季節の変わり目フラッシュバック【エッセイ】
季節の変わり目になると、自然と記憶が蘇る。
1年前の今頃は、山の頂上に広がる白銀の世界に息をのんでいたなとか、2年前の今頃は新しい仕事を覚える為に夜遅くまで毎日勉強していたなとか、5年前の今頃は歯車が狂い始め別れを決断していたな、とか。
普段の日常の中では忘れている記憶が、変化という刺激を受けて、身体を通して脳みその奥底に眠る扉をそっと開けていくのだ。
その思い出達が、全て輝いて見えてしまうのはなぜだろうか。過去の苦しい思い出さえも、何かしらの美しさをまとっているのは、なぜなのだろうか。そして気づく。いつだって、一番苦しいのは、やっぱり「今」なのだと。
この苦しさが、未来の僕にとっての「輝き」になると頭では分かっていても、分からない。どうなるか分からない不安が、この瞬間の重さを苦しさに変えているのだろうか。いつだって苦しい「今」を生きながら、過ぎ去った過去を誇らしげに思い、生きて行くのだろうか。それが人生なのだろうか。
なぜ今日は、こんなにも色々なこと考えてしまうのだろうか。
12月は、足を止め、冷たい空気の中で問いかけを拾い集める時間を与えてくれる季節なのかもしれない。
僕は、いつか訪れる春の光を待ち望んでいる。