学校では習わないビジネスの思考法 【SHOWS Books #2】
<リード>
北野唯我さんと新規事業家・守屋実さんが、「未来をつくる人を増やすための教科書づくり」の一環として対談を行なう【公開本づくりプロジェクト】の第2回が2021年7月18日に行われました。
北野さんが描く「ミラツク構想」を土台に、今回は「事業の種の見つけ方」をテーマとして話を展開。「教科書」を銘打っているように、「ミラツク構想」では学校が意識されています。
本対談では、学校で教えてほしかったビジネスの話や、これからの生き方や働き方にまで話が及びました。全5回にわたってレポートします。
〇第1回(2021年6月実施)対談レポートはこちら
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Writer:落合真彩
<本文>
目の前の問いを、1人で解くか、みんなで解くか
北野:学校ではこう習うけど、社会に出てビジネスをする中ではそれとは異なる考え方が必要という場面があると思います。僕が今パッと思いつくのは3つです。
1つ目は、問題を解くときに1人で解くよりも仲間と一緒に解いたほうがいいということ。学校では1人で解くことが求められますが、ビジネスの場では人の力を借りて解いた方が圧倒的に早いし大きな成果につながります。
守屋:まさにその通りですね。世の中にはその道を極めている専門家はすでにたくさんいるので、その人たちに聞いて情報を集めた方が断然いい。
北野:2つ目が、サービスの表面を見るか、裏側の仕組みやシステムを見るかということ。よく言うのですが、コンビニに行って100円で美味しいお茶があったときに、ただ「美味しい、ラッキー」と思うか、「何でこんな美味しいお茶が100円で提供できているんだろう?」と思うかによって全然違うと思っています。
3つ目が、問題を解く側に回るか、つくる側に回るかです。特に僕がよく思うのは、本当に能力がある人や優秀な人は、魅力的な問いのもとに集まる構造があるな、ということ。なぜかというと、能力のある人は食べていけるくらい稼ぐことは難しくないので、どうせやるなら面白い問題や価値ある問題を解きたいと考えるからです。
この3つは、僕自身は結構昔からやってきたと思っています。小さい頃から自分で問題をつくるのが好きで、つくった問題を「これどうやって解く?」と言ってみんなを巻き込んだり。守屋さんはこの3点についてどう思われますか?
守屋:「1人で解くかみんなで解くか」について、僕の経験の中ではケアプロがまさにそうでした。法改正を実現したスタートアップです。
法改正は1人の想いだけでは絶対にできないのですが、周りをそれこそ世論レベルで巻き込んで、ありとあらゆる力を駆使して実現しました。だからやっぱりビジネスにおいてはみんなで解く力が圧倒的に大事だと実感しています。
「サービスの表と裏」という話で言うと、ミスミという会社を経験して、ミスミのビジネスモデルを参考にしてつくったのがラクスル。その後10社くらい、裏から見ると全部同じビジネスモデルで立ち上げています。
表から見ると金型や板金加工、印刷・物流・広告、衣服、自動車部品など多種多様に見えますが、裏側は全部同じ。見えないけれど最も大事な裏側の構造を理解できているかどうかの違いは明らかにあるなと思います。
3つ目の「問いをつくること」で言えば、新規事業家という職業自体が問いを投げかけるような仕事ですね。だから僕も日常的にこの3つはやっていますし、北野さんが挙げた3つのポイントはとても共感します。
事業をつくる人は、アスリートに近い感覚を持っている
北野:よかったです。学校と社会の違いについてはどう思われますか?
守屋:学生は、いわば「試験のプロ」ですが、一方で事業をする人は「実戦のプロ」だと思います。試験のプロというのは、決められた枠の中の点数で勝負が決まります。だから100点満点で100点を取った人が全員1位になる。
でも僕たちは価値で勝負するので、実は8割しかできていなくても、周りと比べて優れていたら勝てるし、120点を出しても他に125点の人がいたら負けです。ここに明らかな差分がありますよね。
北野:それってアスリートにも近い感覚だなと思うんですが、守屋さんの中ではどうでしょうか。
守屋:実戦の勝負という意味ではそうですよね。80点でオリンピックに行けるときもあれば、120点でもオリンピックに行けないときもある。その中で彼らがやることは常に100点満点で臨めるように最大限の努力をするということ。そのために我々一般の人が意識しないようなところまで着目して研究して努力している。
0.1秒とか、そういう世界観で勝負をしているアスリートは、究極のアーティストのようでもあり、ありとあらゆる偶然の産物の中の世界ということもできます。そこはすごくビジネスに近いですね。
北野:僕は今日も昨日も一昨日も、365日中体調を崩していない360日くらいは本当に毎朝原稿を書いています。毎朝書くために、前日の夜に決まったルーティンをして、決まった時間に寝るようにしていて。
何でそこまでやるの?って聞かれることも多いんです。でも僕は、今日やらなければ明日積み上がらないことがわかっているし、1日1日の勝負だと思っているからやっている。だけどそういう感覚は、ぶっちゃけサラリーマンの人にあまりピンと来ないんですね。
でもアスリートなら同意すると思います。だから「実戦のプロ」の感覚は、アスリートに近いと思っています。(続く)
― SHOWSでは、今後も定期的に公開対談を行ないます。北野さんや守屋さんと一緒に「未来をつくる人を増やす本」をつくってみませんか?
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