院のうち6,000件と契約して、新規開業にいたっては250件中240件取れました。その立ち上げ経験があったので、僕は動物病院の仕事には人一倍詳しいという自信がありました。
北野:初年度で3億。そして6年でシェア70%以上。すさまじいですね(笑)
守屋:ところがある日、動物病院の「ど」の字も知らなかった三枝さんがやってきて、2人きりでミーティングをしたら、コテンパンに負けたんですよ。何がどうなったのかわからないぐらい、完膚なきぐらいにひっぱたかれました。本来なら僕の方が知識があるはずなのに、です。
北野:なるほど。面白いですね。
守屋:今考えると、経営というものには1本の軸があって、事業内容が変わっても共通の部分があると思うんですね。三枝さんにはその軸が見えていて、ぐちゃぐちゃと僕が話すことには本質が抜け落ちていることがわかったのでしょう。「こいつは表面的なことばかり言っていて小さい」と。一生勝てないんじゃないかと思うくらい、ボコボコにやられました。
北野:具体的にどういうフィードバックがあったかは覚えていらっしゃいますか?
守屋:「視点が低い」とずっと言われていました。僕は動物病院の先生方にどんな商品があったらいいのかを聞いて、それを一生懸命カタログに反映していたんですが、結局のところそれだけだった。「来季も数字は行きますから大丈夫です」みたいな。
そうではなくて、我が国の動物医療産業をどうしたいのか、とか、どこにどういうプレイヤーがいるのか、本来どうあるべきか、などを語れなければならなかったんです。経営者として器が小さすぎるということを三枝さんからは言われました。
北野:つまり、凄い経営者は「視座がそもそも違う」と。
確かに、三枝さんの書かれた『V字回復の経営』(日経ビジネス人文庫)などは僕も若い頃読みました。めちゃめちゃ面白いし、熱さが伝わってくるような文章に憧れました。三枝さんが「剛」だとしたら、“無の経営”をする田口さんが「柔」だと感じます。田口さんの本質を守屋さんはどう見られていますか?
守屋:手法やスタイルが違うだけで、結局のところ、2人とも同じようなことを言っているのかなと思います。未来のスケールが2人とも大きい。
田口さんは「あなたは何がしたいんだ? どんな経営者になりたいんだ?」と問うてくる。三枝さんは、「バカ野郎!」って怒ってくる。僕の経営者としての未熟さや矮小さに対して、引き上げてくれるようなことをそれぞれのスタイルでしていたんだと思います。
人間は人間から影響を受けるものだから、熱量は必ず伝播する。剛の三枝、柔の田口。共通点は「持続的な瞬発力」
北野:田口さんや三枝さんを他の経営者と比較したときの一番の違いは何なのでしょう?
守屋:「持続的な瞬発力」ですかね。
北野:持続的な瞬発力?
守屋:日本語として間違っているんですけど。三枝さんなんかは見たまんま持続的な瞬発力です。毎日毎日フルスイングしていて、周りの人間がなぎ倒されていく。
北野:それってどうキープしているんでしょうか。以前『起業の天才!』(東洋経済新報社)という本を書かれた大西康之さんとお話しした際、江副さんがリクルートをつくった時に、どんな優秀な人でも40歳を過ぎると劣化していくから早期退職の仕組みをつくったという話を伺いました。
年齢を重ねるとどうしてもエネルギーは落ちると思うのですが、それを維持するためにのポイントはあると思いますか?
守屋:熱のある人に触れて刺激を受けることが大事です。僕は全部自家発電する必要はないと思っています。人間は人間から影響を受けるものだから、熱量は必ず伝播します。逆に、刺激に対する感度が鈍り始めたら、あとはもう落ちていくだけ。
新規事業の場合、手がければ手がけるほどやらなきゃいけないことリストが増えていくので、それがあるうちは僕は現役だと思っています。極端に言うと、本を読むだけでも影響は受けられますし、それを勝手にガソリンにしてどんどん走れると思います。そういう感受性も含めて、常にトップで走り続ける秘訣はそこにあるのかなと感じます。
昨日より今日、俺は置いていかれる――マッキンゼーと働いて感じた、圧倒的なホワイトカラー格差
北野:ここでSHOWS(※)メンバーから質問が来ています。「田口さんや三枝さんみたいな圧倒的な熱量を持つ経営者と出会うには何を鍛えたらいいのでしょうか?」
守屋:田口さんや三枝さんみたいな人って世の中にひとりではないので、そういう人を見つけて勝手に影響を受けてしまえばいいと思います。たとえば北野さんのことをすごいと思ったら、勝手に師と仰ぎ北野イズムを習得する。中途半端だと単なる劣化コピーになるから、やるからには完コピを目指す。
そうすると、結局あなたはあなたで北野さんじゃないから、あなたなりの個性ある何かになれる、という感じです。どうしたらいいだろうかと考え続けていてもどうにもならないので、さっさと完コピを始めた方が、100倍速いです。
北野:僕がよく言うのは、上位1%の人と一緒に仕事すれば質がわかる。でもトップ1%の本物を一度でも体験したことがないと、その差分がわからないということです。とはいえ、守屋さんは田口さんや三枝さんという時代を代表するような経営者と一緒に働く機会があったと思いますが、ほとんどの人にはそんな機会がないと思うんですが。
守屋:象徴的な事例として田口さんと三枝さんを取り出しただけで、僕も田口さんに行き着くまでに22年かかっているし、そこに行くまでにいろいろなことがありました。だからみんなそれぞれ等しくチャンスはあると思います。
僕はたとえば、入社してすぐマッキンゼーのチームに入れられました。新規事業をやりましょうという中で、彼らがいろいろな産業について調べる。そうすると、どんどん僕が置いてきぼりになっているのがわかるんです。「ああ、昨日より今日、俺は置いていかれる。明日になったら彼らは見えなくなっているかもしれない」みたいな。そう思わされる時間を経て、世の中の天井を知りました。
圧倒的に自分よりも優れている頭のいい人たちが、信じられないくらい努力している一方で、バカな自分が手を抜いている。取り組む姿勢で、ホワイトカラーは平気で100倍や1000倍の差がつくことを思い知りました。
ただ、それも一度で腹落ちして学びきれたわけではありません。そういうチャンスがある度に少しずつ記憶に留めていって、徐々に学び取ってきたということです。
今はありとあらゆるメディアがあって、教えてくれる人もたくさんいます。僕が習得するために使った時間よりもずっと早く学べるでしょう。そして我々は、それを加速させる役割を担っていると思います。この本もそのひとつですね。
※SHOWS:北野唯我さん運営のオンラインコミュニティ。メンバーは本対談をライブ配信で視聴し、リアルタイムで質問や感想を投稿。対談の活性化につなげるとともに、登壇者から毎回深い学びを得られる。
3連敗で居場所を失い、社外に逃げたら仲間がいた。人生はそんなもの
北野:もうひとつ質問です。「負けというものに関してどういう感覚を持っていますか?」。というのも、私自身も新しいものを多く生み出すことが多いからわかりますが、「負けること」の方が多いと思うからです。
守屋:僕のサラリーマン時代の新規事業の成績は5勝7敗5分け。負け越しています。もっと言うと、未だに失敗しているんですよ。先回りして失敗をゼロにする方法はわからないです。
北野:守屋さんですらそうですか。安心しました(笑)
守屋:今の僕の限界レベルは、「おそらくこういうことが起きるから、転んだ時はこういう風に受け身を取ろう」というもの。転ぶのは前提で、いかにケガを少なくするか。なので、転ばないということは今の僕にはできません。
北野:それだけ失敗をしているとメンタル的にも堪えそうですが。
守屋:僕は一度ハゲかかったことがあります。金曜日の夕方が一番ハッピーで、日曜日にサザエさんが始まると具合が悪くなる、いわゆる「サザエさん症候群」と呼ばれるものです。月曜日の朝に歯を磨いている時に吐いてしまう。そんな状況になったことがあります。確か、新規事業で3連敗した後。36~37歳くらいのときです。髪の毛が抜けちゃってきて、周りの人からも「頭が寂しくなってきたね」と言われたりして。
北野:守屋さんでもそんなことがあったんですか。
守屋:そう。でもそのときに、なんで逃げなかったのかっていうと、それは自分なりに根性があったんでしょうね。でも根性だけで抜け出したわけではなくて。3連敗した後の4発目の事業が当たったんです。それを受けて、自分自身も、そして周りの連中がオセロをひっくり返したように変わった。そういうことも含めて、自分なりに復活することができました。
北野:そのときに気をつけていた日々の習慣はありますか?
守屋:その時は弱りきっていたので、そこまで合理的に物事は考えられなくて。何とか踏みとどまっていたというのが正直なところです。僕は社内に味方がいなかったんです。「守屋さんと一緒に事業をやると失敗する」って。そういう扱いをされていたので、社外に仲間を求めるしかなかった。
そのときたまたま出会ったのが、埼玉県にある訪問歯科に勤務していた歯科医師でした。老人施設や在宅介護のお年寄りを訪問して診療歯科医師です。訪問歯科の存在を僕は知らなかったのですが、訪問診療だけでも年商数億円あると聞いて「マジか」と。
訪問のニーズはもちろん埼玉だけじゃなく、日本中にある。それを教えてもらって、その方と2人で事業を立ち上げました。その後、瞬く間に日本でもトップクラスの規模の歯科医院になりました。会社から逃げていたら、社外に仲間がいた、そんな感じですね。
自分のものさしはすでにある。頭で捏造せず、解像度を高めよ
北野:エピソードがすごすぎますね。全然質問のスクリプトが進んでいないんですが(笑)。今回のミラツク教科書では「意志があることによって人生に与えるポジティブな要素とは何か」ということをで書きたいと思っています。
「意志って磁石」ですよね。意志があることによって、素敵な仲間も集まってくるし、お金も情報も事業も集まってくる一方で、仲間やお金が集まらない意志もあると思います。意志の種類については、どういう整理をされていますか?
守屋:整理の仕方は、何の視点に基づいて整理するかでいかようにも整理できます。ただ、動いて感じた整理じゃなく、頭で考えただけの整理は深みがないので、自らの中にすでにある意志の「ものさし」を大事にすることをおすすめしています。
たとえば僕は以前、フィリピンに小学校を寄付したことがあります。それを面白いと思ってくれた人は積極的にその活動に参画してくれたのですが、社会的にいいことだと理解しつつも、「俺はいいや」という人もたくさんいました。そうやってみんなの中に自らの意志を計る「ものさし」はもうあると思うんですよ。自分のものさしがよくわかっていない人は多いですが、実は明確にあるんです。
北野:なるほど、「必要な意志のものさしは既にある」と。面白い!
守屋:ただ、ものさしの「解像度」がぼやけていると、自分も相手もわからない。だから彷徨ってしまう。でも自分のものさしが明確であれば、相手とカチッと組み合うかどうかがすぐわかる。だから自分のものさしの解像度を上げれば上げるほど、人との出会いもパチンとはまるんです。
ただ、頭の中で自分のものさしを綺麗に描こうとすると、「捏造」を始めると思います。捏造するといいことはないです。
北野:期待が裏切られたときに一番がっかりするやつですね。
守屋:だから変に、「正しいもの」とか「世間的にウケるもの」を理屈で考えるんじゃなくて、自然体のウエイトを上げて、実際に動いてみるといい。
北野さんに憧れてコミュニティに入ってみる。そうしたら「俺は北野派じゃなかったな」と思うかもしれないけど、それでいいんです。逆に、「俺はこの道を突き進むんだ」って燃え上がっちゃってもいい。北野さんに誰かを紹介されて、そこで雷に打たれたら、そっちに行っちゃってもいい。
そうやって活動を繰り返す中で自分のものさしは明確になってきます。どうせ好き嫌いはあるんだから、動きまくった方がいいと思います。
お父さん、強すぎる! 連続起業家は、自分の子どもにどんなアドバイスをするか?
北野:ビジネスってFunnyではないかもしれませんが、interestingではあると思っていて。一概に「動け」と言ったとして、たとえばセブンイレブンに行ってコーヒーを買うときに、それを消費者として見るか、つくり手の視点で見るかによっても感じることは違うと思います。
これは単純な興味関心ですが、守屋さんはお子さんもいらっしゃいますが、事業やビジネスに対するアドバイスなどはされますか?
守屋:うちの子にはあまりしていないですね。ただ、上の娘は薬剤師になると言っているのでときどき医療業界については話をします。何の話をするかと言うと、僕の中で我が国の薬局にはどういう課題があるかということ。
薬剤師は国家資格で、薬に関する知識と権限を持っているはずです。でも現実は医者が発行する処方箋に基づいて出庫しているだけの人になっています。僕はこれをおかしいと思っていて。本来はチーム医療にならないといけないし、薬剤師は薬剤師の役割を果たすべき。
これが薬剤師に関する事業課題だとすると、新しい形の薬局をつくっておくべきだと。そして、彼女にはそういうところに就職してもらって、薬剤師としての資格を生かしてほしいと思っています。
だから実は、新しい薬局を立ち上げたんですよ。
北野:えー!!!娘のために薬局を作った?笑 お父さん強すぎるじゃないですか!面白すぎる。
守屋:我が国には医療用医薬品が15,000種類あるんですが、うち7,300種類は薬剤師の判断だけで処方する「零売」という薬局形態が可能です。ですが、実際には必ず医者のところに行って診断書を出してもらって、処方箋に基づいて出すしかない。それは風習的なものでしかなくて。これはおかしいと思い、セルフケア薬局という薬局の立ち上げに参画しています。まもなく30店舗で日本最大の零売薬局チェーンになります。
北野:薬剤師さんは薬の専門知識を持っていて、お医者さんは薬の専門じゃないからそっちの方がいいですよね。めちゃくちゃ面白いですね!僕もそういうお父さんになりたい!(笑) SHOWSメンバーからも「めちゃくちゃ熱い」「お父さんすごすぎ」「最高です」とコメントが来ています。
北野:もし今守屋さんが「学校を自由につくっていいよ」と言われたら、小中高大社会人がある中でどこに注目してどういう風につくりますか?
守屋:学校関係で今関心があるのは高卒の就職です。大卒の就活はいろんなプレイヤー(会社)が参入していますが、高卒の就活はいまだにメインプレイヤーは担任の先生なんですよね。担任の先生たちを悪く言うわけじゃなくて、この状況から生まれる最大の問題は貧富の固定化だと僕は思います。もうちょっと産業化されて、高卒生がそれぞれの個性を活かした道を選べる環境をつくってもいいんじゃないかと。
ただ、そもそもの話で言うと、教育問題を教育現場だけで解決できるのかは疑問がありますよね。お医者さんには医師会という存在があるように、教育界には日教組みたいな存在がある。どうしても外圧を拒絶する内輪の結束構造がある。ここを根本から崩さないと何も変わらないと思っているところがあるので、時間とお金が許されるのであればそのレベルで突っ込んでいくかもしれないです。
北野:なるほど。医療業界も構造から入っていって長い時間をかけて変えられたんですよね。
守屋:はい。ケアプロというスタートアップで、実際に法改正を実現したことがあるので、僕の中では「法律は変えられる」というのがデフォルトです。
本は「仲間が見つかるリトマス試験紙」
北野:最後の質問ですが、今回『起業は意志が10割』を出してみて、本の可能性や、逆に弱みに思ったことなど、何かありますか?
守屋:本を出したことで、自分の思考が整理されました。たとえば51ページの図なんかは、前から思っていたことで。でも今回の本であの図にまとめたことで、いろいろな人に見てもらえて、これまで縁のなかった北野さんに「10万円だ」と値付けをしてもらえた。
本がなければあの図は世の中に披露されなかったし、それを評価する人も現れなかったはずです。そういう意味で、本を出したのは自分のためになったなと思います。自分の思考を整理できて、自分の考えに共感してくれる仲間が見つかるリトマス試験紙みたいな、巨大な装置だったなと。
北野さんが「10万円の価値」と言い表した図(『起業は意志が10割』P51)
北野:私は、本の価値って、100年以上生き続けられることだと思います。ミームという概念があるように、仏教やキリスト教の考え方や、古典名著と呼ばれるものの思想は、何百年何千年単位で生き続けている。事業ももちろん人間の寿命を超えられる可能性はありますが、思想はさらに長いですよね。
このミラツク教科書で実現できたら面白いなと思うのは「未来志向」。「未来をつくっていくための思想書」です。その思想をインプットするという風にすれば、寿命も長いし、めちゃくちゃ面白いものになるんじゃないかと思います。
守屋:そうですね。今回の本を書いて思ったのは、新規事業に関わる人や、事業立ち上げ経験のある人からの評判がめちゃくちゃいいということです。でも、そういった経験者以外は、するっと通りすぎてしまう。
起業家数を増やすという視点では、もっと多くの人にリーチしたいのですが、そこが僕は下手なんですね。うまく伝えられない。そういうことを伝えられる、北野さんのような人と一緒に本を出さないと自分の考えを広く伝えることはできないなと痛感しています。
北野:僕の役割は引っかかりをつくるというか、緩急をつけて起業やビジネス立ち上げ経験者以外にも、面白いコンテンツを設計することなのかなと思います。僕、今日思ったんですけど、守屋さんの話はもっと世の中に広げた方がいいですよ。SHOWSのメンバーも協力してくれますし、この本で伝えましょう!
守屋:こうやって聞き出してもらえると、みなさんに伝わると思います。僕はそれを書物にして売り出すスキルや、出版界における信頼がまだない。だから今回の機会を生かせば、未来にとってちょっとくらいいいことができるのかなと思います。ぜひみんなと一緒にやれたらいいなと思っています。
北野:ありがとうございます。いろいろなエピソードが出てきて圧倒されましたし、僕自身がすごくエネルギーをもらいました。引き続き、時間をかけていいものをつくっていけたらと思います。よろしくお願いします。
― SHOWSでは、今後も定期的に公開対談を行ないます。北野さんや守屋さんと一緒に「未来をつくる人を増やす本」をつくってみませんか?
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